第4話 性格

 たまきの性格は素直すなおで――素直にひねくれていた。


 そんな家柄いえがらではそうなっても仕様しようが無いと思ったが、どうやら原因げんいんはそれだけではないらしい。


 彼女の性格を今のように変えた一番の原因、それは許嫁いいなずけができた所為せいだった。


 女学校に入学して、それまではまだ大人しかったが、許嫁が出来た夏休み明けには人が変わった様だった。


 我儘わがままで、言動は遠慮えんりょなくつつかくさず、思った事をそのままに――。


 環は女学校を卒業すると、すぐにとつぐらしい。


 それでも卒業まで待ってもらえるようたのんだらしいが、それは先延さきのばしされただけで、彼女の未来、夢や将来はざされたにひとしい。


 環もあらがってはいた。彼女なりにかんがなやみ、結果けっか、殺すしかない。と――。


 環は、その素直で捻くれた性格に変わったおかげで、許嫁を殺そうと本気で計画していた。


 冗談じょうだんであると思い、冗談であって欲しかったが、彼女は冗談をまったく言わなかった。


 それほどの相手に、何があったかなど私にも一切いっさいしゃべらず、許嫁については禁句きんくで、聞くに聞けなかった。


 何時いつからか、彼女から許嫁の話を聞かなくなった。いまだに話に出ないところを見ると、まだ生きているに違いないだろう。


 変わってしまった彼女は、と言うよりに戻ったのか、開き直ったか。


 環は自由に、正直しょうじきな生き方――と言えば聞こえは良いが、勝手気かってきままをつらぬいた。


 周りの目など気にもめず、思った事を思ったまま口にし、それはかれる事では無かった。


 万千まちよう力尽ちからずくではないが、環の場合、口が先に出てしまう。一見似いっけんにた者同士の二人だったが、環はてきを作るばかりだった。


 環は、あの万千にさえ態度たいどを変えなかった。(私は知らないが、夏休みに何かあったらしい。その所為せいか、環と万千の仲は決して悪くはなかった)


 唯一ゆいいつ万千を『おじょう』と呼ばず、だからか、環は私のただ一人の友人であり、私も環のただ一人の友人だった。


 人気者の万千の影響えいきょう(私と一緒に居たから?)と、環の性格ではきらわれても仕方しかたなかった。


 しかし、彼女を理解りかいするには時間がかかるだけで、言動が率直そっちょく正直しょうじきぎただけのことだった。


 私からすれば、よく言ってくれたと、むねがすく思いだった。


 素直過ぎた性格は、欲求よっきゅうに対しても素直で、退屈たいくついたく嫌った。


 数少ない自由な時間を満喫まんきつするためだろうか、女学生でられる『今』を楽しむ為か、我儘わがままつらぬいていた。


 それは周囲しゅういの目を気にしない行動力と、ここぞとばかりに帰りの遅くなる口実こうじつそろっていたおかげで、退屈しのぎは放課後ほうかごまちり出す事へけられた――。


 ただ『あんみつ』を食べるくらいだけなら良かったが、彼女は喧嘩けんかめ事いざこざなど、みずか厄介やっかいごとにくび始末しまつで、手が付けられなかった。

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