幕間1 リュウガの過去(幼少期)

 練龍牙れんりゅうがは戦国時代から続く武士の家系に生まれた。

 

 練家とは初代当主練龍覇れんりゅうはが家族を、友を、自分の大切な者達を守るために自分なりの剣術を身につけたのが始まりである。そのため、他の武士達のように都を守ったり、どこかの城の殿様に仕えたりする事はなく、ひっそりとしかし確かに剣術を子供達に授けていった。

 

 しかし、時が経つとある問題が生じた。金の問題だ。今までは、自分達の使う剣術とは別に護身術を教える事で生計を立てていた。しかし、それだけでは生きる分には事足りるのだが生活は質素なものだった。そこで13代目当主は練家の剣術を使い殺しの依頼や用心棒として金を稼ぐ事を考えた。

 

 練家の剣術は大切な者達を守るため相手を確実に殺すための剣術でその実力は歴史上最強であった。これにより様々な仕事をこなす上でその名は裏の世界だけでなく政治家内でも知られる事になる。

 

 そんな家に17代目として生まれたのが練龍牙である。彼の才能は歴代最強と言われる2代目当主練龍鬼れんりゅうきと並ぶ物であると言われた。そこまでの物とは本人は知らないが彼の祖父は自分の孫は自分を越える才能の持ち主だと確信していた。そんな祖父による指導は子供にやるには苛烈過ぎる物だった。朝5時から昼まで休憩なしの素振り。昼飯が終わったらまた夕飯まで素振り、夕飯が終わったら祖父と父による業の精度を上げるための訓練を寝る時間の深夜2時までするという物だ。 

 

 そんな指導を彼が頑張れたのは世話役の綾乃あやのという女性に他ならない。彼女は、綺麗でとても優しく自分のためにこっそりオヤツなんかを与えたりしてくれていた。そんな彼女に対して恋心を抱き彼は10歳の誕生日前日に、


「俺が誕生日を迎えたら、この家を出よう。今の俺はクソジジイよりもクソ親父よりも強い。あなたを守れる。だから一緒に何処か遠い所に行こう」

「うん。一緒にいようね」


 返事と共に額にキスされた。こんな幸福な事はない。絶対に彼女を守る。その決意を固めた。


 誕生日当日、普段なら起こしに来る綾乃が来ない。嫌な予感がした。家を駆ける。綾乃の部屋から血の臭いがする。戸を開けると祖父が刀を持ち、足下には頭と胴が別れた綾乃の姿があった。祖父は自分達の逃避行に気づいていたのだ。そのため彼女を殺したのだ。


(何が自分は強いだ、何があなたを守るだ、守れてないじゃないか、、、、)


 悲しみに暮れる。苦しさから吐き気がする。そんな孫の心情を知らずに祖父は、


「何を呆けている今日はお前の誕生日だぞ、祝いの場は用意してある」


 さらりと告げる。人を殺しておいて。

 

 そこで彼の何かが切れる音した。喉が焼き切れるのではという程の咆哮を発すると共に彼は手刀で祖父の首を斬り落とす。あまりの速さに祖父は反応する事が出来なかった。

 

 その後彼は祖父が持っていた刀を手にし、家にいる人間を全て殺した。

 時間にして2分。その2分で15人もの人間を殺してみせた。


 殺し終えたそこには、練家歴代最強にして世界最強の剣士が誕生していたがその顔は涙でグシャグシャになっていた。


 その後の彼の動向はまた後日別の機会に。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る