第54話 泥棒猫大集結

 四元院海羽さんに会いに行こう。

 会って、この記憶が何なのかを確かめよう。

 そう思い至って羽搏さんのもとを飛び出したはいいものの、そもそも四元院さんにどうやって会えばいいのかが分からず、途方に暮れていた。


 メッセージアプリに連絡先が登録されていたので呼びかけてみたものの、既読がつかない。思い切って通話を使ってみたのの、繋がらない。まるで電波が届かない場所にいるみたいだ。


 地下にいるとか? それとも電車や新幹線に乗っていて、トンネルに入っているとか? まあ、向こうの都合を考えず一方的に押しかけようとしてしまった俺が悪いのだけれども。


 流石に四元院さんの通っている学園に押し掛けるわけにもいかないし。

 とりあえず、四元院さんの住んでいる四元院家のお屋敷の近くまでは来たけれど……これで家にいなかったら、今日は諦めよう。


 そう思って四元院家の屋敷を目指して歩いていたら、傍で一台の高級車が停まった。


「……夜霧影人?」


 車から降りてきたのは、寡黙な印象を受ける、スーツ姿の男性だ。

 ……はじめての人、じゃ、ないな。

 俺は知っている。この人を……覚えている。


「あなたは……確か…………」


 名前は……ああ、そうだ。


四元院嵐山しげんいんらんざんさん……です、よね? 四元院海羽さんの、お兄さんの」


「名乗るまでもなかったか。記憶喪失になっていると、海羽から聞いたが……」


「絶賛、記憶喪失真っ最中です。ただ、嵐山さんの顔を見たら、あなたのことを少しだけ思い出したので」


「そうか……フッ。正直、嬉しいぞ」


 別に喜ばせるつもりはなかったのだけれども、まさかそこまで喜んでもらえるとも思っていなかった。ただ名前と顔を思い出したぐらいで。

 どうやら俺はこの人にかなり気に入られているらしいが、記憶を失う前の俺は何をやったんだ……?


「ところで、なぜこんなところを一人でうろついている? 四元院学園からは少し距離があるはずだが」


「四元院さん……あなたの妹さんに会いに来たんです。記憶のことで確かめたいことがって……」


「海羽は、天堂星音と会うとかで外出している」


 そういえば天堂さん、急な用事が入ったって言ってたけど……もしかして、四元院さんと会うことだったのだろうか。


「てっきり、君も同席していると思ったが……」


「俺が? なぜですか?」


「天堂星音は、常に君を傍に置いていたからな。夏休みは考えがあって離れていたようだが……逆に言えば、理由がなければ君はいつも天堂星音の傍にいた。君の生活の全ては、天堂星音のためにあった」


 それを聞いて、不思議と違和感を抱いていない自分がいる。

 むしろ誇らしいと思っている自分がいる。

 天堂さんのために生きている自分が、感覚として理解が出来る。


「その天堂星音が君を放置しているということは、彼女なりの考えがあるのだろうな。君が落ち着くまでは、そっとしておくつもりなのかもしれん」


「ああ、そういえば言われました。記憶を取り戻すまでは仕事は休むようにと」


「そうか。なら、君に声がかからなかったのも、そういうことだろう。私の目から見ても、君は働きすぎなぐらい働いていたからな。これを機に羽を伸ばすといい」


「はあ……」


 働きすぎなぐらい働いていた、と言われても実感がない。

 特に労働に対する拒否感を抱いた覚えもなければ、疲労感もないぐらいだ。


「せっかくだ。海羽を訊ねてきたのなら、うちで待っていればいい。なんなら今日は、泊ってくれても構わない」


「いいんですか?」


「勿論だ。君は覚えていないかもしれないが、夏休みには世話になった。それに……約束しているからな。何かあれば君の力となることを」


 確か嵐山さんって、四元院家の次期当主のはずだ。

 そんな人にここまでのことを言わせるって……本当に記憶喪失前の俺は何をやっていたんだろう。


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」


「うむ。存分に甘えてくれ。こんなこともあろうかと、君のお泊りセットは用意している」


「ず、随分と準備がいいですね……」


「理想を夢見た時、まずは備えをするようにしている。だが……うむ。少し、屋敷の方に連絡する暇をくれないか」


「勿論です」


 俺は頷くと、嵐山さんはさっそくスマホを操作してどこかへと電話をかけはじめた。屋敷と言っていたので、連絡先は勿論、四元院家の屋敷だろう。急な客人をもてなすために指示を出しているのかもしれない。


