ページ5 いざ決選のとき
父親の転勤を機に城ヶ峰学園に転校してきた三々樹謙介は色々あって生徒会選挙に立候補する羽目になった。しかも相棒は学園一の美女、伊ヶ崎紗倉。彼女の力は凄まじく決戦前支持率は驚異の86%、彼女の恐るべき支配力に謙介は恐怖すら感じていた。そんな時、事件は起きた。
「ねぇ、今日私の自宅へ来ませんか?。」
唐突な紗倉のお持ち帰りのお誘いに謙介は終始動揺した。
「えっ、それってどういう。」
「もっと謙介君のこと知りたくて。私、謙介君の全てを知りたいんです。」
胸の鼓動が早くなって止まらない。人生で初めてそんなことを言われた。僕は超えてはいけない線を越えようとしているのか。
「ふふ、ドキッとした?。冗談に決まってるでしょ、冗談。」
何なんだこの人は人のペース掻き乱しまくってなにがしたいんだよ。
「謙介君の良い所また一つ見っけ、とってもいじりがいがある所。」
そう言って彼女は右目でウィンクをした。きっと彼女は僕をからかいたいだけなのだろう。そんなこと分かっていても可愛いというだけで全てが許されてしまう彼女が恐ろしい。
そんなこんながあって六日が経ち、謙介達の選挙活動も大詰めを迎えていた。僕も自分なりに考えて行動に移したつもりだ。えっ?紗倉さんはなにをしていたかって?。それは簡単に言うとズバリ何もしていない。もちろんビラやポスター作りの手伝いはしてくれたのだが、彼女の提案するアイデアは斬新かつ無謀過ぎるので全て僕が却下したのだ。例えば僕の良い所が沢山書いてある「謙介取説」なるものを作りたいとか言い出したり、学園区内を車で宣伝して回るなんて言い出してもうめちゃくちゃなんです。
この三週間いろんな困難を乗り越えてきた。明日はいよいよ生徒会選挙、ここまで来たら悔いの残らない戦いにしたいな。謙介の心の中には闘争心が滾っていた。最初は勝つつもりなんて無かったのにどうしてだろう。そんなの決まっている、彼女のせいだろう。彼女が僕の心に火をつけてくれたのだ。
―生徒会選挙 当日―
「それでは只今より生徒会選挙を開始します。」
司会の先生のその一言で謙介達の戦いの火蓋が切って落とされた。
「尚、生徒会長については候補者が二名いるため決選投票を行うこととします。」
「まず最初は応援演説です。各立候補者の応援演説者の皆さんは順番に応援演説をして頂きます。それでは西條道義さん、お願いします。」
いよいよ始まった選挙。道義のスピーチはとても素晴らしかった。なんだか充が二連覇した理由が分かった気がする。そして紗倉の番、彼女はどんなことを言うのだろか。
「私は三々樹謙介こそが生徒会長にふさわしいと考えます。彼はこれまでに五度の転校を繰り返し、時には海外へ転校したこともありました。つまり彼は色々な環境で様々な学校で学んできたという経験があるということです。彼が生徒会長になれば今までの経験を活かしてこの学園に必要なことは何なのかを考え、行動することができます。他校、多文化との違いを知る彼なら皆さんがより良い生活を送れるような政策を出してくれると思います。皆さんの清き一票よろしくお願い申し上げます。」
会場は拍手の嵐に包まれた。中々説得力のある演説だったと驚いている。彼女の心にもまた、闘争心ってやつが芽生えていたようだ。見事過ぎるスピーチに僕は感動すら覚えた。
その後、謙介のスピーチも無事に終了し選挙は投票に移った。
ぶっちゃけ充君のスピーチは圧巻だったし、王者の貫禄すら感じた程だ。僕のスピーチは彼の足元にも及ばないくらい普通だった
投票が終わった後は選挙管理委員会が集計作業をした後明日の朝に結果が開示される。
―翌日―
結果は僅差で充の勝利、今年も生徒会長の座を守った。これはクラスの選管委員に聞いた話なんだけど僅差と言ってもわずか一票の差だったらしい。逆に言えば決選前支持率の差をこの一週間で縮めた充がすごい。
「三々樹氏、とても良い戦いだったよ。こんな戦いは初めてだよ。」
「僕も楽しかったよ、ありがとう充君。」
負けたのになぜだろう、どこか清々しい気持ちだ。ちなみに負けた謙介は生徒会の会計という役職で所属することになった。
いろんな事があった一ヶ月、でもそこには謙介を囲む仲間たちがいた。でも一番は紗倉との出会いが謙介を少しずつ変えた。これからまだまだいろんなことが謙介達を待っている。さぁ明日の謙介はどんな風な一日を過ごして行くのだろうか。
―To Be Continues To 体育祭篇―
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