第123話 アルマのカケラ

 ──パリンッ!


 一瞬、鋭い破裂音が響いた後、真っ白な光が、目の前を覆い尽くし、そして消えた。


 目の前には、透明なガラスの欠片が、ゆっくりと降下していく。


 さっきまで、宝珠・アルマだった物だ。


 それに気が付き、ハッとすると、両手でアルマの欠片を受け止めた。


「…………もう、悪い力を感じないのです。大丈夫なのです!」


 元の姿に戻ったルナが、肩の上から、そう言ったので、ホッと胸を撫で下ろした。


「凛花!」


 アリーシャの声に振り返ると、皆がいて、その中心には、地面に倒れ込んでいるノアが居た!


「ノア!」


 急いで駆けつけ、ノアに回復魔法を掛けると、ノアは、へらっと笑った。


「……悪いな、凛花……。」


「ううん。寧ろ、こんなに無理させちゃって、ゴメンね。……ありがとう、ノア。」


「おう!」


 いつもの様に、ニッと笑って、そう返事してくれた。


 ノアの傷が回復し、ホッとしたが、真っ黒に枯れ果てた神樹を見上げて、再び暗い顔になってしまった。


「……神樹は、もう、助からないの?この世界は、結局どうなってしまうの?」


 ライラが、不安そうに蓮桜に尋ねると、蓮桜は、伏し目がちに口を開いた。


「世界中のマナを循環させていた、神樹が朽ち果てたとなれば……、いずれ、世界は崩壊する。それが、あと何年かは分からないが……。」


「……いや。まだ、方法はあるかも。」


 私は、そう言いながら、アルマの欠片に、視線を落とす。


「欠片になってしまったけど、それでも強いマナを感じるの。

 ……もしかしたら、オリジン様を、助けられるかもしれない。」


 アリーシャが、ハッとすると、悲しそうな目で、私のことを見上げた。


「でも、アルマが無ければ、凛花は、元の世界に帰れないんじゃないの?」


「……本当に、それでも良いのですか?凛花さん。」


 真剣な目で、そう聞いてきたロキさんに、私は頷く。


「……良いの。きっと、これしか方法が無いから。」


 私が、そう言うと、ルナは、突然ハッとし、ピョンピョンと飛び跳ねた。


「オリジン様が、元の世界に帰してくれるかもなのです!

 オリジン様の記憶では、大昔に、凛花さんの世界と、この世界を繋げていた事があったのです。もしかしたら、帰してくれるかもなのです!」


 ……そっか。サクラの国の先祖達も、元々は、私達の世界から来た人達なんだっけ。


 確かに、オリジン様にお願いすれば、帰れるかもしれないけど……、それでも、こっちの世界と、自由に行き来は出来ないかもしれない。


 ……結局、決めないといけないんだ。


 私は、しばらく考えた後、握りしめていたアルマの欠片を、神樹の傍に、そっと置いた。


 すると、欠片が、神樹の根元に、吸い込まれる様にして消えた。


 そして、神樹が一瞬、白い輝きを放った後、黒い部分が、少しずつ樹皮の様に剥がれていく。


「………ッ!上手くいきそう!」


 みんなで、その様子を見届けていた、その時。


「……何故、僕達にトドメを刺さなかった。」


 声がして、振り返ると、そこには、ラビーと、ラビーの肩を借りて立っている、全身ボロボロのリアンがいた。

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