「私だ。例のあれを可及的速やかに展開しろ……ああ、そうだ。仕掛けるぞ」


 …………何の話をしているのだろう。


「手段を選ぶつもりはない。……うむ。そのための、備えだ」


 …………本当に何の話をしてるんだろう!?


「待たせたな。退屈させてしまい、すまなかった」


「……お気になさらず。正直、退屈どころじゃありませんでしたから」


 とても客人をもてなすための指示を出していたとは思えなかった。

 ……気のせいだ。きっと、気のせいだろう。

 俺は記憶喪失だからな。記憶喪失前の俺なら、退屈していたかもしれない。

 そうに決まっている。


「では早速、向かうとしよう。さあ、乗っていくといい」


 そうして四元院家の送迎車に乗り込み、屋敷へと向かう。

 四元院家のお屋敷は、上品で静かな印象の日本家屋のようだ。


「へぇ。ここの使用人さんは、和風のメイド服なんですね?」


 てっきり着物かと思っていたけれど、ちょっと意外だ。


「幼い頃に、海羽がメイドのアニメにはまっていた時があってな。その時にねだるものだから、私から父に頼み込んで使用人の服装をメイド服に変えてもらったんだ。家の雰囲気との兼ね合いもあって、和風メイドに落ち着いたが」


「そ、そうだったんですか」


 嵐山さんのシスコン的一面を感じながら、屋敷へと招かれる。


「すまないが、先に広間で待っていてくれないか。少々、仕事を片付けてくる」


「勿論です」


 そうして使用人の方に案内されたのは、縁側から伸びる庭を一望できる畳の広間だ。美しい木目と重厚で品のある天井。白鷺のように美しい襖。見ているだけで圧倒される、和の空間。


「失礼いたします」


 広間に入ってきたのは和風メイドさんだ。


「どうぞ」


「あ、おかまいなく」


 和風メイドさんがお茶とお茶請けを出してくれた。

 テーブルと同じく、高そうなお茶だ。透き通る緑が美しい。

 流石は四元院家。客人へのもてなしに出されるもてなし一つとっても、一級品だ。

 これはお茶請けも凄いのが出てきそうだな。


「こちらも、どうぞ」


 ――――ゴトッ。


 と、なぜかお茶と一緒に淀みない動作で置かれたのは……表紙に『ALBUM』と書かれた、厚みのある本。


「これは……?」


「お茶請けのアルバムです」


 凄いのが出てきた。


「ははは…………これは、四元院家なりの小気味良いジョークだったりして?」


「…………(ニコッ)」


 質問しても和風メイドさんは答えてくれない。

 ただ、穏やかに微笑むだけだ。付け加えるなら圧が強い。

 できればジョークであってほしかった。


「開けば……いいん、ですか?」


「どうぞ」


 どうやら開けばいいらしい。友達の家に来たら卒業アルバムを探すなんてのは定番らしいけれど、これはどう見ても卒業アルバムじゃないし、そもそも探すよりも先に提供されている。

 天堂家の番犬と呼ばれていたらしい俺を抹殺するための罠、なんてことはないだろう。内心少し緊張しながら開いてみると、そこにはアルバムらしく写真が張り付けられていた。

 可愛い女の子だ。制服を着ている。写真の下には小さく『海羽、高校入学』と書いてある。海羽。つまりこの美少女が、四元院海羽さんだろう。


 写真は一枚や二枚じゃない。見開きのページにいくつも張り付けられている。

 写真では背景に桜の花びらが散っていて、四元院さんが高校の制服を身に着けていることから、数か月前に撮られたものであることが分かる。

 分かるけど……。


(……………………………………なんでアルバムを出されたのか分からない)


