第11話カミングアウト

2人は缶ビールを飲みながら、鶏の刺し身を食べていた。

この鶏の刺し身は、杉岡が九州の実家に頼んで鶏肉店から送られたモノである。

むね肉はさっぱりして、もも肉はこりこり歯応えがある。

「ねぇ、ユミ。時間の問題だと思うんだ。ユミが男性ってバレるのが。だから、明日、まずは倉橋君に話そうと思うんだ」

ユミはしばらく黙っていた。杉岡はユミを傷付けたかなと心配した。

「私、自信ない。いっつも、男って事で別れてきたの。君とは別れたくない。でも、来ちゃうんだよね。いつか、私が男ってバレる日が……」

「ま、倉橋君からだ。ユミ、ローラー作戦だ!1人ずつ抜けなく潰して行くんだ!」

ユミはこの明るい青年を信じた。

「……では、隊長!お願いします」

2人は飲んでいたが、エッチなことはしなかった。この晩も杉岡は腕枕をした。


月曜日。右足をケガした杉岡を倉橋は迎えにきた。

「おはよう。杉ちゃん」

「おはよう、倉橋君。悪いね」

と、言いながらホンダのFITに乗り込んだ。

「杉ちゃん、かわいい彼女が出来てよかったね」

「……う、うん」

「もう、エッチした」

「口でヌイてもらったよ!」

「口?な~んだ、まだエッチしてないんだ?」

「まあね」

「でも、大学生なら心配だね。色んな男どもがいるから」

杉岡は我慢の限界だった。彼に事実を話さなくては!

「倉橋君、驚かないで欲しいんだけど」

「な、何?」

倉橋は車をコンビニに止め、話を聴いた。

「じ、実は彼女、47歳なんだ!」

「またまた~、コーヒー買ってくる。タバコ吸いながら待ってて!」


直ぐに倉橋はしばらくすると戻ってきた。2人で、タバコ吸いながら、缶コーヒーを飲んだ。杉岡はまた話し始めた。

「で、倉橋君、彼女、男なんだ」

「アハハハ。面白いね」

「だから~。冗談じゃないんだよ!一昨日前に、男って発覚したんだ。年齢は、その前に免許証で確認したんだ!」

「……杉ちゃん、マジ?」

「うん、うん、マジ!」

倉橋は会社へ向かって車を走らせた。

「彼女、トランスジェンダーって言ってた」

「そうか~、トランスジェンダーね。で、杉ちゃん相手が男だからって、心配してたの?男同士、恋愛しちゃダメだって誰か言った?」

「え、え?」

「僕は杉ちゃんのユミちゃんへの想いを支持するよ!僕は応援するよ!」

「あ、ありがとう。倉橋君~。でさ~、周りをどう説得させる?」

「そうだね。今夜居酒屋で、作戦練ろう」

「車は?」

「代行」

2人は、会社へ向かった。倉橋君、君は頼もしい仲間だ!と杉岡は心の仲で言った。

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