第19話 物理

慌てて出て見ると前にコンバット装備を届けてくれた

例の銀色のドローンがプカプカと庭先に浮いてるじゃないか。


なんでここにいるのがわかったかちょっと不思議だったけど

きっと魔銃が位置データを送信しているんだろう。


「オトドケモノッス ミトメオネガイシィヤース!」


相変わらずの甲高いおもしろいイントネーションだ

俺が右手をかざすと前のように掌紋がスキャンされた。


「カクニンシュウリョオ コンバットソウビテンソウ!」


ポンッ!と箱が現れたので俺は慌ててキャッチした。


「マイドォウ~!!」


そう言ってアッというまに飛んで行ってしまった

認証が済んで、受け取ったのは手の平に乗るくらいの

とても小さな箱がひとつだけだった。


「えぇっ!?なんだこれ?  これが今度のコンバット装備??


あんだけの大軍を迎え撃とうってんだからさぁ

なんかビームガトリング砲とか でっかい波動キャノンとか

せめて暗い血の色で右肩を染めた戦闘用ロボとか欲しかったのになぁ

なんなんだよ~この手の平に乗っかるちっちゃい箱はよぉ・・


こんなんでどうしろっていうんだ!ケチ臭くなってきたね

まぁ、でもとりあえず箱を開けてみよう。」


あれ? 

箱にSuper Nova bullet(スーパーノヴァブレット)SNBて書いてあるぞ」


中身は透明なケースの中に、例の弾幕弾の形に似た

親指大の弾丸が一発だけ入っていたんだ

ただ黒い薬莢に金色に光る丸みのある弾頭がいかにも強力そうな弾だった。


なんだろ スーパーノヴァ弾って?? 

スーパーノヴァって天文学に出てくる言葉だよなぁ・・

確か太陽よりずっと重い星の最後の姿だって動画で見たよ。



あれれ? いつもなら、この辺で説明のビジョンが脳内に

現れるのになんにも出てこないぞ 

どうしたんだ? 魔銃 調子悪いのかな?


"説明しても時間の無駄の可能性大"


はぁ? 俺に説明しても無駄だって?


ちょっとカチンきたぞ いいから説明しろよ

ミリおた知識を舐めるなよ 舐めるな(2回言ってやったぞ ザマー!)


すると突然に例の解説が脳内にイメージされてきた。


"スーパーノヴァ弾はボース・アインシュタイン凝縮

(Bose-Einstein condensation,BEC)による爆縮と

極低温によるボースノヴァ現象を兵器に応用したもの



ボースノヴァ/Bosenova現象

まず原子間の相互作用が斥力の状態でド・ブロイ波が

コヒーレントとなるボース・アインシュタイン凝縮体を

作りだし、誘導磁場フェッシュバッハ共鳴効果

(原子同士が衝突した際に一時的に束縛状態が形成

される状態)を用いて相互作用を斥力から引力に

急激にスイッチすることによりBECは、自らの引力に

より収縮して小さくなっていく


その一方でBECが収縮していく程、量子力学的には

ハイゼンベルグの不確定性原理に従うため運動量の

不確定性は増大していくことになる


そして、相互作用が系を支えきれなくなると今度は

重力による崩壊/collapsが発生する

この重力崩壊により原子密度は10^18にも圧縮される


しかし、BECは崩壊の過程で原子の数が減少するために、

ある時点で運動量の不確定性が引力相互作用に打ち勝つ

ことによって崩壊が止まり膨張に転じていくことになる


その時に、圧縮された原子密度により蓄えられていた

巨大な潜熱が原子の運動エネルギーに転化され,

原子集団は巨大な爆発/jet formationを起こす

これがBosenova現象である"


「あ~~ そっちかぁ・・ ソッチ系の話ね・・ 


うんうん アイシー アイシー」 


調子に乗った魔銃のやつは、どんどん勢いを増して

それからもボースノヴァ現象を応用した爆縮コアの

動作原理やゼーマン減速を用いた低速原子ビームの

磁気光学トラップ(アンチヘルムホルツコイルを

使って四重極磁場を印加し、3方からレーザー対向

照射することで、直径数mm程度の原子凝縮球体を作る)

によるレーザー冷却システムの原理などなど

多岐にわたる説明がかなりしつっこく続けたんだよ-_-;)


「わかった! わかった! もういい もういいから

お前がそれで良ければ、俺はもう何も言わない!」


まぁ とにかく、コイツがここまでいうんだから

超スゴイ性能に違いないよ。

 

「こんなのがこの銃と親指大の弾に詰まってるのか

よし! このSNBでぶっ飛ばしてやるから見てろ!」


あっ!? だけどスーパーノヴァつうくらいだから

水爆なんかより強力なやつを使って

この村の人たちまでふっとばさないだろうな

それじゃあ 元も子もないからね。


"爆発の非等方性かつ放射能汚染無し"


「はぁ? なんのことだろ??」


う~ん ポクポクポク ち~~ん!


「あっ 判ったぞ!

非等方性ってのは方向 つまり向きがあるってことだ」


よく原爆とかはバ~とドーム状の爆発が広がって

キノコ雲ができるけど、ああいう半球状になるんじゃなくて

この弾は爆発する方向をコントロールできるんだな。


C-4(軍用爆薬)なんかにもあるけど、指向性爆弾としての

性能ももってるってわけだ。


スーパーノヴァ弾のその辺のパラメータは得られた

ターゲットデータから魔銃が自動で設定してくれるんだろう。


なんしろお風呂だって、ボタンひとつでお湯はりして

一定水位で、お風呂が沸きましたって教えてくれるんだから

この魔銃ならそれくらいできてむしろ当たり前だよね。


「それに核兵器と違って、放射能汚染も無いってんだから

これは使い勝手がいいや!」

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