第13話 夏休み3
電車を降りると潮の香りが漂ってくる。
「う~ん、海に来たって感じ」
ユキは背伸びをしながら懐かしさに浸っている。
「あ、ほんとだ」
レンも潮の香りを嗅ぎながら楽しんでいる。
改札口を通り駅を出ると一台の車からいかつい男がこちらに向かって歩いてきている。
肌は焼け白のタンクトップを来たおじさんはこちらに来て話し出した。
「ユキ、今年も良く来てくれたね。ところで、どちらがユキの彼氏かい?」
その言葉を言い終わった後にはスパーンとここち良い音が鳴っていた。
「お友達を連れて行くねって言ってたでしょ。そう、お友達、いいね」
「まったく冗談なのに。
お~、それにしても綺麗な子を連れてきたもんだ」
おじさんは親指を立ててユキに合図した。
「今年の売り上げは期待してね」
二人の会話に終始圧倒されながらも海の家にたどり着いた。
タクトは海の家を見て瞬きをずっとしている。
「タクト君、そんなに驚いてどうしたの?」
「海の家って言うか旅館だな~と思って。……?えっ?ところで何で名前呼び?」
「え?なんでって、これからみんなで一緒にアルバイトするから名前の方が呼びやすいかなーって思って。ダメ?」
「えっ、い、いや、いいけど…。」
「なら決まりね。みっちゃんはみっちゃんだから、タクト君にレン君。さあ、みっちゃんも言ってみて」
「えっ、私?」
「もちろんみんなで呼ばないと。ほら、みっちゃんも」
「そんな急に言われても…。」
「じゃあ、一人だけ苗字で呼ぶ?」
「そ、それは嫌」
深呼吸してから覚悟を決めた。
レン君に、タ、タクト君、アルバイト宜しくね」
ミナミは顔を真っ赤にしながら名前を読んだ。
「宜しくね、ミナミさん」
「僕も宜しくお願いします、ミナミさん」
ミナミは心の中で叫んだ。
「何で二人は平然として呼べるのよ、もぅ~。」
そんなミナミの気も知らずタクトは疑問を口にした。
「ところで海の家で働くんじゃなかったの?」
タクトは旅館を見ながら訪ねた。
「あ~。旅館も経営してるから、ここは泊まる場所だから安心して。まあ泊まる場所は客室として使えない部屋だからあまり期待しないでね」
部屋に案内されて中に入ると普通の客室と思える程の部屋でレンとタクトはびっくりしている。
ちなみにユキとミナミの部屋は廊下を挟んだ向かい側だ。
タクト達は部屋で持ち物を整理していると、ユキ達がやってきた。
「今から叔父さんが今後のことを教えてくれるって」
そうユキが話すと叔父さんはいろんな説明をしてくれた。
大まかにまとめると、仕事は明日からで海の家ではタクトとレンは簡単な焼きそばやフランクフルトなどを作ってもらうとのこと。器用であればすこし手の込んだ物も作って欲しい。時間は10:30から夕方まででいいこと。ただ、旅館に団体客が来た時だけは旅館の片付けを手伝ってほしいと伝えられた。
タクト達が了承すると一人の女性を紹介された。
「こいつは俺の娘で優衣って言う。私と君達4人と優衣で海の家で働くから宜しくね。優衣も挨拶しなさい」
「私のことは優衣と呼んで。貴方達と同じ高校1年生よ。ユキが男性を連れてくるって聞いたから楽しみにしてたのに、思ったよりもレベルが低くてガッカリだわ」
「ちょ、ちょっと、ユイちゃん、そんな言い方しないでよね」
「私嘘はつけないの、ユキも知ってるでしょ」
「知ってるけど…ム~~~。」
「まったくお前は~。優衣に悪気はないんだ、君達ごめんな」
「い、いいですよ。俺に関しては間違ったことは言ってないと思いますので」
タクトがそんなことを言ってるとミナミが入ってきた。
「外見でしか判断しない人のことなんて気にしなくていいわ。私達で頑張りましょう」
「もう、みっちゃんまで」
幸先から険悪なムードになりユキもタクミも苦笑いをするだけだった。
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