第1章 旅立ち
第1話 ハズレスキル
俺はヘーニル伯爵家の次男だったけどこの時を境に人生が一転した。
俺の家は武官をたくさん出してきた。
だから俺も武術系のスキルだと思いながら、楽しみにしてた。
8歳になったら貴族も平民も関係なく、教会でスキルを授かって魔力量もそこで測る。
このスキルで、これからの生き方が決まるからだ。
剣術だったら騎士、弓術だったそら弓術師、
大工だったら建築士といった具合に…
兄姉2人は武術系のスキルを授かってるのに対して俺は…
優秀なジル兄上やイリス姉上と比べられて『落ちこぼれ』と言われてきた。
5歳年上のジル・ヘーニルは無愛想だけど武術で、3歳年上のイリス・ヘーニルは周りから可愛いとちやほやされてるけど魔術だった。
そして他の皆と違い、水色の髪の毛だった。他の家族は皆、青なのに俺だけ違って避けられてはいた。それでも、皆優しく接してくれた。
そして、俺が授かったのは符術だった。
その日から俺の扱いが変わった。
それと同時に、みんなの見る目が一気に変わったことに気づいた。
それまで優しく接してくれた母上や使用人達も俺の扱いが雑になった。
その時、『人ってこんな簡単に変わるものなんだ』と理解した。
それからは、つらい日々の始まりだった。
姉上には身体的や精神的にストレスを当ててきた。
いきなりドンとお腹を蹴ってきた。
「ゴホゴホ…いきなりどうしたの?俺…なんか悪いことした?今まで優しかったのに…」
「お前なんかいなくても別にいいし、ハズレスキル持ちはストレス解消に役立つからね」
「な、なんでそんな事言うんだよ!」
「そんなのは家にはいらないからさ!」
反抗したら身体的にも精神的にも倍になって反ってくる。
そんな事を1ヶ月も続いたら嫌でもこのやり取りが続くことが分かった。
だったら…これから7年間は人形の様に我慢する事にした。
未成年までは何があっても、全部親の責任になる。
そんな事が半年経って、父上がいきなり
「学校に行くなら卒業までは面倒見るが、行かないなら15になったら家を出てけ」
と言ってきた。
この世界は本人の確認無しに学校に通うことは出来ない。
「俺は学校に行かないで、15になったら出て行きます」
昔、本人に内緒で学校に通わせたが何もしないで卒業した人が多くいた。
それは、金の無駄遣いになるから嫡男以外は、本人に確認する事が義務付けられた。
でも7年我慢すれば自由になれ、解放される。
それを思うと、父上やイリス姉上たちが八つ当たりをしてきたり、あからさまに陰口を言ってきたりしても頑張れた。
でもジル兄上だけは、いつも通りに接してくれた。それだけでも俺の心は救われた。
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