 お茶が出されたのは分かる。

 でもお茶請けに四元院海羽さんのアルバムは分からない。

 理由を訊こうにも、和風メイドさんはもう部屋から退散してしまっているし。


(とりあえず、これを眺めていながら待っていればいい……のかな?)


 お茶で喉を潤しつつ、アルバムをめくっていく。

 どうやらこのアルバムは家族写真というわけではなく、四元院さんの写真だけを収めているらしい。


(綺麗な人だな……)


 天堂さんや羽搏さんとは違った魅力がある。

 穏やかでお淑やかなお嬢様、といった印象だ。

 そんなことを考えながら次のページをめくる。

 次の写真もまた、四元院さんだ。バックで桜の花びらが散っているところを見るに、春頃に撮られたものだと思われる。そして四元院さんの隣には――――俺だ。制服を身に着けた俺が、彼女の隣に立っている。


(へぇー。俺って四元院さんと、こんな写真を撮っていたんだ)


 写真を見ても何一つ、これっぽっちも思い出せないのが申し訳ない。

 だけど写真があるということは、きっと存在した記憶なのだろう。


「…………っ! そうか!」


 このアルバムは、記憶を失った俺に対する嵐山さんからのおもてなし!

 アルバムを読み進めて今は失ってしまった、だけど過去には確かに存在した記憶を思い出せということか!


 それならお茶請けとしてアルバムが出てきたことにも納得がいく!

 流石は四元院家! 流石は嵐山さん!


(……思い出してきたぞ。俺は四元院嵐山さんを『模範的次期当主すごくまともなひと』として、感銘すら受けていた……!)


 そんな嵐山さんが、無意味にお茶請けとしてアルバムを出すはずがないじゃないか!

 嵐山さんは模範的な次期当主! 彼に対する尊敬の念は、俺の心に確かに残っている!


(だったらこれは写真一枚、文字一つとして読み飛ばせない!)


 背筋がしゃんと伸びた思いだ。

 息を整えて、再びアルバムのページをめくっていく。

 ページに敷き詰められているのは、どれも四元院さんと俺のツーショット写真。


 桜並木の中を一緒に散歩している俺と四元院さん。

 どこかの部屋で一緒に勉強している俺と四元院さん。

 着物を着て一緒に夏祭りを楽しんでいる俺と四元院さん。


(どれも全く身に覚えがないな……写真を見てもピンとこない)


 一応、天堂家の屋敷に来た時、実は俺が天堂さんと一緒にいる写真を見せてもらったことがある。その時も何も思い出せなかったが、ピンとはきていた。何となく、懐かしい気持ちになったり、こんなことあったなぁ、って気持ちになったり……だけど不思議と、この四元院さんと一緒に居る写真を見ても、何も気持ちがわいてこない。


(まるで存在しなかった記憶を見せられてるみたいだ)


 そんなわけがないのにな。

 おっ、一緒に学園に登校している俺と四元院さんの写真もある。

 そうか……俺って四元院さんと一緒に登校してたんだ。

 学園が違うのにどうやって登校してたんだろう。


(…………いや本当にどうやって?)


