22.レイラとマック ②
「この店のハンバーガーが美味いのだ」
マックに連れられてきたハンバーガーの屋台をレイラは眺める。パンとパンに挟まれるパテが、黒い鉄板の上で焼かれていた。
ハンバーグから染み出た油が鉄板の上で踊っていた。
鉄板も使い込まれており、長い時間をかけて鉄板に油が染み込んでいる。また、野菜籠に摘まれているトマトも瑞々しいものばかりだ。今朝、もぎ取られたものばかりであるようだ。
「とっても良い香りがします」
マックとレイラはさっそくそれぞれ一個ずつ注文をした。
近くのベンチに座り、二人はさっそく食べ始める。
「いただきます」
そして、あっという間にマックはハンバーガーを平らげてしまった。
「もう一個、食べられてはどうですか?」
レイラが二口目を食べようかと思ったときには、マックは食べ終わって空を見上げていた。
「あぁ。そうしようかな」
レイラはゆっくりとハンバーガーを味わいながら、屋台の前でハンバーガーを出来上がるのを待っているマックの背中を見つめる。
そして、マックは陽だまり亭で自分の作ったハンバーグを美味しそうに食べてくれていた光景を思い出していた。
「よっぽどお好きなんですね」
隣に座っているマックにレイラは笑いながら話しかけた。二個目のハンバーガーもすぐにマックは食べ終えてしまったからだ。
「いつも城でも食べているぞ。このように、ディスク・ワークをしながら食べるのに便利だからな」
マックは、左手にハンバーガーを持ち、右手で羽根ペンを持って書くような仕草をした。
「お仕事しながら食事も食べるのですか? それに、近衛兵って、いつも剣の鍛錬をしているばっかりだと思っていました」
「そうでもないさ。それに、食べれるときに食べておかないとな。特に、ハンバーガーはだ。それをティファラ会戦で思い知ったのさ」
「ティファラ会戦? 奇襲で王国に勝利したという?」
レイラはその戦場の名の聞き覚えがあった。劣勢であった帝国が奇襲により勝利を手にした戦いである。帝国軍の
そして、テレジアの話では、兄であるロバートもその戦いに従軍していたらしい。
もっとも……テレジアから聞くまで、その戦いに兄が参加していたということはレイラ自身しらなかった。
「あぁ。そうだ。もっとも……勝利だったのかは、私自身分からない」
マックの横顔はどこか切なげだった。いつもにこやかで、そしていつも余裕があるような表情をしている彼とは違った表情をしていた。
「そうだったんですね……。でも、平和であれば、マック様も、なんどでもハンバーガーを食べることができますよ」
マックはそのレイラの問いに答えなかった。
『その通りだ……。シュバイツェル……俺は、やっと、見つけたぞ……』
ユニレグニカ帝国軍補給部食料班皇太子所属マクドナルド・ジョージ・ジュニア皇太子殿下直属、シュバイツェル。
マックは、彼との別れの最後を思い出していた……
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