第27話 サークルに誘われて
莉花も綾人もオープンキャンパスに参加した大学を第一志望として受験をし、無事に合格することが叶った。
どこかで初代たちは行き逢えているだろうか、と、頭の隅で考えていたが、自分たちが当事者ではなかったために、まさか同じ世界線で同じ大学に入学しているとは微塵も考えていなかった二人であった。
大学での受講や生活に慣れたかと思う頃、かねてから興味があったサークルへ莉花が参加しようとしていた。
「中村さん、本当にそのサークルに入る気?」
少し親しくなった新入生たちが、やめておいた方が良さそうだと各自の眼で訴えている。
「うん。そのつもりだけど。どうして?」
「どうして、って……気味悪くないの?」
気味悪いこと以上の経験を約一年積んでいるとはさすがに言えず、莉花は当たり障りない言葉を探した。
「もしかしたら知り合いがいるかもしれないから……探してるの。いなかったらすぐに辞めようと思ってるけど」
「あ、分かった!高校の先輩とか?」
「は?」
「あ~、そっかぁそっち系もあるねぇ」
「……そっち系?」
あ、もしかして、彼氏を見つけることが目的だと勘違いしているのかな?
莉花は、入ろうとしているサークルは、男性が多いと聞いて知っていた。
が、自分はそのつもりがないので、関心がなかった。
「でもねえ、そこは、どちらかというと……ヲタクらしい人の集まりじゃない?彼氏を見つけるつもりなら、もっとまとも、あ、失礼、もっと他のサークルにした方がいいんじゃない?」
やはり。彼女たちは、彼氏目的だと思っているようだ。
「あのね、違うの。彼氏はまだ欲しいと思ってないから……」
「うん、うん、これからいくらでもいい条件のねる○ん、は古いか?合コンがあるから、そこでは止めておいた方が無難だからね」
「有難う。肝に銘じておくね」
「ってコトは……入会するの?」
「うん。そのつもり。バイトを掛け持ちで参加してる人がいるくらいだから、ハードでもなさそうだし。丁度良さそう」
「ん~、何が丁度いいのか分からないけど……変なとこだったら、さっさと退会した方がいいよ?」
「うん。有難う。そうする」
遠巻きに気の毒そうに眺めている彼女らの誤解や偏見は、訂正されそうにない。莉花の心には、新入生歓迎会兼サークル説明会のアトラクションを見た時から、引っかかるものがあったのだ。
「君、ニューフェイスのそこの君!さっきこっちの旗、読んでたよね?」
「先輩、ニューフェイスって……新人とか新入生とか言ってくださいよ」
アトラクションが終わり、アーチ状のゲートを抜けると通路ぎりぎりの両端に、先ほど紹介されたサークルや同好会が通路を塞がないように並び、我先に入会員を得ようと待ち構えていた。突然男女の声が聞こえた。
莉花は、アトラクションよりも、とあるサークルののぼりに目が行っていて、主催者側の説明はあまり耳には入っていなかった。
自分が話しかけられたとは思わずに通り過ぎようとすると、もう一度声をかけられた。
「真実を探しているんだよね?不思議な出来事が起こる、その真実を!我々と共に追求しよう!結構真面目にやってます!日本だけじゃないよ!地球規模だよ!今、世界各地で不可思議な現象が起きているんだ!」
《世界の不思議に立ち向かい、真実を追求しよう!》
のぼりに書いてあった言葉とピタリとあった。そこで自分に向けられた言葉だとやっと気付いた。
「……あ……私、ですか……?」
振り向いた先には、親戚のおじさんのような男性と、美人アナウンサーを少々若作りにした女性が立っていた。
「そうです!貴女です!ね、さっき、この旗をよーっく、見てたと思うんだけど……興味ある?」
莉花は二人の方へ近付いた。
「先輩、後、宜しくです!私はこの子とちょっとお話が」
「え、俺一人でやれと?ヘルプ入れてくれよ!ハタ持ちと声かけと説明はいくら何でも一人じゃあ……」
「分かりました!呼んできます!まだ残党がいるから!ね、貴女、ここで5分待っててくれる?すぐに戻るから」
若そうな美人アナ(に見える)は、そう言って、旗を莉花に持たせると、いきなりミニスカート姿で走り出した。
「え、えっ?」
莉花が旗を持たされたまま、立ち尽くすと、おじさん(に見える)は、申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんねぇ……あのお姉さん、いつもあんな風に突っ走っちゃう人なんよ。ま、すぐ捕まえて来ると思うから、立ちっぱで悪いけど、それ、持っててくれると助かるなあ」
「は、はあ……?」
莉花に旗を持たせて、おじさんは、再び新入生に声をかけ始めた。
……世界の不思議に立ち向かい?真実を追求する……?
旗に書いてある文面が、莉花の心に刺さる。
去年の五月下旬から、不思議なことだらけだった。
どうしてあんなことが起こったの?
あの現象の……その背景が少しでも見ることが叶うならば……その先を知りたい。世界的規模で起きている、ということは本当なのだろうか……?
旗を見つめながら、莉花は、このサークルに入ってみたら何かが解るかもしれない、と思い始めていた。
この『超常現象研究会』に。
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