16話 ショッピング

「ヒカリのナイフはどこで買えばいい?」


 ギルドにいる冒険者達にリュウガは尋ねる。リュウガは家に伝わる刀を使っており武器屋に関心がない。そのためヒカリのナイフをどこで買うか悩んでいる。


「武器なら剣山けんざんって武器屋が良いですよ」


 ゴウが答える。何でも駆け出しの冒険者から熟練じゅくれんまで様々な人に合った武器を取り揃えているそうだ。ゴウの大剣もソウの槍もハンザの弓もそこの武器らしい。


「武器のメンテナンスもやってくれるので冒険者なら通っておいて損はないですよ」

「そこまで言うならそこで決まりだな」


 ヒカリを連れて剣山へ向かう事が決定した。



「成程な。良い武器屋だ」


 剣山に着いて店内を見ると武器だらけで初心者向けの物から名刀、名槍も揃っている。


「ヒカリ、好きなの選びな。金の事は気にしなくていいから」


 金は前回のフェンリル撃退で大量にある。リュウガは報酬を基本的にはギルドの資産として全額払ってるが今回はヒカリのために金を持ってきた。


「おい! ここはガキのおもちゃなんざ置いてねぇぞ!」


 先に店に来ていた男が絡んできた。


「護身用のナイフを探しに来たんだ。店を間違えた訳じゃねぇよ」


 分かったらどけ、とばかりに男の体をどかす。その態度にキレた男が、


「俺は暗闇の一等星のAランク冒険者だぞ! 舐めてんじゃねぇぞ! クソが!」


 逆上して男が剣で斬りかかってくる。


(ザコだな)


 適当に叩きのめすかと思ったが、


「店で暴れんな!」


 その声と共にハンマーが投げつけられ冒険者の男は店の外に吹っ飛んでいく。店の奥から出て来たのは60代のハゲたガタイの良い爺さんだ。


(このジジイ何者だ? 武器屋の店員にしてはえらく強いな)


 リュウガがそう思うのも無理はない。この店主は元は冒険者でSランクにまで到達したのだから。


「おじいさん、ナイフが欲しいんだけど」


 そんな店主にヒカリは話しかける。


「いらっしゃい。可愛いお客さん。だけど、お嬢ちゃんにナイフは必要ないだろ」


 ヒカリを見て店主は言う。リュウガもその通りと思ってはいるのだが、


「その意見には俺も同意するがこの娘の安全のために護身用に一振り選んでくれると助かるんだ」


 店主はリュウガを見て、


「強いな、お前さん。俺が会った人間で1番だな。お前さんが守れば良いだろう」

「その通りなんだが四六時中一緒にいれる訳ではないからな。それにこの娘が欲しいと心の底から思っているんだ。無理なら他の店にする」


 店主はもう1度ヒカリに視線を戻す。ヒカリは店主の目をじっと見つめる。


「分かった。選んでやる。ただ、お嬢ちゃんジジイとその男に約束できるか? 身を守るためだけに使うと」

「約束できるよ!」

「よし! それなら選んでやる!」


 店主はヒカリを連れて店の奥へと消える。その間リュウガは店の武器を眺めてながら気長に待つことにした。


「決まったよ!」


 10分程経っただろうか。ヒカリが戻ってきた。手にはナイフが握られていた。


「お嬢ちゃんでも問題なく振れる軽さ。斬れ味も低級モンスター相手なら問題ないレベルだ。護身用にピッタリだろ」


 リュウガも試しに振ってみたが軽い。これなら問題ない。会計を済ませる。ホルダーはオマケでつけてもらった。


「お嬢ちゃん、冒険者になれる歳になったら新しいナイフを買いに来な」

「うん、ありがとう!」


 良い店だった。帰ったらゴウに礼をしとかないとなとリュウガは思いながらヒカリとギルドへ帰っていく。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る