第7話 女性街

 何故なぜ万千まちを知っているらしい。


 校内でも有名人だし、不思議ではないが、そのおかげで厄介やっかいごとにき込まれ、さらに教師に目を付けられるとはついてない。


「そうですわねぇ。だからこそ敬称けいしょうというものは、無位むいひとしい。そう思えますわ――それより、わたくしをご存じで?」


無価値むかち。おべっかと言いたいのかな。流石さすがね――私が今日ここに来た理由は貴女きじょを…。ミス大郷司だいごうじ、貴女を舞踏会ぶとうかいに招待するためよ」


「まぁ、それはうれしいわ。日取ひどりは何時いつでして?わたくしも色々といそがしくて。それに、会場も――」


「それは心配ないわ。貴女は今すぐにでも来てくれるはず。私が招待しょうたいするわ、『女性街じょせいがい』へ」


 『女性街』――。女性が女性でられる場所。


 うわさではそこに行けば、女性でも手に入らないものが無いとか。


 しかし、誰も場所を知らない所。その存在すらうたがわしい場所だった。


 噂はよく聞いていた。しかし、あまり良い噂も聞かなかった。


 突拍子とっぴょうしも無く、その大半たいはんしんじられるものではなかった。が、私は一つだけ、それだけは信じてしまった。いや、信じたかっただけかも知れない。それが事実なら、噂でもかまわないと。


 その話題になると、誰もが必ず口にする噂――。


 女性がまもられ、平等びょうどうな世界。そこには、女性に対する法律ほうりつ権利けんりも在り、政治せいじへの参加さんかゆるされるという。


 それが本当なら信じたい、実在じつざいしてしい――しかし、信じられない。本当に女性街は実在じつざいしたの?


「『女性街』は実在するわ。大郷司さんも噂くらい聞いたことが有るでしょう。といっても、噂ほど悪い所ではないわ」


 たまきは、実際じっさいおとずれた事のあるような口ぶりだった。


「女性街だなんて…。そのような所、本当に――一体どの様な方が…」


主催者しゅさいしゃは貴女のお父様に色々とお世話になっていてね。どうしても貴女を招待しょうたいしたいらしいわ」


「ちょ、ちょっと待ってよ。貴女あなたは一体――一体何者なの?女性街は本当に在るの?」


 つい我慢がまん出来ずに話にんだが、この女性が女性街に行こうというなら、噂が本当だとしたら――だまってなどられない。


るわ、女性街。ちゃんとね――自己紹介が遅れたわね。習慣しゅうかんが無いもので」


 っと、言いながら環をうかがった。環は面倒めんどうくさそうに紹介してくれた。

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