第4話 追放者側の思いと考察

 村のはずれの木賃宿


 安いので冒険者のみならず、行商人とかも良く来る場所である。

 ここには冒険者であるレオ、ユラ、ユリシア、サンダー、タルタル達もよく泊まりに来ている場所だ。

 といっても、ユラはケガをした為診療所に、サンダーは何処かへ外出し、タルタルは追放された為に居づらくなって出て行ってしまったので今現在、宿屋にいるのはレオとユリシアだけという事になる。


 そして宿に残っているユリシアとレオの間には重い空気が流れていた。

 理由は言うまでもなくタルタルをパーティから外した事であるのは間違いなかった…



「ね、ねぇ…一緒に追放した私が言うのもなんだけど良かったの?」

「……」


 無言のまま何も話さないレオ・・・


「ねえってば!」


 少しの沈黙の後レオがポツリと呟く


「なあユリシア…もしかしたら俺達に天罰が下ったのかもな」


 突然のレオの言葉にユリシアは戸惑う


「…え? どういう事? あれはタルタルのスキルの所為でしょ?」


 ユリシアの戸惑いをそのままにレオがまた呟く


「なぁユリシア…洞窟でサンダーが言ってた事を覚えてるか? 俺達…いや俺とユラとユリシアが贅沢で堕落をって話だ…」


「…う、うん」


「ユリシア…俺達があいつの宝箱ドロップに頼りきりになってから、あいつのスキルで出た宝箱の中身だが…まあ中身って言ってもお金しか入ってなかったが、どんどん少なくなっていってなかったか?」


「そういえば…そうだね」


「それに最初の頃は宝箱に鍵は掛かっていない…段々中身が少なるにつれて鍵が掛かったりする事が多くなってたよな?」


「つまりどういう事?」


 レオは空を少し見つめた後ユリシアに向き合うと答えた・・・


「あれは俺達の欲望が作用してた結果なんじゃないか? つまり鍵とかは警告みたいなものだったんじゃないか? と俺は考えてる…今にして考えればおかしな事だらけで中身は何故いつもお金だけだったんだ?」


「…」


「俺達はあいつに…あいつのスキルにいつも金の入った宝箱を望んでいたからじゃないか?」


「そう言えば私もいつも、お金が欲しいって思ってた…ユラも同じ事言ってたことあるし…そうかもしれない」


「で…話は戻るが俺達の欲望が作用したから、あのミミックが生成されたと俺は考えてるんだ…要するに欲望に応えきれなくなったスキルの代償みたいな感じにな」


「だから天罰が下ったかもって言ったのね…」

「…あぁ」


「ねえ! だったらなんで追い出す時にちゃんと言わなかったの!? その仮説が合ってたら悪いのはタルタルだけじゃなく私達も悪いんだよ?」


「すまないユリシア…俺もタルタルを追い出して色々冷静になって考えてからこの考えに至ったんだ…とは言ってもこれは仮説であって事実かはわからないが」


 苦しそうに吐露するレオにユリシアは何も言えなくなった。

 そんなレオに対していたたまれなくなったユリシアが口にする


「タルタルだけが悪くないんだったらタルタルに帰ってきてもらおうよ…そし」

 ――言い終わる前にレオが怒鳴る

「ダメだっ!」


 そのあまりの衝撃にユリシアは体を大きくビクッとさせた…


「なあユリシア俺は、ユリシア、ユラ、サンダー、タルタル誰にも傷ついて欲しくないんだ…あいつが戻ってきたとして、またあいつのスキルに頼るようになって同じようにミミックが出て来たら? 今回は運が良く同業者が介入してくれて助かったけど次に同じ事が起これば助かる保証はないんだぞ? それにタルタルは心根が優しい奴だ…誰かが傷つく可能性があってまで一緒にいさせられるか?」


「そう…だね」


「ユリシア俺は思うんだ…タルタルを追放してしまったこの判断で良かったんだ…と間違いは起こってからでは取り返しがつかないんだ」


 そう言い聞かせるように呟くレオの目には光るものがあった…

 それはユリシアも同様に…

 そして暫くの間…重い沈黙が続いた。

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