17. 元執事、襲われる

「今来ないでっっっっっっっっっっ!?!?!?!?」

「ワォンッッッッッッッッッッッッッ!!!!1」


 俺たちは今黒い大群から逃げ惑っていた。

 数分前、穏やかな空の旅を過ごしていた俺たちに黒蜂ブラックホーネトの大群が急に襲いかかってきたのだ。


 感知して避けるより倒した方が早いと判断したのがまずかった。


「こんな大量に出てくるとか知らねーよ!?」

「ワウゥン!!!!!」

「〈火炎砲〉!!」


 黒い大群——黒蜂(巨大&猛毒持ち)——が襲いかかってくるのを炎で焼き払う。


「とりあえず逃げ切って転移陣のればいいだけだからまだいいけど……!」

「ワンッ!」

「ほんと多すぎだっつーの! 〈爆炎〉!」


 背後で爆風が起こる。それを避けるように高度を下げると、俺はハクを抱きかかえたまま転移陣に向かって急降下する。と。


「おいおいおいおい……なんでここに魔物がこんなにいるんだよ……」

「ワゥン……」


 転移陣のそばには大量の魔物がウロウロしていて着地が難しい状態に。


「こいつら一々倒すのめんどくさいしその間に黒蜂が襲ってくるからな……」

「ワン……」


 ハクの悲しげな鳴き声。と……


「そういえば神狼フェンリルって氷系統の魔法が使えるとかいう神話があったな……ハクはまだ子供だから無理だろうけど……」

「ワキュ?」


 ハクを見て思う。氷系統の魔法なら一気に凍らせることができるんじゃないか。


「やってみるか」

「ワン!」


 即座に魔法式を展開する。そして……


「〈氷旋風ひょうせんぷう〉」


 絶対零度の風が巻き起こる。そして……


 パキッ。ピキッ。


「ブフォォ!?」

「ギシャー!!!!!」

「ビャー!?!!?


 風とともにすべての魔物が凍りついて行く。気づいた魔物たちは暴れて逃げようとするが少し動いた先で凍りついていた。空を飛んでいた黒蜂たちは凍りついて落下していく。


 あまりに魔物が多すぎた結果、周囲が氷の塊に覆われることとなった。


「ふぅ、こんなに魔物いたのか」

「ワンッ」


 コアを集めながら呟く。ハクがくわえて持ってきてくれるんだが……いい子……!

 なでなでしながら思考を巡らす。


「さすがに魔物多すぎだな……これが異常現象なのか、普段通りなのか俺には判断できないのが困るな」

「ワン……」


 魔物が増えているという話が本当なのか、それが本当ならどれくらい増えているのか。そして……


魔物大氾濫スタンピードが起きそうなのか、だよな問題は」

「ワン」


 魔物大氾濫とは魔物が迷宮から溢れ出すことだ。普段迷宮にいる魔物が溢れ出せば、迷宮のそばの町や村は甚大な被害を受ける。

 俺が心配していたのはそれだった。だから早く状況を確認したいのだが……


「俺じゃ判断できないってことがよくわかった」

「わふ……」

「しょうがない、とりあえず四階層に行って他の冒険者がいればそこら辺の情報ももらえるだろう」

「ワン!」


 未だに他の冒険者に出会っていないが、深いところに潜っている人がいるというのも聞いたし、ここからだろう。


「じゃあ行くか」

「ワン!」


 俺たちはそうして三階層を攻略したのだった。




 ***




「ここが四階層か……普通、だな」


 転移陣を使って四階層に上がると一階層と同じ地下のような空間が現れて、少しホッとする。


 だが、すぐに異変に気がついた。


「ここの層……魔物が多すぎないか……?」

「わふぅ……」


 見渡す限り一面に魔物がいる。そもそもどうやって通るんだここ。

 と、そのときだった。


「キャア!」


「悲鳴!?」

「ワンッ」


 遠くから聞こえて来る女性のものらしき悲鳴に俺はハクと顔を見合わせる。


「とりあえず行くしかないな」

「ワンッ!!!」


 俺たちは四階層の攻略を開始した。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る