81話 最下層

 即席パーティとなったリュウガたちはギールスがいる最下層へと向かおうとするも、


「で? どうするんだよ? ギールスは閉じこもっている状態だがどうやって最下層にいくんだ?」


 龍帝が言うようにギールスは最下層への侵入を拒んでいる。雷速で移動出来る龍帝は最下層に続く穴があった場所を骸龍を葬りながら探したのだが見つけた穴は完全に塞がってしまっていたのだ。


「こいつがここに来る時みたいに最下層までの道をぶち抜くのは無理だろ」


 指を刺されて言われたリュウガは反論したりはせずに、


「視た感じ無理だな。死の気配が濃すぎる。それに厚みが違うな。時間をかければ行けない事もないだろうがそれを許すなんて事はないだろ?」

「そうですね。掘り進めても修復していくでしょうね」


 リュウガの疑問にフルールドリスは答える。そして続けた言葉は、


「ですがご安心を。しっかりと最下層へと向かう方法はあります」

「だよな」

「組もうと言っておいて何の手段も持ってなかったらがっかりだったよ」

「神と組むなんて誇らしい事なのに好き勝手言いますね」


 神相手に、むしろ神が相手だからこそ好き勝手に言うリュウガたちにグレーストは苦言を言うが、


「穏健派みたいに言ってるが本当か怪しいからな」

「オレ様はそもそも神が嫌いだならな」

「仕方ないこととはいえ傷つつきますね」


 更に好き勝手言われてしまい傷ついたようなリアクションをとるフルールドリス。そんな彼女に、


「いいから行こうぜ」

「そういうのいらねぇから」


 と中々話を進めないフルールドリスを促す。


「全く少しでも仲良くなろうという私なりの心遣いだったんですよ?」

「行動で示せよ」

「あんまりしつこいとここで仕留めるぞ」


 若干殺気を滲ませる2人にやれやれと首を振ると、


「それでは参りましょうか」


 地面に両手をつけると暖かな光が辺り一面を包む。その光はリュウガも龍帝も見覚えがあるものであった。


(ウェンと同じ力だな)

(出力は圧倒的だかな)


 ウェンと同様の力を持っているがその力は神だけあってウェンとは比べものにならないほどであった。


「これで死の気配を打ち消しました。これなら地面を破壊して最下層へ進めるでしょう」

「確かにこれならさっきよりは簡単に進めるだろうがそれでも地面の修復の問題はどうするんだ?」

「それも問題ありません。私が手を加えたのでギールスが直接修復しない限りは修復もしませんから安心して破壊しながら進めますよ」


 という事なので二層に来た時と同様にリュウガは、


神喰かみぐらい』で


 地面を破壊する。しかし、


「予想通り厚いな」


 一撃では最下層へと向かう穴を開通する事が出来なかったが、


「もう二、三撃ぶち込めば十分だな」


 そして、もう三撃『神喰』をぶち込んで地面に穴を開けて最下層へと向かう道を作りだしてそこから全員で最下層へと向かうのであった。


「来たな」


 そんな彼らの来訪を冥府の王であるギールスは感じ取る。


「フルールドリスも来るとは思ってなかったがいつかは殺す予定だったし何の問題もないな」


 ギールスとしても神の来訪は予測していなかったがそれでも何の問題にもならない。ここは冥府。彼のホームグラウンドなのだから。


 最下層へと落下中のリュウガたちを出迎えるのは骸龍たちであったが、


「「邪魔だ」」


 そんな骸龍たちをリュウガと龍帝は瞬殺する様子を見ていたフルールドリスたちは、


「流石ですね」

「これならギールスの所まで温存できますね」

「確かにその通りですがサボっていると彼らからの信用を得られませんし私たちも戦いますよ」

「それもそうですね」


 フルールドリスは膨大な魔力に物言わせた魔力放出で骸龍を吹き飛ばし、グレーストは岩を飛ばして骸龍を攻撃していく。


「ふむ。中々硬いですね。より硬く、より魔力を込めて、より速度を上げて岩を飛ばすとしますか」


 攻撃したにも関わらず仕留めきれなかったので即座に修正して攻撃してからは仕留め始める。


(確かに強いが力量を測るのは下手くそみたいだな。だが神だけあって修正力はあるし充分役に立ちそうではあるな。まぁ、俺たちよりは弱いがな)


 グレーストを評価するリュウガ。フルールドリスについて龍帝は、


(魔力量はゼーリオよりも多いな。適当に魔力をぶっ放すだけで龍を余裕で殺せるな)


 フルールドリスは戦闘力自体は大したことはない。しかし、魔力量は神界でも1番でありそれはゼーリオをも凌駕するほとだ。


(まぁ、敵に回っても余裕で殺せるしギールスを殺す際の弾除けが増えた程度に思っておくか)


 と冷静に龍帝は判断する。そうして襲って来た骸龍を蹴散らして最下層の地を踏む。


「手荒い歓迎ですね」

「当たり前ですね」

「それにまだまだ来るな」


 リュウガたちの前方に骸龍、その骸龍の龍人、死神、骸兵といったギールスの兵たちが進軍していた。


「どうせ誰も本気で背中を預かれる仲ではないんだ。あの連中に突っ込んで行ってたどり着いた奴がギールスと戦えばいいだろ」

「だな」


 そう言った龍帝にリュウガは同意する。そんな2人にグレーストは、


「無謀にもほどがありますよ。しっかりと協力してギールスを仕留めないと!!」


 声を荒げる。そんなグレーストに、


「いいじゃないですか。彼らが私たちを信用出来ないのは当然なのですから。なのでこちらが勝手に協力してあげればいいんですよ」


 その言葉に、


「・・・・? あぁ!? なるほど! そう言う事ですか」


 既に大軍に突っ込んでいるリュウガにはフルールドリスが龍帝にはグレーストがついて行く。リュウガと龍帝は大軍に風穴を開けて行く。そんな2人の隙を埋めるのが効率が良いとフルールドリスは判断した。それに、


(無謀な突撃に思えますが実際は正面の敵と襲って来る敵のみに絞って攻撃している。どんなに数を揃えても対峙するのはその中でも僅かばかりならいくらでもやりようがこの方たちにはある)


 冷静に分析するフルールドリス。すると横から大岩を転がしながら敵を薙ぎ払いグレーストが現れる。


「どうしたのです? 貴方には龍帝の方を任せたつもりなのですが」

「すみません。無理でした。あれは最早と変わりませんよ。自分では追いつけませんよ」

「まぁ雷速を誇る彼の龍に追いつけるのはゼーリオ様と雷神であるライクのみでしょうからね」


 そんな話題の中心になってる龍帝は、


「ようやくお目にかかれたな」

「そうだな。そして最期になるな」

「テメェがな」


 冥府の王、ギールスに挑むは最強の龍にしていかずちの権化、龍帝カンムル。


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