第4話 学園長

僕は職員室で声をかけた教師に学園長室へと案内された。

どうやら学園長直々に話があるようだ。スキル無しなんて異例だ。僕も実際にスキル無しなんて聞いたことがないし学園の図書館で勉強のために歴史書などを読んでいてもそんな記述は欠片もなかった。おそらく人類史始まって以来初めてのことだと思う。

案内してくれた先生が扉をノックするとドアの向こうから「どうぞ」と返事が来た。

先生が「失礼します」と言いながら部屋に入った後、僕も「失礼します」と扉の前で一礼して部屋に入った。


部屋に入ると応接用の机とソファーがあり、壁側には書類のようなものやトロフィーと思われるものが入れられた棚が置いてあり、その部屋の奥には執務用だろうか。デスクと椅子があり、そこにその人はいた。

この学園の学園長であり、名は『ソフィー・ルクトヴィア』。

この国では五本の指に入る実力をもつ、別名『白銀の支配者』ともいわれる女性だ。

凛々しい顔立ちで、腰まで届きそうなほどに延ばされた白く美しい髪。スタイルに関しては今まで見てきた中でもトップレベルに整っている。


この世界に存在する人々は日々、どこからともなく現れ、増え続ける魔獣に怯えながら生きている。

魔獣は人々の住む土地を荒らし、直接人に危害を加えることもある。

魔獣に襲われ、命を落とす人も多い。

そんな魔獣の襲撃に対抗するために冒険者や帝国騎士団が生まれたのだ。

そしてその帝国騎士団の中でも特に秀でた実力を持ち、最前線で活躍したとされるのが今、目の前にいる『ソフィー・ルクトヴィア』だ。

そんなことを考えていると応接用のソファーに座るように言われた。


ソフィー「君がグラム君で間違いね?話は聞いているよ。なんでも選定の儀では『スキル無し』だったそうだね。正直私自身も対応に困っているところだ。』


大体予想はしていた。スキル無しという人類史において初めてともいえるイレギュラー。たとえ国の中でも上の方にいる人でも簡単に対応できるようなことではない。

これから自分はどうなるんだろうか?と考えていると学園長から

ソフィー「君はどうしたい?実は私自身たまに学園内を見回ることがあってたまに君が鍛錬をしているのを見かけたことがある。実技の内容も先生方に聞いたがとてもじゃないが今の君はどれだけ鍛錬をしても周りには一生追いつけないと思う。君には酷かもしれないがね。それを踏まえて君はどうしたい?私達学園側はできる限り君の希望に沿ってサポートするつもりだ。」


学園長はこういうが正直僕に今までと同じ選択はできない。幼いころ、幼馴染であり、恋人であるリナとともに帝国騎士になろうと約束した。正直、リナに引っ張られただけで僕が望んでいたことではないがリナといられるのならと僕はリナについていくことを決めた。

しかし、今となっては不可能だ。


グラム「僕には恋人がいます。昔、彼女と帝国騎士になろうと約束し、今までそれを叶えるために頑張ってきました。でももうそれは叶わないでしょう。

幸い学園は義務教育、卒業まではまだ4年はあります。それまでのんびり考えさせてください。」

僕はそう答えるしかなかった。学園長は僕の答えをきいて少し考えた後、

ソフィー「わかった。ではこうしよう。君には卒業後のことが決まるまでは特別に違う教室で授業を受けてもらう。そして君の卒業後のことが決まり次第、そのためのカリキュラムを組ませてもらう。冒険者はするもよし。君は座学に関してはかなりの高成績を修めていると聞いている。何かしらできることはあるだろう。ゆっくり考えるといい。話は以上だ。ほかに何か聞きたいことはあるか?なければ今日は疲れていることだろう。そのまま帰るといい。」


学園長の問いかけに僕は「大丈夫です」と答え、学園長室を後にした。


ちなみに学園長室を出る際に学園長が舌打ちえいして「リア充め...」と言っていたが聞かなかったことにした。




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