第18話 信じてくれた仲間の為に
凄まじい熱風に身体中を包まれ、体感温度が一気に上がる。一瞬で火山にでも移動したかのようだ。
しかし、何故か痛みは全く感じない。訝しげに思い、恐る恐る振り返ると……。
「ノア!!」
『ノアさん!!』
そこには、ノアが、私を護るように立ちはだかっており、全身にひどい火傷を負っている。あの火の玉を、生身でもろに受け止めてしまったの!?
膝をついたノアに、私は急いで駆け寄り、涙目になりながら、ノアの顔を覗き込んだ。
「ノア!私が油断したばかりに……!」
ノアは、皮膚が、ただれた手で、私の頬にそっと触れると、優しい眼差しを向けた。
「……凛花、怪我はないか?」
「う、うん……。」
と、頷く私に、ノアはいつもの様に、歯を見せてニッと笑った。
「そうか。良かった!」
その笑顔を見た瞬間、胸がトクンと強く脈打つのを感じ、私は胸を押さえた。
……こんなにボロボロなのに、ノアは、どうして……。
「どうして、自分を犠牲にしてまで、他人を助けるの!?しかも笑顔で!」
その時、まるで私の心の声に合わせるかの様に、少女がノアに、そう叫んだ。
「……どうしてって、そりゃあ。」
ノアは、焼けただれた両脚を、何とか立ち上がらせると、再び私の前に立ちはだかり、ドラゴンを見据えた。
「凛花は、こんなオレを信じてくれた、仲間だから。だから、護りたいんだ。」
「ノア……。」
さっきよりも、胸の高鳴りが強くなっていくのを感じる。
「……信じた、仲間……。」
少女は、目を見開き、驚きながら、うわ言の様に呟いた。
グオオオオオオオオオオオオッ!!!
その時、ドラゴンが地を揺るがすほどの雄叫びを上げると、再び火の玉を放とうとしてきた。
まずい!流石のノアでも、もう一度当たれば、今度こそ焼き払われてしまうかも!!
弓矢を構え、マナを集中させるが、ドラゴンは今すぐにでも火を放ちそうだ。間に合わない!!
「……借りは返すわ。」
「……え?」
少女の声に振り返る。すると、少女は、左手で右腕を押さえ、右の拳をドラゴンに向けて突き出し、構えている。
右腕には、赤い腕輪がはめられており、船で使う
「発射!!」
少女が叫ぶと同時に、小さな錨がドラゴンに向かって飛んでいき、ドラゴンの右肩へと突き刺さった。
ドラゴンは、苦しそうにのたうち回っている。
私は驚きながらも、よくよく見てみると、錨と腕輪は、細い縄で繋がれている。
そして、少女は錨に引き寄せられる様に、ドラゴンへと素早く飛んでいった。まるで、アニメやドラマなんかで見た、フックガンの様だ。
私たちは、驚きのあまり、一瞬言葉も出なかったが、ドラゴンの背にしがみついた少女を見て、ハッと我にかえり、叫んだ。
「危ない!!」
ドラゴンは、少女を振り落とそうと、上空へと飛び立ち、暴れ回っている。弓矢で当てようにも、少女を傷つけてしまうかもしれない。
しかし、少女は、怯む様子もなく、上手くバランスを取りながら、腰の後ろに刺してあった双剣を取り出し、振り上げると、大きく叫んだ。
「
すると、双剣が金色に輝き出し、何と、電気を帯び出した。
「何だ、アレは……。」
この世界にある武器の一つかと思ったが、ノアも初めて見るらしく、目を丸くしている。
「食らいなさい!!」
そして、少女がドラゴンの背中に、雷の剣を突き刺した。ドラゴンは、まるで雷にでも打たれたかの様に、全身に強力な電気を帯びながら、地面へと落下していく。
少女は、ドラゴンと共に地面に激突する直前に、上手いことドラゴンから飛び降り、無事に着地すると、ノアに向かって叫んだ。
「早く、トドメを刺しなさい!!」
ノアは、言われるが早く、白魂を全身に纏わせると、再び立ちあがろうとするドラゴンに向かって、一気にジャンプした。
「うおおおおおおっ!!!」
そして、ドラゴンの腹に突進した。
ドラゴンは、紫色の血を吐きながら、けたたましい断末魔をあげ、そのまま力尽き、倒れていった。
ノアは、ドラゴンの口元に耳を当て、呼吸が止まった事を確認すると、私に手を振り、合図したが、すぐにドサリと地面に倒れた。
「ノア!!」
私は、すぐさま駆けつけ、ノアに回復魔法をかけた。
そして、私達を心配そうに見下ろす少女に気付き、私は、そんな少女に優しく微笑んだ。
「あなた、子供なのに、凄いね!助けてくれてありがとう!」
少女は、ハッとすると、少し照れくさそうにそっぽを向いた。
「べ、別に。借りを返しただけ。……それに、一人で生きているから、これぐらい出来て当然よ。」
最後の方は、少し悲しそうな表情をしていたが、それも一瞬だった。
すぐに何かを思い出すと、ポケットの中から小袋を取り出し、それを私に差し出した。
「……これ、返すよ。」
それは、昨日、私から奪い取ったお金だった。
少女が、それを渡すと、クルリと背を向け、去って行こうとしたので、私は慌てて呼び止めた。
「ま、待って!」
「……何?」
そう言いながら振り返る少女に、私は、ニッと笑う。
「助けてくれたお礼に、
何か言いたげな少女をよそに、私は、早速キューブを放り投げ、いつでもハウスを出現させた。
何もないところから突然、家が現れたので、少女は口をパクパクとさせ、目ん玉も飛び出そうな程驚いている。
「な、な、な、何よ、これ!!!」
「さあ、入って!」
私は、動揺を隠しきれない少女の手を引っ張り、家へと入ろうとする。
少女は、助けを求める様に、ドラゴンの死体の前にいるノアを、チラと見る。
ノアは、まだ少し火傷の跡が残っているが、もうすっかり元気になった様。
ノアは、少女と目が合うと、ニッと笑いながら、ドラゴンの死体に指差す。
「オレからもお礼に、このドラゴン、食わせてやっても良いぞ!」
「食えるかっ!!!な、何なのよ!こいつらーーーーーー!!」
少女の叫び声は虚しく、家の中へと吸い込まれていった。
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