第6話 雷光炎の神器 (アリーシャ・ロキ視点)
アルが、両腕の荊棘を素早く伸ばし、鋭く突こうとしてきたので、私とロキは、瞬時に躱し、左右それぞれから、斬りかかろうと走り出した。
──が、
「──ッ!!」
四方八方から複数の気配がしたので、ジャンプして退いた瞬間、今さっき私が居た場所に、太い荊棘が何本も突き刺さっていた。
森中に生えている荊棘ですらも、アルが自在に操れるみたいだわ。
「はあっ!!」
ロキも、森の荊棘を躱しながら、アルへと急接近し、光る剣を振り下ろした。
すると、アルの荊棘の右腕が、膨張して盾となり、ロキの剣を弾き返すと、もう片方の荊棘の腕でロキを突き刺した。
……けど、突き刺されたロキ──いや、光のマナで創られた、ロキの幻は、ゆらゆらと揺らめいて、消え去った。
驚くアルの背後に、本物のロキが、フッと現れ、アルの背中を横に斬り裂いた。
「うあああああああッ!!」
「ッ!アル!」
苦しみ叫ぶアルを見て、思わず手を伸ばし、駆け寄ろうとした。
だけど、その時、横の死角から伸びてきた、太い荊棘が私の体を力強く薙ぎ払った。
「うっ……!」
「アリーシャさん!」
吹っ飛んだ先で待ち構えていた、鋭い荊棘を、光速で駆けつけたロキが間一髪で切り裂き、私の体を受け止めてくれた。
「ア、アリーシャに…………ッ、近づくなアアアアアアアッ!!!」
ロキにお礼を言う暇を与えずに、アルが突然発狂すると、私とロキの立っている地面から、何かの気配を感じたので、お互い、咄嗟に後方へジャンプした。
すると、私とロキを隔てるかの様に、大きな荊棘が瞬時に生えると、真っ先にロキの体を捕らえ、宙に浮かせると、メキメキと音をたてながら、ロキの体を絞めあげた。
「ロキ!!」
雷牙で切り裂こうとしたが、突然、私の周りに、紫の花弁が無数に舞い広がり、目の前が何も見えなくなった。
「くっ……!何よ、コレ……!」
しかも、ただの花弁じゃないわ!まるで刃物の様に、体のあちこちに切り傷を負わせてくる!まるで砂嵐の様だわ!
「……このままだと……、埒が開かないわ!」
私は意を決して、雷牙に強い電撃を纏わせながら構えた。
……少し火傷を負うかもしれないけど、ロキの為なら、構いやしないわ!
【ロキ視点】
荊棘に捕らわれ、身動きがとれない私に、アルという少年が、ゆっくりと近づいてきました。
「……アリーシャは……、誰にも渡さない……!!」
アルは憎々しげに、そう言うと、荊棘を操り、私の身体を、さらに絞めあげてきました。
「──ッ!!…………アリー、シャ、さんは……、誰のものでも、ありません……!」
痛みを堪えながら、負けじとアルの金色の瞳を鋭く見据えながら、そう啖呵を切ると、アルは気に食わなそうな目つきで一瞥し、荊棘の腕を構えました。
「……お前は、これから死ぬというのに、なぜ、そんな余裕の態度を見せれるんだ?」
「……信じているから、です。」
「は?」
「……私の、最高のパートナーを、信じているからです!!」
その時、紫の花嵐の一部分が、激しく燃え上がり、その炎が、驚くアルの荊棘の腕へと燃え移ると、アルは苦しそうに、のたうち回りました。
「ロキ!!」
燃える花嵐の中から、アリーシャさんが現れ、炎混じりの閃電の刃で荊棘を切り裂き、私を解放してくれました。
どうやら、アリーシャさんの雷で、花の嵐を焼き切った様です。
あちこちに火傷の痕がありますが、どれも軽症の様で、ホッとすると同時に、感心しました。
──やはり、アリーシャさんは、私が心配せずとも強く逞しい。戦闘において、最高のパートナーです。
それは当然、旅をしていた頃から、分かっていたつもりでした。
……しかし、何故、アリーシャさんの事を、未だに心配してしまう自分がいるのか──。
「ロキ!いくよ!」
一瞬、思い耽ってしまいそうになりましたが、アリーシャさんの声に、ハッと我に返ると頷き、光の神器に強いマナを込めました。
【アリーシャ視点】
ロキが光る長剣を構えると、長剣は、ロキの身長の倍ほど伸び、神々しい光を放った。
ロキと一緒に戦うのは、かなり久しぶりだったので、いつの間に、そんな技を身につけたのかと感心しつつ、私も雷牙を構えた。
まだ、さっきの炎が、雷牙に纏わりついている。これで、さらに火力をあげられそうだわ!
「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!」
錯乱したアルが、森中の荊棘を全て操り、四方八方から、私たちを貫ぬこうと迫ってきた!
私とロキは、ジャンプし、息つく暇もなく襲いかかる荊棘を、全神経を集中させながら、素早く躱し、切り裂き、足場にしながら、アルへと急接近し、
「「はああああああああああッ!!!」」
二人で同時に刃を振り下ろし、荊棘の精霊の体を、雷炎の光が飲み込み、その衝撃で、周りの地面が大きなクレーターと化した。
「────ッ!!」
雷炎の光が消え去った後、アルは、クレーターの中心に倒れ伏せた。
「アル!!」
「ううっ……。」
私が駆けつけると、アルは、仰向けになりながらも真っ直ぐと、私を見上げた。
死んでしまったかと焦った私は、その様子を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
……が、次の瞬間、アルは、荊棘の右腕で、私を抱き寄せると、もう一方の腕を、森の泉へと伸ばし、そのまま私ごと泉へと飛び込んだ!
「────ッ!!」
まだ、そんな力が残っていたのかと思う程に、アルの腕の力は強く、抜け出せない!
しかも泉なのに、底無しなのかと思う程に、どんどんどんどん深く潜り、水面が遠のいていく!
──もうダメ!息がもたないわ!!
視界が暗くなりかけた、その時。
水面から、一筋の光が伸びてくるのが見えたので、私は安心して意識を手放した。
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