第3話 物語は大抵主人公の知らないところで動き出す
タルタルの追放劇があったその同時刻くらいの事
村の冒険者ギルドでの出来事…
一人の男がギルドマスターへ会いに冒険者ギルドへと訪れていた。
その男は赤髪で長身の筋肉質の男で如何にも猛者という風体。
「お~いノーラちゃんギルマスは今いるかい?」
その男は、のんびりした感じで受付嬢に話しかける。
「あれっ? アランさんじゃないですかお久しぶりですね、ギルドマスターなら2階のマスタールームで仕事してますよ。御用があるようでしたら、お呼びしましょうか?」
「あ~呼ばなくていいよ。直接ギルマスに顔出すから、それにここで話せる内容でもないしな」
アランと呼ばれた男は、そういうと2階のマスタールームへと歩き出した。
普通であれば、誰かしら止めに入るのだが、誰も止めることはなかった。
その様子からしても、アランという人間の立場がギルドにとってどれだけ影響力があるか窺い知れた。
…ややあって
マスタールームへ着いたアランは、ドアを無遠慮に開け放つ
そして如何にも人好きがしそうな笑顔で挨拶をする
「ギルマスの爺さん久しぶりだな~元気にしてたかい?」
挨拶された部屋の主は、白く伸びた長い髭を弄りながらアランを一瞥すると大きな溜息をつく
「なんじゃ…アランか相変わらず不作法者だな、普段わしにあまり顔を見せんお主がここに来たって事は何か用があるんじゃろ?」
「おー相変わらず話が早くて助かるぜ! 爺さん俺が今王国からスタンピードの兆候がないか国中のダンジョンを回ってる事は知ってるだろ?」
「あぁ知っとるよ…ここに来たって事は、近くのダンジョンにスタンピードの兆候でもあったのか?」
「あぁいや…スタンピードの兆候はなかった」
「うん? そうじゃないなら何で来たんじゃ?」
「あぁ…それなんだがな、ギルマス、ギルマスは確か鑑定のスキルを持ってたよな?見て欲しい物があるんだが」
そういうとアランは懐から一つの魔石を取り出しギルマスへ手渡した。
ギルマスはそれを興味深く見つめると鑑定のスキルを使い鑑定を始めた…
「なっ! なんじゃこれは! おぬしこれを何処で!?」
ギルドマスターが驚くのも無理はない。
手渡された魔石は【デスミミック】の魔石だからだ…
等級でいうならA級冒険者がやっと倒せるというモンスター
「ま、まさか村の近くにあるダンジョンにデスミミックが居たのか?」
「あぁ…そうだ、多分この村の冒険者パーティだと思うんだが、デスミミックに襲われててな」
「ふむ…俄かには信じられん話じゃな、この辺はデスミミックどころかミミックすら報告に出た事も無いしのぉ」
「で…話は戻るがスタンピードの兆候も無いのにデスミミックが現れた謎についてギルマスはどう思う?」
「皆目見当がつかんの、スタンピードの兆候があったのならそれが理由じゃとは思うが、そうでなかったのならば、それこそ襲われてた冒険者に直接聞く方が早いじゃろうし」
その言葉にアランは頷く
「それもそうだな、それなら襲われてた冒険者パーティに直接聞いてみるか」
「アランよ何かわかったらわしに報告するんじゃよ」
「あぁ分かった、それじゃあ用事も済んだし俺は行くよ」
部屋を後にしたアランは、そのまま受付へと向かい件の冒険者について受付嬢に尋ねる事にした。
「お~いノーラちゃん少し時間貰えるかい?」
「先輩少し時間戴いてもよろしいでしょうか?」
「えぇ構いませんよ」
こっそりと囁く先輩嬢
「上手くやんなさいよ? あなたアランさんの事好きなんでしょ?」
こそっと発破をかける先輩受付嬢の言葉にノーラは顔を赤くしてあたふたする
そんな様子のノーラにアランは声を掛ける
「少し聞きたい事があるんだが…って、お前顔真っ赤だぞ大丈夫か?」
「ひゃ、ひゃい大丈夫でふ! デートのお誘いですか!?」
明らかにてんぱってる様子のノーラに
「い、いや、違う…この村の冒険者について聞きたくてダナ」
しどろもどろになり最後の方はドモるアランと、デートのお誘いではなくどんよりとした表情になるノーラの様子を見ていた先輩が苦々しい笑みを浮かべ介入してきた…
(全くこの二人は…)
「アランさん冒険者に御用と仰ってましたがどなたですか?」
「あぁ・・・若いんだが身形が良い5人組だ、男3人女2人だと思うんだが…」
「うーん多分レオさん達かな? レオさん達なら村のはずれにある木賃宿に泊まってると思いますよ?」
「そうか! 早速訪ねてみる事にするよ」
「あ、アランさん少しいいですか?」
先輩嬢がこそっと囁く…
「ノーラさん元気ないようですし食事にでも誘ってあげてもらえませんか? 」
頷くアラン
「あ~なんだ…ノーラ明日の夜にでも一緒に食事に行かないか?」
それまでどんよりして地獄の底にでも沈んでた表情がみるみると明るくなっていく…
「は、はい! 行くまする行きましょう!」
「お、おぅそ、それじゃあ明日の夕方迎えに行くから、用事も済んだしそれじゃあ明日また」
そういいアランはそそくさとギルドから出ていったのだった…
そそくさとギルドから出たアランは受付嬢から聞いた村のはずれの木賃宿へと何かを誤魔化すかのように一人呟き歩き始める…
「とりあえず話を聞きに行くとしよう…」
こうして物語は主人公の知らないところで、主人公と全く関係ない事まで一緒に動き始めるのだった…
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