 俺は天堂さんと一緒に送迎用の車で毎朝登校していたようだし。

 こんな写真を撮るような時間は無いように思える。


「すまない。待たせてしまった」


 一人で首を捻っていたら、嵐山さんがやってきた。一定の歩幅で足音もなく歩く姿からは、一切の隙を感じさせない。部下からすれば、次期当主としてこれほど頼もしく感じる人はいないだろう。


「お気遣いなく。こちらは招待していただいている身分ですし、次期当主ともなればお忙しいでしょう」


「そう言ってくれると、ありがたい。それで……」


 ちらり、と。嵐山さんは手元のアルバムに視線を移す。


「そうだ、嵐山さん。このアルバムについて、訊きたいことがあるのですが」


「なんでも答えよう」


「この写真、俺と四元院さんが学園に登校しているようなんですけど……」


「似合いの二人だな」


 やや被せがちに強く言い切る嵐山さん。

 圧が強いと思うのは、気のせいだろうか。


「……俺と四元院さんって、通っている学園が違いますよね? どうやって一緒に登校していたんですか?」


「愛があれば不可能はない」


 またまた強く言い切る嵐山さん。

 やっぱり圧が強い。

 いや。待て。それよりもだ。


「愛? え? 俺と四元院さんって……」


「語るのは野暮、といったところだ……」


 ……どこかで聞いた覚えがある言葉だなぁ。


「えっと……実は俺、四元院さんとのことで思い出したことがあるんです。今日は、それを本人に直接確かめたくてうかがったんですが……」


「ふむ……そうだったのか。では私にも話してくれないか? 心当たりがあることかもしれない」


 他人……それどころかお兄さんに対して話すには勇気を必要とする内容だが仕方がない。身から出た錆とも言えるし、黙っていることは嵐山さんに対しても不誠実だろう。

 震えそうになる喉を抑え、膝の上に置いている拳をぐっと握る。


「俺と四元院さんは、同じ部屋で寝泊まりする関係だったというのは本当ですか?」


「本当だ」


 ノータイムで返してきた。ここまで断言するのだから、これは本当にあったことなのだろう。できれば嘘であったほしかったが……いや。待てよ。

 まだ、それが男女の仲であったということはないだろう。

 親密な友人であった可能性はまだ残っている。


「で、でもっ! それはあくまでも同じ部屋で寝泊まりしているだけの関係だった、というだけで、恋人だったわけじゃないですよね……?」


「……記憶とは無形。確固たる形のない霞だ。疑いたくなるのも無理はない。だが現実、そして事実は、こうして形に残すことが出来る」


 嵐山さんはスーツの懐から、一枚の写真を取り出した。


「こ、これは……!」


 テーブルに置かれたその写真に映っていたものは……巨大テーマパークで、おそろいのカチューシャをつけて一緒に遊んでいる俺と四元院さん……!


「これは……これでは、まるで! 恋人同士のデートじゃないかッ!」


 まったく身に覚えがない……!

 記憶が存在しない! 記憶喪失だから当然だけど!


「動かぬ証拠というものだ。何の、とは言わないがな」


 そんな……俺と四元院さんは同じ部屋で寝泊まりし、巨大テーマパークでデートする関係だったというのか?

 これが普通だったら喜ぶべきところなのだろうが、それは羽搏さんのことがなかったらの話だ。

 俺はとんだクズ野郎だ! 女性を弄ぶ、最低の男だったんだ!


「夜霧影人。私のことをお義兄にいさんと呼んでも構わないぞ」


「お義兄にいさん、ということは……そこまで、話が進んでいたんですか?」


「何がとは言わないが、そこまで話が進んでいた」


 記憶喪失前の俺、なんて胆力をしてるんだ!

 歌姫とお付き合いしながら、四元院家次期当主の妹と婚約していたというのか!?


