第5話 「マーロン ギヤング&スタア パラダヰス③」

「うわっ!」


敦は突然の事に対応出来ず、尻餅をついてしまった。


「大丈夫?」

「うん…何とかね。」

「ならいいわ。それより…誰か来るわよ。」


ぼやけた視界が、はっきりと像を結ぶ。

人…?


「ここは汚れた貧民街。あなた方のような王城からいらした方が、何の御用です?」

「あなたは?」

「おや、これは失礼。私はこの辺りで寄合仕切ってる、モモンいいます。」


瞬間、谷崎の顔の表情が凍る。


「あれ、どうしました?」

「敦君、逃げてくれ。」

「え?え?何でですか?」

「大丈夫。僕もこの数百年、自衛の手段を持っていなかったわけじゃないからネ。」

そう言うと、谷崎は一本の剣を取り出した。

「…必ず、戻ってきてください。僕はまだ、聞きたいことが山ほどあります。」

「ちょっとちょっと!何寄ってたかってワイの事悪モン扱いしてますの!」

「嘘をつけ。その手に持っているもの、異能石だな?」


モモンの顔が、汚く歪む。


「あれぇ、分かってますやないの。」

「覚悟しろ。僕があの子たちの先輩として、お前を必ず殺す。」

「いうやないの。」


二人の目が、交錯する。


「武装探偵社が一員、谷崎潤一郎、参る。」

「旧王国軍堕天派2番隊隊長、モモン・ガリュムール、参る。」


互いの剣先が閃き、己の信念が、欲望が、ぶつかる。

そのあまりの激しさに、敦は感動すら覚えた。そして、恐ろしくもあった。

今の谷崎さんと自分が戦ったら、1秒で殺されるだろう。

そこまで、谷崎の剣技はこの数百年間で練り上げられていた。


「ははっ!これ程の腕持つもんなんて、相当おらんで!」

「そりゃどうも!」

「…ほな、こっちも使うか。」


モモンの周りを、光が包む。


「逃げろぉぉぉぉ!」

「人の心配しとる場合かぁ!?」


敦とモンゴメリは、一目散に国の出入り口である門付近まで走った。


「でも、私たちもれなくお尋ねものよね。どうするのよ!」

「大丈夫。僕に考えがある。君たち、僕の手を握ってごらん?」


敦たちは、言われた通りにアレスタの手を握った。

すると、どれだけ衛兵の前を通っても、気づかれなかった。

敦たちは、無事に王都を抜け出した。


「最初から、こうすればよかったのよ!」

「まぁ、ね。」

「でも、谷崎さんが…。」


すると、王都のほうからものすごい音が鳴り響いた。

見ると、黒い煙が上がっている。

敦たちがいた場所付近だ。


「谷崎さぁぁぁぁぁん!!!」


______________________________________

さぁ、次で第一章も終わります。

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