『とんでもない金曜日』

やましん(テンパー)

『とんでもない金曜日』


 これは、どたばた、ほらばなしです。


 原点は、夢の中です。




 金曜日というものは、なにかと、どたばたが起こりやすい。



 役所や警察などの不祥事が発表されるのは、どうやら金曜日が多いみたいだし、やましんが熱を出して倒れるのも、だいたい、金曜日か、土曜日である。


 で、その金曜日、年下で上司の課長、通称『若』が、のんちゃんと、あす、結婚式をするという。


 のんちゃんは、しばらく、ぼくとも付き合っていた。


 しかも、会場は、会社のホールを貸し切りで実行するんだと。


 係長以上は、必ず参加せよと、社長命令が出た。


 冗談ではない。


 そんなもの、うっかり参加なんかしたら、ぼくは、即、自決である。


 帰り道で、同僚の係長、たぬくんに、ぼくは告げた。


 『あすは、休むからね。電話は、朝するから。』


 『そうりゃあ、くびだぜ。』


 『かまうもんか。よろしく。』


 

 自宅に帰ったら、親戚が集まっていた。


 『な、な、なんですか?』


 『なんですか? って、あんた、あした、自分の結婚式だんべ。』


 『あら、そうでしたかあ。いやあ、忙しくて、すっかり、忘れてたなあ。』


 そう言えば、情勢が差し迫ったため、急遽、お見合いをして、すぐ決めてしまったような。


 相手も、30才がせまり、周囲から、とにかく早くと迫られていたのだ。


 ほんと、すっかり、忘れていた。


 『あんた、明後日からは、新婚海外旅行だんべな。』


 くだんのおばちゃんが言う。


 『うあ。忘れていた。そういや、パスポートまだ、取ってない。』


 『早く、買っておいで。』


 母が急かす。


 『あれは、直ぐには出ないよ。こまたな。旅行は、延期だなあ。』


 『相手の方も、あすこに、来てるょんだんべ。』


 おばちゃんがいうとおり、なぜか、婚約者が向こうで、座布団に座り込んでいる。


 いやあ、まいった。


 のんちゃん、奪還作戦にさしさわる。


 なんで、こうなった。


 ぼくは、混迷状態である。


 すると、情報通で、新国民省職員の従姉が言った。


 『なんも、困ることないだべ。すべて、上手く行ってる。あんたの海外旅行は、北海道自治区だから、パスポート不要。』


 『あ、そうか、分割されたっけ。』


 『んだ。まあ、諦めて、政府に従いなさい。いまさら、往生際悪いと、逮捕だんべな。』


 『はあ〰️〰️〰️〰️。なんで、そうなった。』



 ぼくは、脱走した。


 こんな世の中いやだ。



 海岸には、脱走専門の、ボート屋さんがある。


 『はい〰️〰️。金曜日は、脱走容認日ね。脱走料金は、八丈島なら1万ドリム。四国は10万ドリム。』


 『八丈島でよいです。』


 『あい〰️〰️。帰るには、20万ドリム要りますが。』


 『いい。脱走したい。』


 『了解。じゃ、カード。はい、では、このボートね。』


 小さな、公園のボートみたいだ。はたして、ハワイまで、こいでゆけるかしら。


 無理だ、と、新政府は見ているらしい。

 

 まあ、天国なら、なんとかなるさ。



  

    ・・・・・・・・ 🚣

 



 

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『とんでもない金曜日』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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