14話 隠れ鬼


「隠れ鬼やるぞ」


 ギルドにて全員が揃った時リュウガは突然言い出した。


「何それ?」


 マイが聞く。この世界にはないのだろう。


「簡単に説明すると1人を鬼として残りの人間は隠れるか走って逃げる。制限時間内に鬼は全員捕まえれば勝ち。他は逃げ切ったら勝ちっていう遊びだ」


 ルールを説明する。


「何でいきなりやるのよ?」


 ルイから当然の疑問が出る。


「ヒカリが喋れるようになったし文字も書けるようになったからな。勉強ばかりじゃなくたまには遊んでやんないとだろ?」


 そうなのである。ヒカリはもう普通に生活する分には問題ないくらいの教養は身につけ今はギルドの仕事について勉強中なのだが最近そればかりであまり遊んでない。リュウガとしては最低限の教養を身につけたらそれで良くて後は食べて、遊んで、寝るのが子供の仕事だと考えるがマイがそれを踏まえた上で将来のためにギルドについて勉強させている。今日は息抜きだ。


「だったら、サブマスが遊んであげればいいんじゃないですか?」


 ソウが意見を出すと、何人かは頷く。


「流石に2人だとヒカリがつまらないだろ。それに訓練にもなるんだ付き合って損はさせない。つーか付き合え」


 との事で結局冒険者全員参加で隠れ鬼をする事になった。


「鬼は言い出した俺がやる。安心しろ手加減はする。ハンデで俺は目隠ししてかつ3割の速さしか出さない」


 リュウガはそう言い目隠しをする。


「制限時間は10分! 残り3分で目隠しを外し、残り1分で全速力を出す。もし逃げ切った奴がいたらそいつには俺の奢りで好きな物1つ買ってやる! 鬼のスタートは2分後だ! それじゃあスタート!」


 掛け声と共に全員が逃げる。


(ヒカリは最後に捕まえるか)


 子供を楽しませるのは当然と考えているので最後までヒカリは残すのは確定している。


 2分が経ち匂いを頼りに探す。


(マイとランは補助魔法で匂いを消してるな、全く追えねぇ)


 他は匂いで分かるが魔法使い2人は無理だと判断してリュウガは、


「じゃあ、こいつからだな」


 そう言い走りだす。目隠ししてるのに木を避けて走る。


「ヤッバ!」

 

 見つかったのはソウだ。遠くからリュウガが走って来るのを見て逃げ出す。この世界では冒険者は体内にある魔力で身体からだを強化して戦う。それは逃げるのにも役立つが、


「速すぎるでしょ!」


 リュウガはその上をいく速度で追って来る。そして、


「ソウ、アウト」


 タッチされた。


 「前より身体能力が上がってその分足も速くなってるがまだ判断力が足りてない。俺がスタートする時間になったら俺のいた方向に耳をすませば俺の足音に気づいて逃げれたはすだ」


 ソウにアドバイスを残して次へ、


「フフッ、逃げ切ってサブマスが買えないような高い物のだってやる」


 などと隠れて呟くルイに気づかれずに後ろから、


 「バカ、アウト」


 と言いタッチする。


「バカって言うなぁ!」

「バカだろ俺は今匂いと音を頼りに追ってるのに喋ってる時点でバカ決定、自分の状況考えろ」


 そう言い残して次へと向かう。


 (あ〜、もう2人捕まってるよ。流石だな)


 それを崖上からハンザが見つめる。ハンザは弓使いだけあって目が良く、高い場所にいて鬼の位置を把握してヤバくなったら逃げるという戦法をとることにしていた。


(まぁ、その事にも気づいてるよな。サブマスは)


 気づいている。リュウガは視線を感じてはいたが3割程度の速度だとあの距離を追ったところで逃げられる。そう判断してハンザは後回しにした。


(もっと距離をとりたいが目視できる位置をキープしたいな)


 ハンザは距離をとらずに今の位置をキープする事にした。


(おそらく次は俺だな)


 ゴウはなんとなくそう思った。この遊びの特徴として隠れるのがOKのため後方支援のハンザ、補助魔法の使えるマイとラン、そして元暗殺者のヒカリが最も捕まえづらい。それを抜きにしてもヒカリを楽しませるためにリュウガはヒカリは最後に捕まえるつもりだが。


「さて、隠れるのは終わりだな」


 ゴウは走りだす。まだ距離はあるがリュウガが向かって来る音がする。


(これで目隠ししてるのだから恐ろしい人だ)


 そんな事を思いながらも必死に走る。 そして、


「ゴウ、アウト」


 息が切れた所をゴウはタッチされた。


「流石だな。正直3割じゃお前に追いつくのは無理だから持久戦に持ち込ませてもらった」


 ゴウは3分間全速力で走ったのである。しかし人間は全力をずっとは維持できない。普通はペースを考えるものだが相手が相手のために仕方ない。そして残り5分で4人残っているが手強い。


(ヒカリの匂いが川の近くで消えてる。匂いを流したなこりゃ)


 ヒカリは暗殺しようとした時に匂いがもとで失敗しているため匂いを消す事を覚えたのだ。


(不味いな、ヒカリは気配を完璧に消せるからマジで難易度が高い。これは先に魔法使い組だな)


 標的を決めて耳をすませると、


「聞こえたな」


 走り出した。


「ラン、アウト」

「え〜、何で分かったんですか?」

「匂いは魔法で分からなかったがお前姿勢を変えたろ? その時に衣擦きぬずれする音がした」

「地獄耳」


 これで残り3人。そして残り3分目隠しを外す。


「あ?」


 目隠しを外して早速見つけた。


「出てこいよ、ギルマス」


 そう言い何もない空間に拳を振り下ろす。


 ガン!!

 

 と何かを叩く音がしたかと思うと、

 

 パッキーン!!


 という音と共ににマイが現れる。どうやら結界をはって隠れてたようだ。


「完璧だと思ったんだけど、何で?」

「結界の上に木の葉がのってて空中で浮いてたぞ」


 目隠しをとるとそこには空中で不自然に止まる木の葉が見えたのだ。


「成程ね。もっと研究するね」


 反省点が見つかりマイは嬉しそうだ。


 ハンザの位置は視線でわかるので残り1分になったらタッチ出来る。そして残り1分となりハンザも捕らえる。そして、

 

「ヒカリ、楽しかったか?」


 そう言ってリュウガの後ろをつけていたヒカリに呼びかて捕まえる。驚いた表情をしてヒカリは、


「どうして分かったの?」


 本当に分からないと言った感じだ。


「足音が重なって聴こえた」


 との事だ。結果としては誰も最後まで逃げきれなかった訳ではあるが最後まで残ったヒカリにご褒美をあげても良いじゃんとのルイからの提案により後日買い物に行くことが決定して隠れ鬼は幕を閉じた。


       〜暗殺者集団のアジト跡地〜


 「誰がをやりやがった」


 崩れ去ったアジトを見て男が殺気をあたりに放つ。

 


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