ライラと、永遠の愛の証

第1話 ライラの憂鬱

 凛花が、育ちの故郷、トーキョーに帰ってから、1月ぐらいが過ぎたわ。


 アリシアとロキ様は、ドランヘルツの孤児院で子供達の面倒を見ながら過ごしながら、そして、ノアは、新しく生まれ変わった神樹の下で過ごしながら、凛花の帰りを待っているわ。


 解散した日のノアは、いつもの様に笑顔を振る舞っていたけれど、時々、寂しそうに瞳を揺らしていたわ。……そりゃあ、そうよね。


 けど、わたくしは、凛花が帰って来てくれると信じているわ。


 だって、あんなに大好きだった人と、別々で暮らすだなんて、私だったら1日だって耐えられないもの!愛のエネルギーが枯渇して干からびてしまいますわ!


 ……だから、凛花とノアに関しては、心配しなくても大丈夫だと、私は思っているわ。


 けれど、問題は……、


 蓮 桜 よ!!!


 屋敷に戻った途端、“ライラック”から、“お嬢”呼びに戻ってしまったわ!

 ……まあ、周りの目もあるし、屋敷に戻ったらお嬢様と執事の関係に戻るから、これは、しょうがないと、まだ思えるわ。


 だからこそ早く、蓮桜の口から、“例の話”を聞きたいのに、全ッ然!話してくれないのよ!!


 (例の話とは、最終決戦が終わって、二人でお屋敷に戻ったら、蓮桜が話したい事があるって仰っていた事よ。101話を参照下さいまし!)


「ああ!もう!!じれっっったいわ!!!」


「ら、ライラック!?い、いいい一体どうしたんじゃ!」


 腹いせに、つい手にしていたハンカチを、真っ二つに引き裂いていたら、いつの間にか、お祖父様が部屋に入って来ていて、震え上がっていましたわ。ツルツル頭も、汗でテッカテカに輝いているわ。


「お祖父様!蓮桜が話して下さらないのよ!!」


「れ、蓮桜?何の話じゃ?」


 


        *****


「かくかくしかじかで、かくかくしかじかで、かくかくしかじか……なのですわ!!」


「……不思議じゃのう、それだけで内容が分かったわい。ライラックは、蓮桜が原因で、情緒不安定気味なのじゃな。」


「そうなのですわ!」


 私とお祖父様は、散歩がてら、レーベンヴァルト家の敷地内にある、大きな花畑へと場所を移し、そこで事の顛末を話していたわ。


 最近のお祖父様は、体調がすっかり回復して、近場までだったら、自力で移動できる様になったわ。


 時々こうして、お祖父様と一緒に、花畑へと赴くのだけれど、この場所は、昔からのお気に入りなの。


 屋敷の横にある、高い丘に、色とりどりの花々が咲き誇っていて、アースベルの街も一望出来るし、ここから見える夕陽は、炎が鮮やかに、ゆらゆらと燃える様に見えて、とても良い景色ですわ!


 ……久々に、蓮桜とも、この場所を歩きたいのだけれど……最近は、それどころか、蓮桜の仕事が忙しい様で、あまり顔を合わせる機会が無いの。

 

「はあ〜。もういっそのこと、ここで大暴れしたいですわ。」


「お、落ち着くのじゃ、ライラック!花畑が荒れてしまうぞ!」


「冗談ですわよ?……だって、この場所は、私と蓮桜が初めて出逢った、運命の邂逅の場ですもの。」


 そう言い、私は、沈みかけていく夕日を、目を細め見つめながら、“あの日”の事を思い出していた。

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