37. 風邪

「みぃおはよう。」


「…おはよう。」


朝起きた瞬間に身体がいつもと違う気がした。体調崩したのかな…。


「みぃ、体調悪い?」


「っえ、悪くない。」


咄嗟にほくに隠してしまった。


「んー、熱はないね。」


「うん。元気だよ。」


おでこに手を当てられ、ほくが熱を測る。

今、熱はないみたい。良かった。


「みぃ学校行ける?」


「うん!行ける。」


「じゃあ、準備しよっか。体調悪くなったらすぐ言ってね。」


「うん。」


ほくにはいつもすぐ気付かれてしまう。

ベッドから出て立ち上がるといつもより身体が重く感じた。


「いってきます。」


「いってらっしゃいー!」


支度を済ませ、学校に向かう。

まだ、そこまで体調は悪くなさそう。良かった。


「ほく、なんか視線感じる…。」


「すごいね。」


学校に着くと、SNSのせいか色んな人に見られている気がする。


「美蘭、おはようー!」


「おはよう!」


「すごいね、みんな美蘭を見に来てるよ!」


「帰りたい…。」


こんな注目されるなんて思ってなかった…。


「美蘭、ご飯食べいこー!」


「うん!」


昼休みになり、屋上でお弁当を食べる。

体調、どんどん悪くなってる気がする。


「美蘭、こっち来て。」


「うん。」


屋上で呼ばれてほくのところへ行く。


「美蘭熱ない?」


「え!?美蘭熱あるの?大丈夫??」


「えっ、な、ないよ。」


「本当に?体調悪くない?」


「悪くない。」


「そっか。なんかあったらすぐ言って。」


「うん。」


ほくにおでこに手を当てられる。やっぱり、熱があるのかな…。


「美蘭、ご飯めっちゃ残ってるじゃん!」


「うーん。なんか食欲なくて。」


「えぇ。大丈夫?保健室行ったら?」


「いや、大丈夫。ただお腹すいてないだけ!」


「そっかぁ。」


食欲もなくてご飯があまり喉を通らない。


「そろそろ教室戻ろっか!」


「うん!」


お弁当は少しだけ食べて残してしまった。


「寛太と結衣、先に教室戻ってて。」


「ん?分かったー。授業遅れないようにねー。」


「え?ほく?どうしたの?」


教室に帰ろうとしていると、ほくに止められ空き教室に連れてこられた。


「みぃ、体調悪いよね?」


「わ、悪くない。」


「なんで隠してるわけ?」


「悪くないもん。」


ほくにバレてる。


「熱あるじゃん。」


「暑いだけ。」


「違うでしょ。」


「違くないもん。」


「なんで嘘つくの?」


「嘘じゃないもん。」


「保健室行くよ。」


「やだ。」


「行くよ。」


ほくに怒られて泣きそうになる。頭が痛い。


「みぃ、行くよ?」


「やだ。行かない。」


「今まで、体調悪かったらすぐ言ってくれてたじゃん。なんで今日は言わないの?」


「体調悪くないもん。」


「もう、泣きそうになってるじゃん。」


予鈴が鳴る。


「もう、授業行かないと。」


「行けないでしょ。みぃ、怒るよ?」


「やだ。」


「わがまま言わないの。」


「やだ。」


「…。」


ほくも完全に呆れてる…。嫌われちゃったかな。


「みぃ、ここにいていいから授業はサボろ?」


「え?」


「体調悪くないんでしょ?」


「う、うん。」


「授業ダルいから一緒にサボろ。」


「で、でも、2人でサボったらみんなに怪しまれちゃうよ。」


「大丈夫でしょ。俺らがめちゃくちゃ仲良いのはみんな知ってるだろうし。親友2人でサボったみたいな感じでしょ。」


「そうかな?」


「うん。サボるでしょ?」


「うん!」


一緒に授業を欠席することになった。これ以降、体調悪いかは聞かれなかった。


「みぃ、眠くない?ちょっと寝たら?」


「うん。寝る。」


ほくの膝の上で寝る。ほくのブレザーをかけてくれた。


「みぃ、起きて。」


「んっ、」


「もう少しで授業終わるよ。」


「うん、」


寝たら少しだけ体調が良くなった気がした。


「みぃ、次の授業はどうする?」


「出る!」


「分かった。もうちょっとしたら教室戻ろっか。」


「うん。…ほくも一緒にサボらせてごめんね。」 


「いいよ。今日は、美蘭ちゃんのわがままに付き合ってあげる。笑」


「ほく、ありがとう。」


気を使い過ぎない優しさをくれるほくには感謝しかない。


「美蘭!結局来なかったじゃん!!」


「ごめん。笑」


「美蘭ちゃん、どうしたの?」


「ごめん、サボってた。笑」


「北斗くんと?」


「そう。笑」


「本当仲良いね!笑」


「仲はいいかも!笑」


教室に帰ると結衣と理沙ちゃんに質問攻めされた。


「はい、授業始めます。」


『お願いします。』


今日最後の授業が始まった。

少し寝て回復したと思ったら全然だった。どんどん酷くなっている。


「はい。じゃあ今日はここまで。終わります。」


『ありがとうございました。』


