第95話 辛い時ほど、よく笑え (ノア視点)
……もう、何度目だろうか。倒しても倒しても増え続けるカルマ達を目の当たりにする度に、永遠に続くのかと思っちまう。
「────ッ。」
体力の限界が近づき、そのうえ血を流し続けているから、目の前が少し霞んできやがった。
それでも、蓮桜に気を配りながら、無心に近い状態で、カルマ達を殴り続けていく。
……かつてないぐらい、辛いはずだ。
だが、辛さが増してくるたびに、自然と口角があがってくるのが、自分でもよく分かる。
そんなオレを見て、何人かのカルマ達が、バカにするかの様に嘲笑する。
「いつまで続ける気だ。もう、立っているのでやっとではないか?」
「ハハッ……!んなわけねーよ。てめーら地獄の底まで付き合ってやんよ!」
そう言いながらニッと笑い、決して消えゆく事のない深紅の眼光を鋭くさせてみせた。
すると、カルマはつまらなそうに、チッと舌打ちをしてきやがった。
「…………その瞳、ほんっとムカつくな。見ているだけで壊したくなる。その血のように赤く染まる瞳は、あのお方だけで十分だ!」
カルマが、額に青筋をたて、そう吠え立てながら鉤爪を振り上げた。
するとその時、オレの足元に、闇のマナが、まるで生き物の様に蠢いた様な気がした。
カルマ達も、地面に異変を感じた様で、一瞬動きを止める。
「────ッ、ノア!」
それと同時に、ようやく背後から、蓮桜の声がした。
鉤爪を振り下ろしてくるカルマを、ヒラリと躱し、
……が、蓮桜も力を使い過ぎた為か、顔が少し青白く見え、息もかなりあがっている。
そんな中、蓮桜はオレと目が合うや否や、歯を食いしばると、大声で叫んだ。
「ノア!もう一度、先程の様に破浄魂の柱を創れ!…………オレを信じて、思いっきりやれ!!」
……なるほど。やっぱり、地面の下から感じるマナは、蓮桜が何か仕掛けてくれたものなんだな。
そう確信し、待ってましたと言わんばかりに、口角をニイッとあげてみせた。
「言われなくても!!」
そう笑顔を返すと、カルマ達が四方八方から、至近距離で迫ってきた。
「おらああああああッ!!!」
オレは瞬時に逆立ちをすると、旋風の如く鋭い回し蹴りをし、蹴散らした後、右足にありったけの破浄魂を集結させ、地面に思いっきり踏みつけた。
すると、洞窟全体が震える程の、大きな地響きがした後、100人近くのカルマ達を囲うかの様に、金と紫が織りなす巨大なサークルが浮かび上がった。
次の瞬間、そのサークル内の地中から、光と闇が混ざり合った、巨大なマナの柱が突き上げられ、それに巻き込まれたカルマ達が、次々と声もなく消え散ってゆく。
自分達が巻き込まれない様にと、蓮桜が張ってくれた暗紫色の結界の中から、オレは目を丸くしながら、その光景を眺めていた。
「すげえ!どうなってるんだ!?さっきオレがやった時は、細い柱をいくつか出すだけで精一杯だったのに!」
「オレの闇のマナの力で、地中に巨大なマナの受け皿を創った。」
「受け皿?」
「ああ。地中などの暗い場所は、闇の力がより自由に操れる。それで、ノアの破浄魂を一つに集結させやすい様に、受け皿を創った。」
「はあ。」
「そして、受け皿ごと、破浄魂を地面から一気に放出させ、カルマ達を一気に葬り去ったというわけだ。」
「へえー。……よく分かんねーけど、ようするに、オレと蓮桜の合体技ってわけだな!」
「そうだな。結果的にはそうなるな。」
マナの柱が、金と紫の粒子状になり、キラキラと幻想的に舞い散る頃に、蓮桜は結界を解いた。
カルマは駆逐した──と思ったが……、
「……く……くく……。惜しかったな……。」
まだ、たった一人、かろうじて避けたであろうカルマが、そこに立っていた。
だが、オレ達同様、肩で息をし、かなり弱っている。
そんな状態でもカルマは、再び分裂しようと、何とか構え始める。
オレ達も、歯をくいしばり、肩で大きく上下に息をしながらも、二人で口角をニイッとあげ、渾身の力を振り絞ると、同時に跳躍する。
「……何だ、蓮桜。珍しく楽しそうじゃねーか!」
「フッ……。辛い時ほど楽しげに笑う、お前の影響を受けたのかもしれないな。」
オレたちは、恐ろしいぐらいに楽しそうに笑いながら、背中を合わせ、喫驚するカルマの顔面にダブルキックをお見舞いした。
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