86話 久しぶりのギルド

 金剛龍という強力な戦力を潰した相手についてあれこれ考えていたのだが、


「ごちゃごちゃ考えても無駄だろ? 結局は5、、じゃねぇな。4年後の戦争で金剛龍をった奴も分かるだろ」


 龍帝の言い分も最もなので龍たちの会議はそれで終わるのであった。そうしてギルドにようやく帰る事になったリュウガであった。帰りはウェンの背中に乗って帰るのであった。ウェンの後ろには龍の姿となったスイも飛んでいる。


「主様? 金剛龍を殺した相手に心当たりがあるのでは?」

「何でそう思った?」

「何となくですよ。これでもそこそこの付き合いですからね。何せ世界線を超えて赤子の頃から観てましたからね」

「そういやそうだったな。まぁ、あの場で言わなかったのは確信がある訳じゃなく本当に何となく思い浮かんだからだ」

「それは一体?」

「ハクだよ」

「ハクですか? 確かに原初のフェンリルに近しい力を持っていましたが流石に金剛龍を殺せるとは思えませんが」

「そうなんだが俺たちは別れてからのハクを知らないからな。もしかしたら凄い力を手に入れた可能性があるだろ?」

「確かにその可能性は捨てきれませんがやはり可能性は低いですね。龍を。それも名持ちの龍を殺すほどの力を持ってるなら私たちが気づかないはずがないのですから」

「その気配を隠したりは出来ないのか?」

「不可能ではないです。しかし、金剛龍を殺す時にその気配を隠したままというのは不可能のはずなのでやはり可能性としてはないですね」

「そうなると金剛龍を殺したのは俺みたいに魔力が0の奴か?」

「かもしれません。しかし、この世界で魔力0の人間、モンスターが生まれた事は今までありません」

「俺みたいに異世界から来た可能性は?」

「ないとは言い切れませんね。私や他の龍たちが主様の来訪を知っていたのは龍神の末裔であり私たち龍と関わりを持っていたからです。ですので知らず知らずのうちに来訪者がいてもおかしくはありません」

「ちなみに俺以外に来訪者が来た事は?」

「ありますよ。800年ほど前になりますが」

「そうなると流石にないな。そもそも俺と同時期にバルトも来ていたし他はいないだろ」


 かつて殺し合いをした男を思い浮かべる。そんな風にいろいろと会話しているとギルドに到着した。


「久しぶりって感じはしないけど実際は一年経過してるんだよな?」


 リュウガは一日、二日程度の感覚であるがもう一年経過しているのだ。


「そうですよ。ですから良く見ると変わった所もありますよ?」

「は?」


 ウェンに言われて改めてギルドを見る。特に変わった所はないように思えたが、


「あぁ!? ギルドとアズサの工房が繋がったのか!」


 前まではアズサのギルドとアズサの工房は別々だったのだが今は渡り廊下が出来て一々外に出る必要がなくなっていた。


「半年前にギルドマスターが一時帰宅しましてその時に改修工事をしたんです」

「ギルマス帰って来てたのか?」

「3日間だけですがね。特訓の成果を見せるためにと近接戦を主体の方々を相手にどこまでやれるかを試すためにです」

「どうだった?」

「流石にルイ、レイの2人には通用しませんね。しかし、そこらの冒険者には余裕で戦えそうです」

「成長してるようで良かったがそのレベルだと神には通じないな」

「えぇ。ですが魔法の方は凄まじい成長を見せましたよ。連携すれば神をも殺せますよ」


 ウェンは辛口の評価を下す事が多いのだがそんなウェンが神を殺せるというの相当な評価だ。


「会えないのは残念だがどうせまた帰って来るんだろ?」

「えぇ。次も半年後なのでそろそろまた帰って来ますよ」

「その時の楽しみにしておくか」


 いよいよギルドに入る。


「ただいま」

「おかえりなさい」

「遅かったじゃない!」

「遅い!」

「遅いのですかね? 相手が神ですし早いのでは?」


 と様々な反応が返ってくる。それに対して、


「色々言いたい事はあるよな。すまん。冥府の時間の流れが地上とは違ってな。俺は2日しか経ってないつもりだったんだよ」


 と説明してからリュウガはゴウに、


「それで? こっちはどうだった? ウェンからはギルドの改修とギルマスが一時帰宅した事は聞いたんだが」


 尋ねる。


「色々ありましたよ。一年もあったんですからね」

「長くなるか?」

「当たり前です。まずは神との戦争についてガルド、オズワルド、ミステリルの三国は正式に準備する事を決定し冒険者ギルド、騎士団に命令を出しました」

「正式決定の後押しはオズワルドの王の未来視か?」

「えぇ。オズワルドの王の未来視は王国間では有名なのでその王が視たというので確定だと言う事で話はトントン拍子で進んだようです」

「そうか」

「どう思いますか?」

「Sランククラスなら神の手下の天使共とも戦えるがそれ以外は無駄死にだな」


 残酷な事であるが事実なのできっぱりと断言する。神の手下である天使ですらSランク冒険者と互角か下手したら格上なのだ。ルイとレイのようなSランクの上澄みも上澄みで天使に勝てる程度であり、神相手には通じない。今回の戦争に必要なのはなのだ。そんなリュウガの言葉に、


「何よ。あたしたちじゃ力不足っていうの?」

「お前らは必要だよ。神連中がどれくらい来るか分かんねぇから天使なんてに俺は体力を使いたくない」

「それじゃああたしたちはあんたの露払いって訳?」


 食ってかかるルイ。彼女が憤りを感じるのは仕方ない事なのだが、


「しゃあねぇだろ。戦闘に向いてる神しか来ないだろうから対抗出来るするなら名持ちの龍クラスの実力じゃないと話になんないぞ?」

「くっ!」


 悔しそうにするルイであるが名持ちの龍で最低クラスというリュウガの言葉に引くしかなかった。自分が強くなった自覚はあるがそれでも流石にウェンと並ぶレベルかどうかというと否である。


「名持ちの龍でも厳しいですよ。私とスイと翁の名持ちの龍3名でギリギリ勝負になるレベルですからね。基本は私たちも天使狩り担当で主力は主様、龍帝、風翔龍の3名になりますね」

「流石にゼーリオクラスはそんな多くはないだろうが攻めて来る神が一桁って事はないだろうから戦力は圧倒的にこっちが負けてるんだよな」

「そうですね。だからといって4年でこちら側の戦力が神と戦えるレベルまで上がるかは賭けですね」

「だがまぁその賭けに勝たないと死ぬだけなんだ。やるだけやるぞ」

「「「「はいっ!!」」」」


 改めて始動する運命の宿木であった。

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