第12話 夏休み2

夏休みに入り、タクトは早めに宿題を終わらせるべく悪戦苦闘している。


それもその筈、泊まり込みのバイトの期間が長いことやその後にバイト代を使って自分を変えるために時間を使う予定を立てているため、現在必死で宿題をやるしかないのだ。


普段のタクトならギリギリまでやらずに切羽詰まった状況になってから宿題を行うのだが、これも彼女に誇れる自分になるために頑張っているのである。


「今頃みんなはどうしてるかな~」


タクトが独り言を呟いているとピコンと携帯が鳴った。


携帯を見てみると亀岡さんからlineが入っていた。


グループラインではなく個別にメッセージが届いていることに驚くが、内容を見るとさらに驚愕してしまう。


何故なら、そこには文字は一切なく二枚の写真だけが添付されていた。


そしてタクトが写真を見ている最中に文字が入ってきた。


「どっちの水着がいいと思う?」


そう、写真の内容は深川さんの水着写真だったのだ。

しかも白と赤の水着姿の2枚。


タクトはため息を吐きながらも返信をする。


「モデルがいいからどっちも似合ってると思うけど。」


「え~。タクト君の好みはどっち?」


聞かれたからにはタクトは正直に答える。


「白」


「ニヒヒ、タクト君は清純な色が好みと…、みっちゃんに教えてくる」


こうなることはわかっていたが、どうすることも出来ない。しょうがなく勉強を再開するも先程の水着姿が脳裏に浮かび集中できない。


「あ~、もう、寝よう」


タクトは一向に集中出来ないことからふて寝をすることにした。


しかし、寝ようとしても寝れない。


「なんて破壊力だ…。でも綺麗だったな」


そんな言葉を呟いた瞬間、ハッと気づいた。

今までの自分にない感情に気付いたからだ………。


タクトは自分が前に進んでることを自覚して嬉しく思う。


たとえその内容が水着姿の美女の写真を想っての感想であっても…。


「あ~、俺も健全な男子高生だったんだな。あんなスタイルの良さの写真を見せられて何も感じない男はいないだろう。何処のグラビアアイドルかと思ったよ」


そうしてタクトは携帯の写真をしれっと保存するのであった。


その翌日からも宿題やたまにくる亀岡さんからのラインを相手にしながらも好きなラノベを読んで過ごしていると気づけばバイト前日となっていた。


みんなで最寄り駅に待ち合わせをしているのだが、タクトが着くころには皆が集まっていた。


タクトは周りの様子を伺うと、もちろん周りの男どもはチラチラと視線を送っている。一応レンがいることからナンパはされていないもののかなり目立っている。


タクトはしょうがなく待ち合わせの場所に行き挨拶をする。


「皆お早う。すぐに行こうか。」


タクトの言葉に疑問に思ったのかユキが尋ねてきた。

「おはよう。そんなにすぐに向かうなんて何かあるの?」


「君達が目立ち過ぎているから、ここから早く移動したいんだよ」


「そんなの気にしなくていいのに。周りの目を気にしてたら疲れるわよ」


「深川さんの言ってることは正しいんだけど、俺見たいな冴えない男と一緒にいるとアホな男が絡んでくるかもしれないんだよ」


「あ、何となく分かる。僕もトラブルは避けたいかも」


「そうね。絡まれるのは面倒だものね」


「でも、その時はもちろんタクト君達が守ってくれるんでしょ?」


冗談半分で笑いながらユキが尋ねてくる。


「任せておけ。自慢じゃないが一度も喧嘩したことがないから瞬殺でやられると思うがな」


「堂々とそんなけ言えるなら大丈夫ね」


ユキとタクトは笑いあいながら会話しているが、ミナミだけは違った。


胸に手をあてタクトを見つめながらキュンとしていたのだ。


何処にキュンとする要素があるのか聞きたいぐらいだが、ミナミの場合は人の嫌な面を沢山見てきたからこそ、タクトの誠実さが好ましいのだろう。

そう、ミナミに言い寄ってくる男どもは「俺が守ってやる」「何かあったら俺に相談しろ」など偉そうなことを言ってくるのに、いざトラブルに出くわすと見て見ぬふりをする連中を嫌と言うほど見てきたからである。


さらにはレンも加わってくる。

「僕も喧嘩はしたことないから、出来るなら絡まれない方向でお願いします」


冴えない男の冴えない言葉なのに好感度が上がる二人であった。


すぐに場所を移動したこともあり何事もなく海の家に向かう。


6時間かけて乗り継ぎをしながら向かっていると次第に風景が田舎の景色になってきた。


タクトとレンは海の家に近づくにつれて少しずつ緊張していく。


そしてついに海の家に到着した。

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