第6話LINEライバーになった少年、声が小さいのよ。
二千二十一年四月三日
二十一時八分
ヒナピナチャンスは産声をあげる。
オニルさんのファストブレイクであり初配信おめー! の瞬間である。
某五分前携帯端末へのアプリ登録完了。
携帯端末の画面には、オニルさんがいた。
約五インチの画面のほぼ全てを埋めるオニルさんのドアップ。
これ需要あんの?
私の第一印象はそれだった。
さて配信と言っても初めてのオニルさん。
いくら好きなビーコルの為と言っても、選手の紹介やら球団の歴史なんて語るのはナンセンス。
そんなのファンは知っている情報だ。
ボソボソ。ボソボソ。
声ちっさ!
オニルさんの声がめちゃくちゃ小さくてスマホのボリュームをドンドン上げてもあまり聞こえない。
しかも全面ドアップの顔はやや斜めで。
上部にはエアコンの吹出口の真下が映し出されていた。
「この人、寝転がりながら配信してますけど」
周りに家族がいて大きめな声がだせないのか?
リラックスしすぎで素なのか。
初めての緊張などゼロ。
これこそがオニルさんのゼロ。
そして視聴者は二人。
私とオニルさんの共通の友人であるラザニアさん(ペンネーム的な)。
しかもラザニアさんは、あまりにも聞こえない声の為にスマホのボリュームをMAXにして隣にいた奥様に怒られるというテクニカル状態による離脱。
その後、一人来ては三秒で離脱。一人来ては三秒もたずに離脱。
ゴール下だって三秒いられるんだから、もっとゆっくりしていけよ。
私は配信視聴者の為に用意されたコメント送信機能へと指を動かすのだった。
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