第7話銀髪、褐色肌の少女 ※残虐描写あり

 スキルの検証の為に村の近くにあるダンジョンへタルタルとアランは進んでいた。

 その道中。


「そうだタルタル君今日は検証の為に試して欲しい事があるんだ」

「試して欲しい事ですか?」


「あぁギルマスの精密鑑定で分かった要素の中の一つにあっただろ?

【スキル主による意思により若干の中身補正】って項目が、今日はそれについて検証したい。レオ君から聞いたが宝箱の中身はお金以外出た事が無いんだろ? 今日は違うものをイメージしてもらえないか?」


「えぇ分かりました」


「さてそろそろダンジョンだが…何か様子がおかしいな」

「え? なにかあるんですか?」


 タルタルは異変に気付かなかったがしかしダンジョンに近づくにつれアランの言ってたことを理解した。

 凄まじい轟音が聞こえてくるのだ。


 ドゴォオオン!ドガァアアアアア!バキバキバキ!

 木の倒れる音も聞こえる


 近づくにつれ音が更に大きくなり、更に進んでいくと音の出ていると思われる場所へ着いた。

 


 ――そこでは


 銀髪、褐色肌の小さな女の子がゴブリンに囲まれていた。

 囲まれていたのだが…

 その場の光景は凄惨その物だった。

 まず目に入ったのは、薙ぎ倒された木々の数々、辺りはむせ返るほどの血の匂いと肉片になったゴブリンと思しき遺体の数々。

 何より異様なのは囲まれている少女が手にした得物。

 それは得物というよりは、その辺の大木そのものだった。

 そして少女の動きも異様、その大木を軽々振り回しゴブリン達を薙ぎ倒していた。


「おいおいこりゃすげえな…」

「…そうですね」


 その光景にタルタルとアランは驚く

 タルタルとアランが驚いている間にも少女はゴブリンをどんどん叩き潰していく

 そしてゴブリンを倒し終わったのと同時くらいに少女に異変が起きる。

 少女が突然ドサリと倒れ込んだからだ


「え?」

「タルタル君あの少女は怪我をしてるのかもしれない! 急ごう…」


 2人は急いで少女の元へと走る、倒れた少女は呼吸をしているからどうやら生きてはいるようだ。

 怪我をしてるかは、返り血なのか怪我の血なのか分からない程に血塗れだったので判別はつかない。

 兎も角2人は少女に声を掛ける


「大丈夫か? 怪我はないか?」

「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」


 そんな2人の呼びかけに少女は


「…った」


 小さな声が返ってきた


「大丈夫か? 薬は必要か?」

 そういうとアランは回復薬を少女に飲ませた。


「お…った…」


 次の瞬間、何か呟いた少女のお腹から凄まじい音が聞こえた

 ぐきゅるるるるる~ぐるるる

 この音で2人はこの少女が何を欲していたか察した。

 ((お腹すいてるんだな))…と


「タルタル君何か食べ物持ってるか? 俺は持ってないんだよ」

「えっと朝買った林檎が3個ありますからこの子にあげましょうか?」


 タルタルが道具袋を開けて林檎を取り出すや否や、倒れてた女の子はガバッと起き上がりタルタルから林檎をひったくり猛烈な勢いで食べていく

 シャクシャクシャクシャク!

 ものの数秒で林檎は無くなった。


「……足りない」


 女の子が不満げに言うので、更に林檎を渡そうと取り出したがそれも先程と同じように林檎を取られ一瞬で林檎が無くなる


「…もっと」

「持ってる林檎あと1個しかないんだ」


「…頂戴!」


 タルタルが最後の林檎を差し出すと先程と変わらぬ勢いで女の子は林檎を食べてしまった。


「足りない…もっと食べたい」


 と女の子が催促をしてる最中、アランさんが急にダンジョンの方に顔を向けていた…アランさんの目線の先、そこにはゴブリンがいた。

 逃げ遅れたのか、隠れてたのか、騒ぎを聞きつけこっちへ来たのかそのゴブリンはこちらに近づいてきた。


「…ある意味丁度いいな」


 アランさんは呟いた

 どういう意味だろう?


「タルタル君ちょっと一人でゴブリンを倒してくれないか? その時食べ物が欲しいって考えてだ、スキルの検証も出来るし、運が良ければこの女の子に食べ物を渡せるしな、なに君が危ないようだったらこっちも守るために動くだけはするから頑張って!」


「わ、わかりました」


 そしてゴブリンと戦い始めたのだが、とても時間が掛かる恐らくもう10分くらいは戦ってるだろう、一進一退の攻防は続きようやく決着がついた。

 そしてゴブリンの首を刎ねると同時に宝箱が出てきた。

 宝箱は出てきたものの以前にミミックが出てきてるので怖くて触れない。

 そんな様子を察したのかアランさんが


「ミミックじゃないから大丈夫だ開けてくれ」


 大丈夫という言葉を聞いて少し安心できたので宝箱に手をかけ開けてみた。


 中からは、見たこともない沢山の果物と思しき物がぎっしりと宝箱に入っていた。

 その果物?はどれも瑞々しく捥ぎたてと見紛う程だった。


「アランさん…これ」

「あぁどうやらスキル主の欲しい物が反映されてるな」


 そうアランさんと話していると突如、風のような勢いで影が横を通り抜けた。

 その影は瞬く間に宝箱に近づき、中の物を嵐のような勢いで食べ散らかし始めた。

 …先程の少女だ。


「おぃひぃ…おいひぃよぉ…」


 少女は涙を流して果物を食べ進める!

 その様子に食べるのを止めさせる事は2人には出来なかった・・・


「あははは全部食べられちゃいそうですね…」

「…そうだな」


 アランさんと俺は苦笑いしか出来なかった。

 暫くして果物を全部食べ終わると女の子は疲れたのかそのまま眠ってしまった。


「寝ちゃいましたね…」

「あぁ寝てるな…」

「どうします?」

「どうするもこうするも、このままここで放置は出来んだろ」

「とりあえず起こしますか…」


 結局いくら起こしても女の子は微塵も起きる気配がなかったので、2人で村の宿屋へと連れて行った。

 連れて行ったのだが、女の子は血だらけであった事もあり、宿屋の主人は当然難色を示すが、血がついてダメになった物の交換費用を冒険者ギルドに請求する事とアランさん個人で宿代以外に少しお金を出す事で何とか交渉は成立した。

 その後、女の子を借りた部屋のベッドへ運び、女の子の事は宿のおかみさんに任せることになった。

 そして一通りの手続きを終わらせた辺りでアランさんがこう切り出してきた。


「タルタル君この後に俺は用事あるから、今日は検証終了したいけど構わないか?」


 検証終了の話には、自身の疲れもあったので了承した。

 そういう訳で今日の検証はこれで終了という事になった。

 その後、宿で取った自分の部屋に戻り何気なく外を見ると日が少し傾き始めている、その光景をみてしみじみと呟く


「…今日は疲れたな」

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