13話 フェンリル降臨!!
「今回はBランクのグランドライナーを討伐するぞ」
グランドライナーはサイのようなモンスターで角が4メートルもある。その討伐依頼をゴウ、ハンザ、ソウ、ランの4人パーティで行う。依頼はパーティーの1番ランクが高い人間のランクを受けられるのでSまでいける。しかし今回はソウとランがいるのでBランクにしておいた。ソウとランの育成のためではあるが念のためAランクのハンザだけでなくSランクであるゴウを同行させている。
「作戦の確認だ。ランが全員に攻撃バフ防御バフをかける。基本的にはソウがメインだ。俺とハンザでそのフォローをする。ハンザはランの防衛もやって貰う」
「「「了解」」」
3人の返事を貰い、
「よし、行くぞ!」
ゴウの号令でグランドライナーを探しに森を進む。しかしモンスターに
「変だな」
「ですよね」
ゴウとハンザは不思議に思う。長年冒険者をやっているがここまでモンスターに遭遇しないのは
「全員気を抜くなよ! 何かは分からないが
ソウとランはその言葉に気を引き締める。
(ハンザは大丈夫だと思うがソウとランはまだ経験が浅い。これは撤退だな)
ゴウは撤退を決める。ソウはCでランはDランク正しい判断だ。しかし、
ウォーンーー!!!
遠吠えが森に響く。
((不味い!))
ゴウとハンザは今の遠吠えがAランクモンスターのホワイトウルフだと知っている。ホワイトウルフは群れを作る。しかも1匹1匹がAランクなのだ。群れでAランクではない。群れの数が10匹を超えるとSランク冒険者に緊急依頼が出される程だ。ゴウとハンザは討伐経験があるが今回はソウとランもいる。形勢は不利。
「全力で撤退する! ランは俺が抱えて走る。2人は俺の後ろに来い!」
そう言うとゴウはランを抱え返事も聞かずに走る。ソウとハンザも後を追う。
(逃げ切れるか?)
おそらく無理だろう。ホワイトウルフはスピードだけならAランクモンスターでもトップクラスだ。即座に無理と判断してゴウは、
「ハンザ! 俺がホワイトウルフを討伐する! 2人を連れて森を出ろ!」
ハンザはゴウの意思を
「よし! 来い!」
後ろから追ってくるホワイトウルフを迎え撃つために剣を構える。しかし、
「何?」
現れたのはホワイトウルフだったのだが1匹しかいない。最低でも5匹の群れを作るホワイトウルフがだ。
(どうなっている? 森にモンスターがいないのと関係しているのか?)
考えているとホワイトウルフが飛びかかって襲ってくる。間一髪の所で避ける。
(今はその事を考えるのはやめよう。1匹とはいえ相手はAランクだ)
すぐに討伐に頭を切り替える。剣を構え直す。ホワイトウルフのスピードには闇雲に剣を振っても当たらない。そのため基本は飛びかかって来たところをカウンターで倒すのがホワイトウルフの討伐だ。スピードが速いため難しいが、
ガウッ!!
ホワイトウルフが飛びかかり噛みつこうとする頭を上段の構えから剣を振り下ろした。
ズバッ!!
ホワイトウルフは真っ二つに切り裂かれた。リュウガが強すぎて薄れているがゴウは国内でも最強格のSランク冒険者だ。Aランクモンスターに劣る道理がない。そもそもSランク冒険者はAランクを瞬殺して当たり前の存在だ。そのSランク冒険者を圧倒するリュウガがおかしいのだ。
「疑問は残っているが帰るか」
ゴウは3人が待っているであろう森の外へと向かう。その姿を森の奥深くからの視線が貫いていた。
◇
「リュウガ・レン様! 大至急総本部へ! 大陸の覇者フェンリルが出ました!」
運命の宿木にまたもや総本部からの遣いが来た。
(何かデジャブだな。この感じ)
リュウガは心底うんざりした顔で総本部へと向かう。
〜ギルド総本部〜
「で? 俺にフェンリルを討伐しろって話ですか?」
グランドマスターの部屋に着くなりリュウガはダンに喋りかける。
「そうして貰いたいが違う。フェンリルはこの国だけでなく他の国からでも目撃が確認されている伝説のモンスターだ」
そうなのである。フェンリルは大陸だけでなく
「討伐は許可されないがフェンリルがいるせいでモンスターがいなくなり生態系のバランスが崩壊する可能性がある上に既に一部地域ではもう被害が出ている。よってお主にはフェンリルを国内から追い出して欲しい! つまりは
◇
「撃退かよ、討伐より難しいだろ」
フェンリルが最後に目撃された草原でリュウガは呟く。討伐なら手加減しないで息の根を止めてしまえばいい。しかし今回は撃退だ。息の根の止める訳にはいかず国内からフェンリルを追い出さなければいけない。
「伝説のモンスター相手に殺気をぶつける程度じゃ撃退は無理だろうな」
いくらリュウガが最強であっても相手はフェンリル。陸の覇者とまで呼ばれる伝説のモンスターだ。殺気のみで追い払うのは流石に厳しい。そこへ、
「お出ましだな」
どうやって撃退するか考えているリュウガの正面の丘からフェンリルがリュウガを見下ろす。フェンリルは狼王とも呼ばれるだけあって美しい白銀の毛並みをしている。他国で神聖視されているだけの事はある。大きさは全長6mはあり体高は3m。そんなフェンリルに、
「
静かに殺気をぶつける。
アオーーン!!
フェンリルは駆け出す。モンスター界
ドォーーン!!
凄まじい衝撃があたりを襲うがリュウガは、
「手加減しないとなんねぇんだ、大人しくしろ」
フェンリルの前脚による踏み付けを刀で受け止めて
(面倒くせぇな、討伐なら今の一撃もカウンターの抜刀術で首を落として終いなのによ)
リュウガの基本戦術というよりは彼の使う練式剣術は敵からの攻撃をカウンターの抜刀術で仕留めるのが基本でありリュウガも今までモンスターを討伐した際は
グゥオーーン!
フェンリルの遠吠えに反応して竜巻が起こる。リヴァイアサンは海水を操っていたがフェンリルは竜巻を操る。8本もの竜巻が現れると、
ズバッズバッ!!
リュウガの身体に無数の切り傷が出来る。あまりの風速にかまいたちが発生してあたりを襲う。踏ん張らないと竜巻に飲まれて身体がバラバラになるだろう。
「舐めんな」
刀を振るい竜巻全てをかき消す。普通ならありえないが世界最強の男は容易くそれを可能にした。その現象にフェンリルが怯んだところをフェンリル並みの速度で突っ込み上段から峰を叩き込む。業の名は ‘
ドッゴォーン!!
という音と共にフェンリルが地に叩きつけられた。万が一反撃された時に反射で
バッ!
と、フェンリルは跳ね起きてリュウガを唸りながら睨みつける。リュウガも殺気を放ちながら刀を構える。両者互いに睨みあう事数分、
ウォオーン!!
フェンリルが吠えるとリュウガから背を向けて駆け出した。一瞬で姿は見えなくなったが恐らく方角的には他国へと向かったのだろう。
「流石に疲れた」
リュウガは寝っ転がる。この世界に来て初めて傷を負っただろう。とはいえかすり傷ではあるのだが。
(俺がこの世界に来なかったらどうなったんだろうな?)
そんな事を考えながら暫くの間寝る事にした。
◇
「依頼が終わったんなら帰ってから寝なさいよ!!」
帰ってきたリュウガにギルドマスターからの説教が飛んだ。
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