ページ7 どうして?

中間テストに向けて勉強に励む中、三週間後に迫っている体育祭に向けて種目決めをすることになった3年R組。



「これから体育祭の種目選手決めを行う。」


学級委員長の充が司会進行を務める中、行われた。


「種目は100m走、クラス対抗リレー、借り物競走、綱引き、長縄跳び、騎馬戦、

二人三脚、三輪車リレー、借り人競走、部活動対抗リレーの10種目だ。」


「一人一種目以上に参加してもらうが、部活動対抗リレーは除外とします。」


謙介は転校して一ヶ月ということもあり、部活動は全員入部しないといけないという校則は特別に免除されたのである。よって、謙介には元々関係のない話なのだ。


「それでは順番に種目を読み上げるから出たい種目が呼ばれたら挙手をしてくれ。」


「最初は100m走。」


これはすぐに決まった。各種目人数制限があり、人数が多くなったらじゃんけんか話し合いか、どちらにせよ公平な形で抽選が行われる。


「よし、じゃあこの五人で決定だ。頑張ってくれたまえ。」


足に自身のある五人が決まった。

「次は綱引き。」


そもそもこの学園の全校生徒は1890人、約2000人が一斉に行う体育祭とは一体どれだけ大きな行事になるのだろうか。今からとても楽しみだ。


謙介は綱引きに手を上げた。人数が多い分あまり目立つことが無いからだ。謙介は昔から運動ができたわけじゃない。平均並みの足の速さ、平均並みの力の強さ、なにに秀でているわけでもなく、極々普通の平均点BOYなのである。


「よし、なんとか18人揃ったな。次は……。」


このあとも何事もなくスムーズに種目が埋まっていき、残っているのはクラス対抗リレーのみ。


「では最後にクラス対抗リレー。」


各学年18クラスが競い合うクラス対抗リレー。トーナメント形式で執り行われるリレーは3組ずつ行い、タイムの速かったクラス4組で決勝戦を行うという形だ。


R組揃っての俊足が名を連ねる。その中には道義の名前もあった。


「あとは補欠のメンバーを決めたいと思うんだが、誰かやってくれないか。」


すると道義が思いもよらない言葉を口にする。


「じゃあ、謙介とか良いんじゃなない?。」


「は?」


あいつはなにを言っているんだ。


「まぁ、所詮補欠なんだから誰でも良いっしょ。」


いやいや、そういう問題ではない。もしリレーメンバーに何かあったら僕が代わりに出ないといけないなんてあんまりだ。


「いや僕、そこまで足速いわけじゃないし。」


謙介は必死に抵抗した。


「しかし、三々樹氏はやればできる男だと思っているよ。」


「じゃあ、一人目の補欠は謙介で決まり!。」


道義の発言にクラス中が拍手で満場一致。


「えっ、いや、どうして?どうしてこうなるの?。」


周りに左右されやすい謙介はこれ以上の反抗を見せることはできなかった。


「補欠ですけど、頑張ってください。」


紗倉がニコニコしながら声をかけてくれた。


「あっ、ありがとう紗倉さん。」


ということで謙介はリレーの補欠メンバーに選ばれました。




―その日の夜 自宅―


 家に帰り、家族5人+ペット2匹全員揃ってリビングで食卓を囲む中、話題は学校での生活についてに変わった。


「そう言えば二人共、最近学校どう?。新しい友だちできた?。」


2つ下の妹の璃奈りなも謙介と同じ学校に通っている。


「うん、新しい友達たくさんいるよ。」


璃奈は僕と違って社交的なのですぐに他人とも仲良く慣れる。全く兄妹でこうも違うかね。


「謙介は?。クラスのみんなと仲良くやってるの?。」


「まぁ、ぼちぼちかな。」


元気よく「うん」と言える訳もなく、その質問に対する答えに困った。


「そうだ、もうすぐ体育祭よね。みんなで見に行くから。」


「父さんも体育祭の日に合わせてスケジュール開けておくからな。」


今の会話を聞いて分かるようにうちの親は超お人好しで超おしどり夫婦。その血を受け継いでいるからか、兄妹揃って壮大な心を持っている。


「そう言えば部活動対抗リレーがあるけど、璃奈はソフトボール部で出るのか?。」


「うん、出るよ。寄りにも寄ってアンカー。」


「すごいじゃない璃奈。頑張ってね。」


璃奈は謙介と違って運動神経が良い。謙介達は本当に兄妹なのかと思うくらいだ。


「謙介はなにに出るの?。」

げ!。今一番聞いてほしくなかった質問が来た。


「あぁ、綱引きと一応クラス対抗リレーの補欠。」


「えっ!お兄ちゃんがリレーに出るの?。」


「だから補欠だって。」


まぁ当然の反応だ、璃奈が正しい。


「もしかしたらリレーメンバーになるかもね。」


「もし謙介が走るってなったら父さん全力で応援するからな。」


いやそれはないと思う。補欠は二人だし、スタメン全員運動部のエースだから万が一、いや億が一ありえない。


「ごちそうさま。」


謙介はその場から逃げるように自分の部屋に戻った。

まさかこのあとあんなことになるなんてこのときは思いもしなかった。




―To Be Continues―

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