第3話

破格の報酬と未知の迷宮調査という、2つのワクワクで依頼を引き受けたオレたちは

あの後その足で商店に向かい、保存食と回復薬、快毒薬を目一杯買い込んでその日は休むことにした。


翌朝。


「武器よし、防具、道具よし。行くぞ。」

「あいあいさぁー!」


街から少し離れた森の中にひっそりと佇む迷宮へ、2人して乗り込んだ。


石造りの迷宮内部は、なぜか薄ぼんやりと全体が光っていて、せっかく持ってきた松明は不要だった。

なぜ光っているのかはわからない。


黙々と歩く。


しかしなんだ、この違和感……?


時折遭遇するゴブリンやコボルト、スライムを蹴散らしながら、延々とただひたすらに歩く。


「なあ、シン」


「なんだ」


「あのさあこの迷宮……」


「いや待て。多分と言うか絶対同じこと考えてる。せーので言うぞ!」


「「何で一直線なんだ(や)!!」」


そう!構造が変わるどころか一直線!しかも罠も無ければ敵もすごいテキトー感!

2つほど階段を降りたのに構造にも見た目にも変化なし!


「何やねんこの迷宮!?つか通路!?」


「ああ。迷宮って名乗るのもダメなレベルで通路だな。つか一本道。」


「……入る人のレベルによって構造変わるとか?」


「そういう情報は無かったが……まあ一応それも一理あるな。」


2匹のコボルトが現れた!……が、こちらを見て逃げ出した。


いちおう2人共、レベルは12まで上がっている。油断する気はないけど。


そうこうしているうちに、なんと重々しい扉の前まで来てしまった。


「まさかとは思うけど、ここボスちゃうやんなぁ。」


「そのまさかっぽいのが逆に怖いな……おびき寄せてってタイプのボスだったりして。」


ニコと顔を見合わせて、重々しい扉を開いた!


「待っていたぞ、冒険者よ」


エメラルドの長髪の、黒い重厚なローブに身を包んだ……上級魔族が、いた。


普通の魔族との違いは、その頭に生えた威厳ある双角。そして桁違いの魔力、あと美形だ。

身体にビリビリと感じるくらい、目の前の魔族は強い。

首筋がチリチリする。


クソ、やっぱり油断させて誘い込んで……ってタイプだったのか!


腰に下げていた刀を抜いて構える。上段。

ニコも弓を既に構えていた。


上級魔族は笑った顔のまま、構えることすらしない。


構える必要すらないと言うことか。


「我が名はロゼという。」


「それはまた優雅な名前だな」


「……。」


上級魔族……ロゼは、未だ笑ったままだ。何がそんなに可笑しい。


だが、その笑顔がだんだんとしょぼくれていき、終いには不機嫌そうな顔に変わっていった。

なんだ、意味がわからんぞ?


「あー……わたしはニコいうねん。よろしゅう。」


「え、ここ自己紹介するところなの!?」


「いや、そういう流れかなーって……?」


するとどうだろう。みるみるとロゼの顔色が変わっていった。……良い方に。


「ニコか!良い名前だな!そちらの侍は何と言うのだ!?」


もはや満面の笑みというやつだ。


「え、いや、あの……オレはシンといいます……」


「そうか、そちらも良い名前だな!」


うんうんと頷く上級魔族。サラサラしたロングヘアがそのたびに揺れる。


「では2人共こちらへ!」


ばさっとマントを翻したそこにあったのは。



4人が向かい合って座れる程よいテーブルと椅子。そしてその上には。


「TRPGをしよう!」


「いや何で!?」



今、世界中で大人気の書物。TRPG「剣と魔法」のルールブックと、羊皮紙と筆記具だった。

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