第18話ぼくたちの失敗
中島はBLマンガのページをペラペラ捲り、確信した様子で、
「やっぱり、主任は腐男子だったんですね?」
「い、いや~、そのマンガは友達が勝手に置いて行ったもんだ」
「じゃ、その腐男子とお友達なんですね?」
杉岡は返事に窮し、
「腐男子で何が悪いっ!」
と、開き直った。
「ま、まさか会社のウワサは本当だったんですか?」
「九分九厘」
「わたし、腐男子でも主任の事、好きですよ!」
「は~、何言ってやがる。ぼ、僕は彼女がいるのに、腐男子で挙げ句、作戦とは言え七瀬と一晩過ごしたんだぞ!」
杉岡は興奮して大演説してしまった。
「えっ?七瀬先輩と一晩過ごしたなんて……」
「……あっ!ち、違う変な意味じゃなくて、一晩飲み明かしたんだ」
「言い訳は結構です。な~んだ、会社のウワサは本当なんだ~」
「た、頼む中島。今夜はタクシー代渡すから帰っておくれ。このままだと、
中島は状況を楽しんでいる様に見える。
「主任、わたしとキスして下さい!」
「な、なにを!辞めておくれ。はいっ、一万円。これで、帰っておくれ。じゃないと、ぼ、僕は……」
「僕は何ですか?」
「人として、誤った道を進む事になる。長くなるが話しを聴いておくれ、中島」
杉岡は今まであった出来事、理由を丁寧に話した。
「その彼女さんが、男性だったんですね!でも、倉橋主任の言う通り恋愛は性別は関係ないんですよ!主任!」
「あ、ありがとう」
「今後、七瀬はどうしよう?彼は被害者なんだ。僕の判断ミスだった」
「七瀬先輩にも、正直に話しましょうよ!」
「は、話せるかな~。ユミは47歳って納得するかな~。しかも、男だと知ったら、変な嫉妬しないかな~?」
杉岡はほぼ水割り状態の、ウイスキーを飲んで、深くため息をついた。じゃじゃ馬の中島は新しくロックを2人分作り直し、しばらく沈黙が続いた。
「ごめんよ!中島。倉橋は君と関係を持てばバイとして、そう言う性的指向のレッテルを張られユミとの交際がバレても周りが納得するって計画を立てたんだ」
中島はニコリとほほえみ、
「大丈夫ですよ主任。この街は同性のカップルに理解のある所なんで、結婚式も挙げられますよ!」
杉岡は口に含んだウイスキーを吹き出した!
「け、結婚?まだまだ、早いわ~結婚だなんて」
「わたし達、海上木材課と船舶課の倉橋主任は、杉岡主任の結婚を全面的にバックアップします」
「い~いよ~。まだ、知り合って1ヶ月で結婚はないな~」
「応援します。この一万円、お返しします。今夜はとことん飲みましょう。えっと、おつまみが足りませんね。この辺りにコンビニありますか?」
「あるよ!一緒に行こうか?」
「はいっ」
2人は夜中にコンビニへ向かった。
適当につまみを買い物かごに入れて、レジで2人して並んでいた。
「ねぇ、君、君~。こんな夜中に何してんの?」
聞き覚えのある声だ!杉岡が振り向くとユミであった。
「ゆ、ユミこそ何で?」
「飲み会帰り」
「へ、へぇ~」
「君~、最近連絡ないから心配してたんだけど、女の子連れて~」
しどろもどろな杉岡を横目に、
「こんばんは。中島と言います。会社の後輩です。彼女さんのユミさんですか?」
「はい。こいつの彼女のユミです」
「……もし、良かったらわたし達と一緒に飲みませんか?」
「そう?いいの?じゃ、お言葉に甘えていいかな?君?」
「ぼ、僕はいつでもOKよ」
3人は、買い物を済ませ杉岡のアパートに向かった。
3人がアパートに近付くと、誰か立っていた。
杉岡は不審に思い、女子2人を待たせ不審者に近寄った。
杉岡は昏倒しそうになった。
「こんばんは、先輩!」
七瀬だった。
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