『お待ちどう様 悪魔のラーメン』
N(えぬ)
悪魔が見せるラーメンの……
悪魔が身を偽り、半ば『脱悪魔』して開いているラーメン店があった。そのラーメン店は、そこそこ繁盛していた。最近では、常連も付いている。
この店は悪魔の捻くれた心で純粋な趣味として経営していた。それだけに、日頃の悪魔の悪行も知らない人間たちにラーメンの味を認められること自体に青い目を白黒させたし、不可解で嬉しかった。
*
桜の花が薄桃色の花びらをつける頃、悪魔は店の1年を振り返っていた。
「もう、一年たったのか。長かったなぁ。二千数百年生きてきた中で一番長かった。ラーメンひとつで身を立てるのは容易なことじゃあなかったゼ」
そんなことをカウンターの陰でぽつりとつぶやく悪魔の姿を偶然店に入ってきた常連客が見つけた。
「マスター、今日は確かこの店の開店1周年だよな?お祝いを持ってきたゼ!」そう言うと客は、一抱えはありそうな猫の置物をマスターに差し出した。
「有名な商売繁盛の神社で買ってきた招き猫だ。受け取ってくれ」
悪魔はその客の心遣いに思わずホロリとした。
「マスター、泣いてんのかい?」
「うるせぇ。こういうのを、鬼の目にも涙、ってぇのよ。ありがとぉよ」
「わっはっはっは。喜んでくれるか。じゃあ、今日もラーメンをひとつ頼む」
「あいよ」
悪魔は客たちに、ラーメン作りの神業を見せつけてラーメンを作り始めた。
おわり
『お待ちどう様 悪魔のラーメン』 N(えぬ) @enu2020
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