授業に全然集中できない。


「美蘭、帰ろ。」


「うん…。」


ホームルームが終わり、ほくと一緒に教室を出る。


「みぃ、帰れる?」


「う、うん。」


「ほんと?嘘ついてない?」


「うん。」


本当は、すごくフラフラする。でも、帰らなくちゃ。


「みぃ、フラフラしてるけど。」


「してない。」


「なんで体調悪いこと隠すの…。」


「…悪くない。」


「怒るよ。」


「ほく嫌い。もう、みぃ1人で帰る。」


「そんなんじゃ無理だろ。」


「やだ!」


「もう、何で泣いてるの…。」


ほくに怒られて涙が止まらない。余計身体がキツくなる。


「おかえりー!」


「ただいま。美蘭体調悪いみたいだから、ちょっと休ませるね。」


「えっ、そうなの?美蘭、大丈夫?」


「うん…。」


なんとか家に着いた。ほくにお姫様抱っこされ、部屋に運ばれる。


「みぃ、着替えさせるよ。」


「…。」


ほくに着替えさせられ、制服から部屋着になる。


「熱測るよ。」


「やだ。」


「わがまま言わないで。」


「やだ。測らないで。」


「いや、無理。」


「…お願い。」


ほくに泣きながらお願いする。


「理由教えてくれたらいいよ。」


「…熱ないもん。」


「あるでしょ。」


「ない。」


「みぃ、なんなの?俺、ちゃんと言ってくれないと何もできないんだけど。」


ほくが怖くて、涙から溢れる。悪いのは自分なのに。


「みぃ、ごめん。言い過ぎた。」


「…。」


「怖かったね。」


ほくがハグしてくれる。


「熱測らなくていいから、理由教えてくれない?何か隠してる?」


「…昨日約束したもん。」


「約束?なんの?」


「今日エッチするって。」


「えっ、熱出たらエッチできないと思って言わなかったの?」


「…うん。」


「そんなにエッチしたかったの?笑」


「だって、ほくがすごく喜んでたもん。」


「俺のために言わなかったの?」


「うん。」


「馬鹿だなぁ。笑」


「笑わないでよ。」


理由を正直に言ったら笑いながら優しく頭を撫でてくれた。


「みぃ、俺はエッチするために付き合ってるんじゃないからね?みぃが大好きだから付き合ってるの。」


「うん。」


「これからずっとエッチできなくてもみぃのこと大好きだし、ずっと一緒にいるよ。」


「うん。」


「だから、約束したからってエッチしなくてもいいし、嫌だったら嫌ってはっきり言うんだよ?」


「うん。」


「うん。いい子。今日はエッチしないよ。ゆっくり休もうね。」


「うん。」


「もう、泣かないの。笑」


ほくからの言葉が嬉しくて涙がまた止まらなくなってしまった。


「ほく、本当にエッチしなくていいの?」


「うん。ずっとはちょっとキツいけど。笑 みぃのためなら我慢できる。」


「ほくだいすき。」


「俺も。」


幸せだなぁ。


「みぃ、ちょっと寝ようか。」


「うん。」


「俺、水とってくるね。」


「やだ。」


「え?どうした?」


「行かないで。」


「寂しいの?」


「うん。」


「分かった。みぃが寝るまで行かないよ。」


「ほくも一緒に寝よ…?ぎゅーして寝たい。」


「分かったよ。ぎゅーして寝よっか。」


「うん。」


ほくにぎゅーされたまま寝る。すごく安心する。


「ん…」


「みぃ、起きた?」


「…うん。」


ほくは私が寝ている間ずっと隣にいてくれていたみたい。水取りに行くって言ってたのになぁ。


「みぃ、まだ熱いね。」


「うん。頭痛い。」


「そっか。ご飯は食べれそう?」


「うーん。少しなら。」


「分かった。ちょっと食べよっか。」


ほくが携帯で一階にいる麻美ちゃんに連絡してくれる。寂しいって言ったのすごく気にかけてくれてるみたい。


「2人ともお待たせ。美蘭大丈夫そう?」


「うーん、なんとか。」


「そっかぁ。食べれなかったら残していいからね。なんかあったらまた連絡して。」


「はーい。麻美ちゃんありがとう。」


麻美ちゃんがお粥とほくのご飯を持ってきてくれた。


「みぃ、食べれそう?」


「うん。」


「じゃあ食べよっか。」


ほくがスプーンを持ってお粥を食べさせてくれる。


「おいしい。」


「ん。よかった。」


ほくに食べさせてもらい、半分くらい食べられた。


「みぃ、今日はもう寝よっか。」


「でも、映像…、」


「明日の朝にしよ?」


「でも…」


「どうした?」


「ほくが死んじゃう。」


「死なないよ。大丈夫。」


「本当…?」


「うん。絶対。」


「分かった。明日絶対起こしてね。」


「うん。分かった。」


映像は、明日の朝見ることにした。少し怖いけど、きっと大丈夫。


「みぃ、おやすみ。」


「おやすみ。」

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