第15話 夏休み5

タクトからの問いにレンは答えをだした。


「今の流れから考えると…、人には感情があるってこと?それとも幸せになる権利があるとか?」


「レン、今回の回答には違うけど何か深いな」


「タクト君の話を聞いてから最近は良く考えることにしてるんだ」


「そっか~。感情自体は無感情な人がいたりするから平等って観点とは違う気はするけど、幸せになる権利か~、その議題は難しいよね。そもそも幸せって思う基準が皆違うだろうからね」


「確かに。なら、タクト君の言う平等ってなに?」


「それはね…、時間だよ」


「あ~~~、なるほど~。明けない夜はないって言葉を何かで読んだことがある」


「まあ、俺も好きな作者さんの小説で読んだから自慢できる内容ではないけど、ついつい納得してしまうんだよね」


「えっ、気になる。何て書いてあったの?」


タクトは思い出すように言葉を紡ぎ出した。


「悲しい時に誰かが笑っている。人が寝てる時に誰かは勉強している。どんなに辛く苦しい時も時間が経てば色あせる。人のことを羨ましがる前に君は人よりも努力したかい?常に自分の欲と葛藤し頑張った先にだけ言葉の重みが増すだろう。これを聞いて君自身は何の為に時間を使うかい?」


「……。」


「俺もその言葉を読んで、そして問われて俺も無言だったな~」


タクミもレンも露天風呂に浸かり無言で空を見つめている。


「のぼせるからレン上がろうか?」


「そうだね。ただ一つだけ今の僕に言えることは何事も経験だから、明日からのアルバイトを一生懸命頑張るよ」


「そうだな」


こうして二人は部屋に戻って休んだ。


そして翌日、二人は汗を拭いながら仕事に励んでいた。


ユキの叔父さんに手順や焼き方を教えてもらいながら、ひたすら焼いていく。


その頃ユキとミナミは注文を受けながら会計をしている。そして、その場で料理を渡しお客はテーブルに料理を運び食事をする。


その繰り返しの光景なのに、何故か会計前は凄い行列だ。


むき出しの柱で支えた屋根があるだけの広い屋台では終始賑わっていた。それもその筈、一度買いに来たお客はユキとミナミを見に次も買いにくるのだ。


さらにはナンパをしてくる男子の群れが行列を作り、行列がさらにお客を呼ぶ。


厨房3人では手が足りず、ユイも手伝いに入ってくる。


そんなユイから言葉が漏れる。


「なんなのよ、もぉ~~。こんなに忙しいなんていつぶりよ」


「文句を言うなユイ。タクト君とレン君を見習え」


「なんで私が…、やればいいんでしょ」


タクトとレンは返事をする余裕もなく一生懸命に料理を焼いていく。


その頃会計の場所ではお決まりの光景が広がっていた。


「ねぇ、君達何歳?」


聞かれる度に答えるユキ。

「16歳です。ご注文は何にしますか?」


イケメンのお客さんが注文をして、再度話かける。

「仕事終わったら遊びに行かない?」


「え~、お兄さん達イケメンだから迷っちゃう。でも、私達素敵な彼氏がいるので…。」


「え、いいじゃん。夏の海にはワンナイトの素敵な恋ってあるじゃん。彼氏いても気にしないから、行こう」


「ごめんなさい。彼氏一筋なので。あ、こちらご注文の商品になります。有り難うございました」


こんな光景が幾度となく繰り広げられ、気付けば14時となっていた。


やっと行列が終わり、すこしずつまばらにお客さんが来る程度になってきた。


それを見計らってユキの叔父さんが今の間に休憩を回していく。


「疲れたでしょ、みっちゃん先に休憩行っていいよ」


「でも、ユキも疲れてるでしょ?」


「私は去年もお手伝いに来て慣れてるから大丈夫。タクト君誘って休憩行ってきなよ」


「えっ、あっ、うん」


何処か嬉しそうなミナミは厨房に顔をだすと真剣に料理を作っているタクトに視線が釘付けになる。


それに気づいたユイがタクトを休憩に出す。

「タクト~、先に休憩に行ってきて。レンはもう少し待ってね」


「「分かりました」」

二人同時に返事し、タクトは先に休憩に入ることになった。



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儚い恋、失恋を乗り越えた先に…。 アスラン @kawa1213

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