9話 メンバー5
マイと共にワイバーンを討伐してから、数日後リュウガはまたグランドマスターに呼ばれた。
「今度は何の討伐ですか? 陸の覇者フェンリル? それとも天空の覇者サンダーバード?」
「いやいや、お主ならやれるだろうが違う。今回頼むのはとある冒険者の救出だ」
◇
「危険地帯のブリザード大陸を調査している冒険者からの連絡が途絶えたらしい。その救出を俺達が任された。メンバーは俺とマイだ。他は個人で依頼をこなせ」
「何でわたしが入ってないのよ!」
「場所が場所だからだよ」
ブリザード大陸は常に吹雪であり大地は凍りついている。その上モンスターは平均Bランクそして大陸の主にSランクのブリザードドラゴンがいる。ルイはSランクではあるが凍りついた大地に吹雪という悪天候の中ドラゴンと戦うとなると荷が重いだろう。他の2人も同様だ。
「俺はドラゴンだろうが余裕だから。それにマイは補助魔法で救助に役立つからだ」
そう言い、ブリザード大陸への出発を決めた。
◇
ブリザード大陸はダイダラ海域を抜けた先にある。ギルドの船は未だリヴァイアサンに壊されたのが修理中の上にブリザード大陸は危険地帯のため漁師に頼るのも躊躇われた。そんな訳で現在ボートで向かっている。しかし、今回はマイが風魔法を使うことで漕ぐ事なくかつ速いスピードで向かっている。
「大陸まで持つのか? 魔力?」
「余裕だね! わたしの魔力量は国内3位だからね!」
ちなみに1位は剣聖らしい。まぁ、魔力を持たないリュウガにとってはどれくらい凄いのか判断出来ないが国内3位なのだから凄いのだろう。
「見えて来たな!」
ボートで進む事1時間、吹雪が荒れ狂う大陸が、
ブリザード大陸だ!
今回の救出相手はSランクの冒険者とその仲間たちだ。ブリザード大陸へモンスターの生態調査並びに資源となる鉱物などの探索をグランドマスターから頼まれたらしいが、3日おきに来る定期連絡が届かなくなったため緊急事態と判断して運命の宿木に依頼が来た訳だ。
「この吹雪だと探すの大変だ〜」
物凄い吹雪で視界はほぼゼロだ。そんな吹雪でもマイが寒くないのは補助魔法のおかげだ。しかしリュウガには魔力がないためか、補助魔法が効かない。それでもリュウガが無事なのは脈拍を上げて体温を調節しているからだ。家で習得した技術らしい。
「風上から人の匂いが流れてくるな」
「良く分かるな〜、でもどうする?」
「ん? こうする」
そう言い、マイを背負う。そして駆け出した!
「このまま行くぞ! お前は何もしなくていい! 救助の時のために温存しとけ!」
「分かった!」
駆ける! 駆ける! 駆ける! ただひたすらに駆ける!
その際、モンスターに遭遇するが全て斬り捨てて駆ける! どのモンスターもBランク相当の強さを持っているモノばかりであったがそのどれもが斬り捨てられた。
「何だ? あれは?」
「へっ?」
目の前に突然巨大な真っ白な壁が現れた。
「これ、ブリザードドラゴンだよ!」
現れたのはブリザードドラゴンである。ランクはS。白銀の鱗に覆われたその巨体は全長15mはある。この大陸の主なのだが、
「いや、こいつは死んでるな」
死んでるのだ。ブリザードドラゴンが、
「もしかして、上陸してる冒険者が討伐したのかな?」
「かもな」
それだけの実力者が危機に陥ってる可能性があるのだ。
「先を急ぐぞ」
また、駆け出す。
◇
洞窟を発見し、そこから匂いがするために洞窟の奥へ。洞窟を進むと火が見える。そこには人影が、
「お〜い、助けに来たよ〜」
マイが叫ぶ。人影は、声に反応して人影が立ち上がる。
(ドラゴンを
「助けか? ありがたい。俺はゴウ・ライ。Sランク冒険者だ」
ゴウは30代程の三白眼の大剣を背負った黒髪のがっしりとした体型をした男だ。
「ブリザードドラゴンは倒したんだがな」
酷く落ち込んでいる。
「あの、、パーティーのお仲間は?」
そう1人なのである。おそらく、
「皆死んだ。ブリザードドラゴンに殺られてな。俺だけ生き残っちまった」
(そうだよな。状況的に)
「皆を運びたいがモンスターが邪魔でな。幸いこの寒さのおかげで腐らずに済むのが救いではあるんだが、俺1人本土に戻る訳にもいかず、結果として帰れずにいたんだ」
「状況は分かったよ! わたしなら魔法で運べるよ。任せて!」
「助かる!」
マイは浮遊魔法で彼の仲間の遺体を運ぶ。そのマイをリュウガがまた背負い駆ける。ゴウもその後ろに続く。死肉目当てのモンスターが道中襲ってくるがその全てをリュウガは斬り捨てた。その姿を見たゴウは驚きを隠せずにいる。
(この凍った大地に荒れ狂う吹雪を人を背負ってもBランクモンスターを討伐するとは!)
自分もSランク冒険者として強さに自信はあるし経験も積んで来た、それでもこの男には一生届かない。会って間もないが実力差を痛感する。暫くしてボートへと着くがここである問題が生じる。
「流石にボートに遺体を全部乗せれない上にお前の魔法で遺体を浮かせれても手ごきで漕ぐとなると遺体が腐るぞ」
リュウガはそう指摘する。魔法は同時発動が出来ない。つまり遺体を浮かせながらボートを風で進ませる事は出来ないのだ。
「やはり、俺たちはここに残るよ。仲間が死んで自分だけ生きるのは申し訳ない。総本部には全員死んだと報告を、、」
そんなゴウの言葉をルイは遮り、
「そんな事言わないで! そんな必要ないんだから!」
マイは風魔法で大陸の氷を切り抜きそれを船の形に造形した。
「これなら、皆帰れるね! それとゴウさん、ここで仲間と共に死ぬのはあなたと戦って死んだ仲間に対しての侮辱だよ? 取り消して!」
マイの鋭い視線がゴウを貫く。
「すまない、その通りだ。気づかせてくれてありがとう」
ゴウが頭を下げる。それを見て、
「こちらこそ、すいません、年下なのに生意気言って」
マイが慌てて謝罪する。
「おい、そこで謝んなよ。格好つかねぇな」
「良い事言ったんだから褒めてよ!」
などと食ってかかるマイとそれを適当にあしらうリュウガを見てゴウはある決断をする。
◇
「、、以上がブリザード大陸での調査内容です」
無事ブリザード大陸から帰還して、ゴウは総本部にてガンに報告を済ませた。
「そうか、ワシの依頼で仲間が死んだ事深く謝罪する」
「いえ、冒険者である以上全員死は覚悟していました」
「そう言って貰えると助かる。ご苦労! ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
部屋を出るとリュウガとマイがいた。ガンに報告するためだろう。そんな2人を見てゴウは、
「仲間たちの遺体を本土に運べるたのはあなた達のおかげだ。恩を返したい! 俺をギルドに入れてくれ!」
「恩だなんて思わないでよ、当たり前の事だからね! それはそれとして歓迎するよ! 運命の宿木に!」
ここで新たにメンバーが加わった。
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