水面の鏡よ 鏡よ 鏡さん1
「確か……この辺りだったはず……」
言いながら、夕暮れに染まったオレンジ色の森を二人の少年が彷徨う。オレンジ色と言ったが、正確にはオレンジだけではない。夜光草などの草やキノコが、ひっそりと青白い光や薄い緑色で輝いて、既に夕暮れの森の中を照らしていた。オレンジ色と薄い青色の調和が、なんとも幻想的だ。
しかし、そんな景色に見惚れている余裕は双子にはない。足早に森の奥へ進んで行くと、だんだんと霧が出始めている事がわかる。森の薄明かりがぼんやりとかすんで見えた。
「どうだべ、一つ目は付いて来てるだべか?」
シンが背後を気にしながら言うと、シンジは薄暗い森の奥に視線を贈り頷く。
「白い服がちらっと見えるから多分。全く……白い服でなかったら見つけられなかったよ」
そんなことをぼやきながらも、二人はその足の速度は緩めなかった。追いつかれてはいけないし、かと行ってはぐれてもいけない。この距離を保つのはなかなか加減が難しい。
波打つように白い霧が見えた。霧の川のような景色に双子は視線を合わせて頷いた。
「間もなくだね」
「多分ガイが先に着て、霧の湖を見つけてくれているはずだべが……おーい」
シンが森の奥に呼びかけると、遠くから聞き覚えのある声が響いた。
「こ〜こ〜だ〜よぉ〜〜〜」
随分と間延びした声はいつもの友人のそれだが、それにしても随分と間延びしすぎている。不思議に思って双子が声の方向へ走り寄っていくと……
たちまち辺り一面、揺らめく水面の森に入った。まるで大きな水たまりから草が生え、木々が伸びたかのような光景は、以前昼間に見たときとは様子が違う。夕暮れの橙色を映し取り、オレンジ色の水面。森の植物たちの明かりを反射して、水面をキラキラと部分部分白く光らせる。橙色を背景に木々の黒い影が映えて、遠くまで白い光が時折きらめくその世界は、まるで夕暮れの空に木々が映えたかのよう。そんな明かりを水面が反射して揺らめく様子は、とても神秘的に見えた。さすがのその美しさに双子が見惚れていると、またもあの間抜けな声が聞こえた。
「ああ〜! ようやく来た〜! たーすけてぇ〜!」
と、友人のガイの声はするのだが、その姿が見当たらない。
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