甘い仮面《マスク》1

 セキュリティシステムの監視下で、白昼堂々殺人事件が起こった。

現場に真っ先に駆けつけた特殊捜査班エージェントの中条静なかじょうしずかたちは、犯行現場を見て恐ろしくなった。



総合病院・・・

入ってきたのは怪しさ満点の仮面マスクをつけた三人組だった。

しかし、受付で何かを尋ねる犯人に怪しむ様子をいっさい見せずに何か案内をしている受付の女性。防犯カメラの何の問題も無し。セキュリティを悠々と通過し中へと入っていく。

樹は見逃さなかった。

セキュリティーをかわすと、犯人の一人がこめかみをトントンとスイッチを入れるように人差し指で叩いている仕草が、他の映像に映る犯人達に共通して見られた。


メモにある薬を渡せという男に対し、白衣を着た薬剤師は出来ないとかぶりを振る。実行犯はサイレンサーをつけた銃口を向けていた。

いつき声音解析できるか?」

「オーケー、」

相方の神谷樹かみやいつきは高速タイピングであっという間に音声の精度を上げ再生してみせた。


「もう一度、チャンスをやる」

少し加工がしてある声だが、男の声に間違えない。

「、、、、、、」


そして、躊躇なく銃声がなる。

薬剤師を殺して大量の薬をバッグに詰め、セキュリティーを再び悠々と出ていったのだ。


ドローンのセキュリティーシステムを確認した限りこれが第一の殺人。


もっと恐ろしいのは、その部屋は待合室とガラス張りで中は丸見えで犯行を目撃しているのにも関わらず、怯えている人は脅されていた薬剤師だけで、他の患者や石は誰一人何事も起きていないように過ごしていた。

いったいこれは・・・?

「どういうことか・・・」

首を傾げ、何度も映像を確認する樹。



「どういう状況だ、これは」

警察の相原が眉を顰め、部下を引き連れ遅れてやってきた。


真っ先に現場に駆けつけている静たちもまだ何も掴めていない。

「相原警部、病院を閉鎖してください。まだ被害者がいるかもしれない」

静は遅れてやってきた今回の事件の指揮官相原警部に指示を出すと

「クソガキ、偉そうにしやがって」

と相原は嫌味を吐いた。



事件だけ見れば明解過ぎるほど単純。薬の強奪殺人事件。

しかし、問題なのはセキュリティが発動しなかった事。

そうなると

「見えてない」

静が防犯カメラを見て思考していた。


「おそらく、何かトリックがある。気になったのが、、、」


樹が防犯カメラの映像を巻き戻し、捜査員に見せる。

「ほら、ここ」

よく見てと自分の周りに捜査員を集める。


「顔が、、、」

「変わった」


一同、汗を滲ませ驚愕した。



しかし、仮にそうだとしてこのからくりは?


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