「遠慮はするな。むしろ、私はそれを望んで――――……」


 嵐山さんはその先の言葉を紡ぐことを止めた。

 かと思うと、天井を睨みつけた。


「曲者ッ!」


 スーツの懐から数枚の写真を取り出し、天井へと放つ。

 四元院海羽さんが映っている写真数枚は、鋭利な音を立てて突き刺さりそれから一拍遅れて、天井から落ちてきた何者かが広間に着地した。


「…………影人。騙されちゃダメ。その写真は偽物」


「羽搏さん!?」


 天井裏から降り立ったのは、羽搏乙葉さんだった。


「貴様は……羽搏乙葉。どこから入り込んだ。夜霧影人をつけてきたのか?」


「ふふふ……影人を探してるうちに、気づいたらここの天井裏に迷い込んでいただけ」


「チッ。超次元的な方向音痴め……!」


 もう方向音痴にしたって異次元過ぎる。

 どうやったら天井裏に迷い込むのだろうか。


「――――お兄様ッ!」


 天井裏から歌姫が落ちてきたことに驚いていたら、今度は写真で見た女性が勢いよく扉を開けて、広間に立ち入ってきた。


「四元院さん?」


「影人様!? それに乙葉さんも、どうしてここに…………いえ、それよりも……!」


 四元院さんは俺を見て、嵐山さんを見て、そして最後にテーブルの上に置かれたアルバムを目にする。俺と四元院海羽さんが一緒に映った、ツーショット写真を。


「お、遅かった……!」


 全てを理解したとばかりに、がくっ、と膝をつく四元院さん。


「あーっはっはっはー!! 条約違反の現場、抑えたりッ!!」


 項垂れる四元院さんの背後から、今度は高笑いしながら天堂さんまでもがやってきた。


「私の目は誤魔化せないわよ四元院海羽! どれもこれも存在しない記憶を捏造した写真ばかり! ただのコラ画像! ……っていうか無駄にクオリティが高いわねこれ。もはやディープフェイクの域じゃない? 違和感仕事しなさいよ」


「フッ……こんなこともあろうかと、夜なべをして作った自信作だ」


「誇らしげにしないでくれますかお兄様!? そんなことしてる暇があるなら寝てください!」


「……とにかく! このコラ画像こそが、条約違反の動かぬ証拠よ!」


「違いますわ! これはお兄様が勝手に……!」


「その言い訳は無効よ! 身内を使ってのアプローチは禁止なのだから!」


「お兄様、今すぐ縁を切りましょう」


「なぜだ海羽ぅううううううう!?」


「うわっ……清々しいほど一瞬で兄をパージしたわねあんた」


 何が一体どうなっているのだろうか。

 状況を理解できていないのは俺だけかと、呆気に取られていると……。


「……影人」


「羽搏さん、あのっ。この状況は……」


「……ここは騒がしい。抜け出して、デートしに行こ?」


「デート、ですか」


「……うん。影人は、わたしのだーりん。デートするのは、普通のこと」


「「はァ!?」」


 羽搏さんの声は周りの喧騒にかき消されそうなぐらいに小さく囁いていた程度のものだったが、天堂さんと四元院さんの耳は聞き逃さなかったらしい。

 さっきまで言い争っていたはずの二人の首がまったく同じタイミングで、コンマ一秒の差もなく同時に、ぐりんっと羽搏さんの方に向いた。


「待ちなさい乙葉。誰が誰の何ですって?」


「乙葉さん? もしやあなたも条約違反を?」


「……なんの話か分からない。さっぱり。これっぽっちも」


「影人。言ってみなさい。あなたとこの泥棒猫の関係を」


「お、お互いを最愛の人としている関係、ですね」


「はいアウト! これはアウトですわよ乙葉さん!」


「……嘘はついていない。わたしたちは最愛の人同士」


「一から百まで何もかもが嘘偽り偽証捏造でしょうが!」


「それは天堂さんも同じですけどね」


「コラ画像女は黙ってなさい」


「こっ……!? わたくしが作ったわけではありませんわよ!?」


「……コラ画像ってそういうものだから」


 ぎゃーすか、という擬音がしっくりくるような言い争いが目の前で繰り広げられている。俺はすっかり置いてけぼりだ。

 だけど……三人とも遠慮なしに言いたいことを言い合っている。


「……ははっ」


 まるで三匹の可愛らしい猫たちがじゃれあっているようで、見ていて微笑ましく、そして胸が温かくなる。


「記憶を失う前の俺も、こんな気持ちだったのかな」


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