第7話会社で……

月曜日は夜勤だが、朝の9時には出勤し、他の業務を終えてから、夜中の外国船の書類作りをする。

バカに見える、否、バカの杉岡でも真面目な職員なのだ。

昼休み、トイレで同僚の倉橋に杉岡は尋ねた。

「女が一番興奮する、体位ってなんだ?」

倉橋は、

「そりゃ、立ちバックだろ。しかも、鏡の前で」

「あ、あんた、自分の趣味じゃないの?」

「いいや、オレの嫁さんは一番好きな体位が立ちバックって言ってるよ!」

2人は手を洗い、鏡の前で、

「倉橋君、ちょっと教えてくれ、秘技を!」

「しょうがないな~、杉ちゃん男役ね」

倉橋は女役になり、杉岡はバックから倉橋の尻に股間を当てた。

「こ、こうか?」

杉岡は腰を振る。

「ダメダメ、下から上に突き上げるように!」

「どう、倉橋君?」

「ま、本番はもっと激しくな?」

すると、トイレに前田課長が現れた。

「お前達、なにやってんだ?ま、まさか、2人は……」

前田は目を見開いている。

「か、課長違うんです。杉岡君の悩みを解決しようと……」

「倉橋、お前には嫁さんがいるもんな。分かった。ここは、オレの心の中だけにしまっておこう。杉岡もお幸せに!」


「何てコッタイ、僕たちゲイだと思っているよ課長は?」

「ま、細かい事は気にしないよ、杉ちゃん。例の女性、モノにしないとな?」

「う、うん。あっ、そうだ、お礼に今夜一杯おごるよ!」

「いいねぇ~。……って今夜杉ちゃん夜勤じゃん」

「あ、忘れてた。また、誘うよ」

ユミちゃん、今朝、喫茶店に来なかったな?やはり、リバースがいけなかったかな?

杉岡はまだ、ユミの連絡先を知らない。


夜勤明けの次の日、いつもの喫茶店へ行くと入り口にユミがいた。

「おはよう、ユミちゃん」

「お、おはよう」

「ずっと、待ってたの?暑いのに」

「今、着いたとこ。店入ろうか」

「うん」

最近、杉岡は週刊紙や官能小説を読むのを辞めてしまった。

「ねぇ、ユミちゃん、連絡先教えてよ!」

「いいよ!」

2人は電話番号とLINEの交換をした。

「この前、ユミちゃんいなかったね?」

「ね~、君、私の事を土曜日みたいに"ユミ"って呼んで。そっちの方が気楽」


杉岡は、チューチューアイスコーヒーを飲んでいた。

「月曜日、喫茶店いなかったね?」

「うん。私、仕事が溜まりに溜まって、喫茶店行けなかったの。高校の中間テストの問題作ってたの?」

「へぇ~、テストね~。懐かしな~」

「ねぇ、君、土曜日、行くよ!」

「えぇ~、キャンプはこりごりだよ!」

「ちがう、君の家へ」

「まだ、付き合ってもいない、女性を部屋に入れるのはね~」

「君、エロい本やDVDばかりなんでしょ?」

「な、何っ!」

「図星でしょ?」


杉岡はストローで、ズズズッと音立ててコーヒーを飲み終えた。

「ま、土曜日には片付いていると思うよ」

「決まりだね。お酒は準備するから、おつまみお願いね。出来れば丸八寿司の出前」

「うん。木曜日が夜勤だから、金、土、日曜日が休みになるからさ。とことん飲もうよ!」

「また、大事なところでリバースしないでよ!」

「そりゃ、あんたが酒豪だから、言えるんだよ!」

「土曜日、君を食べちゃいます」

「うるせ~よ!クソババア!」

ユミはニコニコしている。2人は各々、仕事場に向かった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る