第11話 夏休み
タクトはいつものように学校に向かっているが、その足取りはやけに軽い。
それもそのはず、明日からは学生が待ちにまった夏休みなのだ。
教室につくとタクトは携帯でアルバイト情報を確認する。
タクトが携帯を見ていると、ユキが横から覗きこんできた。
「ねぇ、今度は何を読んでいるの?」
「うん?今はアルバイト情報を見てるよ」
「えっ、加賀君がアルバイト?」
「いろいろとお金が欲しくてね」
「そ、そうなんだ」
ユキは徐に考え込んだあとニヤリと笑いだした。
「まだアルバイトは何にするか決まってないんだよね?」
「蓮と一緒にアルバイトをできるところを探してるから、どうしようか迷っていてね」
「蓮って、たしかこの前助けたって言ってた男の子のことだよね?」
「そうだよ」
「良かったら、私がアルバイトを紹介してあげようか?」
「えっ、そんなこと出来るの?」
「知り合いの叔父さんが海の家をやってるのよ。それで誰か友達と一緒にアルバイトしないかって言われてるのよ。ミッちゃんは誘ってもやらないだろうから断ろうと思ってたんだけど、二人一緒にどうかな?返事は急かされてるから早くしないといけないけど」
タクトはすぐに蓮にラインを送った。
数秒後、ピコンと音がなりOKの返事が返ってきた。
「蓮も大丈夫だって、宜しくお願いします」
そんな話をしているとミナミがやってきて話に加わってきた。
「なんか楽しそうに話してたけど、何の話をしていたの?」
「あ~、亀岡さんに誘われて夏休みにアルバイトを一緒にすることになったんだ」
ミナミは驚愕し、タクトの肩を掴み揺さぶりながら、
「えっ、ズルイ。なんで?」
「な、なんでと言われても誘われたから?」
「ユキはなんで私を誘ってくれないのよ~?」
「以前みっちゃんに海に行こうって誘ったら、海は嫌だって言ってたから…」
「海は嫌いだけど、アルバイトなら頑張るわ…私も行ってもいいわよね?」
「私は助かるけど、加賀君も大丈夫だよね?」
「ああ。紹介してもらう立場だからな」
「じゃあ、みっちゃんも参加で4人でアルバイトだね、ニヒヒ」
「ちなみにいつからなんだ?」
「8月1日~12日までだよ。お盆も大丈夫なら20日まで頼みたいって言ってたかな。あと、泊まる所も用意してくれてるから安心だよ。」
「俺は稼ぎたいから20日まで大丈夫だよ」
「OK。あ、せっかくだから連絡用にグループラインを作ろうよ」
「ユキ、ナイスアイデア。はい、加賀君も携帯だして」
タクトは言われるがまま携帯をだして、グループラインの登録をしていると、相良がミナミの元へとやってきた。
「深川さん、良かったらみんなで夏休みに遊ばない?」
「ゴメンなさい。夏休みは宿題とアルバイトで忙しいのよ」
「深川さんがアルバイト?遊ぶお金なら俺らがだすから心配しなくていいから、一日くらい遊びに行こうよ」
「泊まり込みでアルバイトするのよ、ゴメンなさい」
「そ、そうなんだ、残念だな。もし予定が変わったら教えてほしい。これ俺の番号だから」
相良が番号を書いた紙を渡すが、ミナミは受け取らない。それを見兼ねたユキが受け取った。
「予定が変わった時はみっちゃんから連絡させるね」
「そ、それは助かる。宜しくな」
相良は顔を引きつりながら去っていった。
「いいのか?あんなに無碍な態度をとって?」
「いいもなにも遊ぶつもりがないもの。変に番号知られて連絡がきても面倒じゃない?」
「まあ、確かに。深川さんがいいならいいけど」
「それよりも夏休みが楽しみね」
本当に楽しみにしているようで、ミナミの微笑みを見たタクトは見惚れるように顔を赤くしながら下を向いた。
おいおい、女性に免疫のない俺にそんな笑顔で微笑まいでくれ…心臓がバクバクいってヤバすぎる。
こうしてタクト達の夏休みが始まるのであった。
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