第7話 「食い違う話、照れ隠し」
「いやぁ、昨日は凄かったねぇ。大好き!とか、好きだよ。とか!」
「よ、与謝野さん!」
「前から心配はしてたけど、やっぱり太宰の弟子ってだけあるねぇ。」
「心配のベクトルが違う!」
朝からかなり下世話な与謝野。笑いすぎて立てなくなっている。
結局二人はあの後もかなりアツくなったのだが、二人がいた部屋は二階のど真ん中。
見事に屋敷中に声が響いたのだ。
「妾以外がここにいたら、どうするつもりだったんだい?」
「うぅぅ…。」
恥ずかしさで死にそうになる二人。だが流石にこれ以上からかうのは可哀想だとおもい、止めてあげることにした。この人は、どっかの包帯無駄遣い装置とは違うのだ。
「それより、あんた達はこれからどうするんだい?」
「そうですね…。もう与謝野さんも見つけてしまいましたし。」
「あぁ…。そうだね。」
与謝野は、いまだに谷崎を治す事をためらっている。
さて、どうしたものか。
「ま、ゆっくりしていくといいさ。ここには、妾以外誰も来ないしね。」
「ありがたいけど、複雑ね…。」
「でも、冗談抜きに、これからどうするのよ私たち。」
「うーむ。…与謝野さんを説得出来たらいいんだけどなぁ。」
「それに、ここが絶対安心って訳でもないでしょ?」
「そこは安心して。与謝野さんもいるし、なにより君のことは絶対に僕が守る。」
「敦君…大好きぃ。」
「ありがとう。」
部屋に戻った二人は、少し話しただけでこのいちゃつきっぷりである。
敦の肩にもたれながら、モンゴメリは続ける。
「私は、このまま与謝野さんの手伝いをしながら何とか他の人を見つけるっていうの
も考えたけど…。それじゃあ敦君が納得できないわよね。」
(なんだか君付けされるの、照れるな…。)
「うん。アレスタさんも言ってたしね。与謝野さんじゃないと治せないって。」
「あ、そっか。」
「何かきっかけがあるといいんだけど…。」
夜。夕食の後、与謝野は自室に戻り、一人考える。
…谷崎が、ねぇ。
本棚から書類を抜き取り、かぶっていた埃を拭き、読み始める。
資料番号:20613
担当者:アレスタ・バーモント
アルカディア・S・マーロン
資料内容:召喚者[谷崎純一郎]ノ活動記録
387年 11の月 火の日
**************************************
彼が現れたのは、百年前。いろんな場所に、記録が残っている。
我々は、接触してみることにする。
「君は、谷崎純一郎だね?」
「は?」
「まぁ、いきなり驚くのも無理ないね。」
「なぜ、それヲ…。僕の名前を、知っているンだ…!」
「こっちには、情報網があってね。」
「いいから早く教えろよ。知ってるんだろ?この世界の事。」
「…まぁ、ね。」
「じゃあ!早く!今!」
「まてまてまて!ちょっと待て!」
「五月蠅い!こっちはもう、何年も、何年も…。」
「…はぁ。」
「言わないなら、帰ってくれ。」
「そうかい?分かったよ。」
かなり気性が荒いヤツだった。
前の世界では、あんな奴じゃ無かったのに…。
こりゃ、かなり精神がやられてるな…。
おっと、話し言葉になってしまった。
大方あいつのペナルティは予想できた。
多分一つ目は不死。前にあいつについていた、ユニークペナル
二つ目は…ありゃなんだ?異能の力が、完全に消え
そして、これが一番のビックニュースだ。
三つ目のペナルティは、
**************************************
ページはここで斜めに破れている。
クソッ…。一番見たい情報は、そこじゃないのに。
でも、一番気になるのは、年代だ。
今の年号は、407年。資料から見ると、数百年というには、ちょっと大袈裟
過ぎないか?
あの胡散臭い中年の狙いは何なんだ?
それと、アルカディアってやつ、マーロンってついていた事は、王族か?
しかも、敦の話から確信した。
全員がこの世界に来ていても、時代は違うのか…。
与謝野はまだこの世界に来て2年しかたっていないが、召喚のルールの核心に迫りつつあった。
「探偵の血が騒いでいるってことかい…。」
与謝野は、一人静かに笑った。
そんな静寂を破壊するかのように、二階から物音が鳴り始めた。
「はぁ…。若者は、元気だねぇ。」
呆れて気が抜けた与謝野は、思い出したかのように二階へ上がる。
部屋の前に立つと、大声で叫ぶ。
「うるせぇーーーー!あんた達、ちょっとは人の事考えな!」
静かになった。
「…ちょっと、言い過ぎたかねぇ。」
若干の申し訳なさが出てくるあたり、与謝野は甘い。
「はぁ…。水差したようでごめんよ、妾はもう寝るから、せめて静かにしてくれよ。
じゃ、お休み。」
そういった後、与謝野は自室に戻ると、ベットに入る。
心地よい睡眠欲が、彼女を深い眠りに連れていく。
夜が、ふけていく。
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敦「お、怒られちゃった…。」
モンゴメリ「ご、ごめんなさい。私が、シたいなんて言ったから…。」
敦「いいんじゃないかな?あの人、優しいし。」
モンゴメリ「そ、そうかしら。」
敦「じゃ、続きシよっか。次は…静かにね?」
クスッと笑いながら言う敦。
モンゴメリ「え?…あっ。」
敦は、天然のタラシである。
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