水面の鏡よ 鏡よ 鏡さん2

「どこだべ? ガイのヤツどこに居るんだべ?」

「……あ!」

と、弟のシンジが指差したのは、もはやあの水たまりから腕と顔しか出ていない友人の姿だった。

「何溺れてるんだべか? こんな浅いのに」

 間抜けな様子に、シンが眉を寄せて首を傾げて問うと、ガイはプリプリと怒って答えた。

「ちがうよ〜! 引きずり込まれそうになってるんじゃないか〜! ほら、薬屋さん言ってたでしょ〜! もう一つの姿を持つ者は、霧の湖に引きずり込まれるって〜!」

 その言葉に、双子は思い出してゾッとした。自分以外の姿がこの霧の湖に映ったのはガイだけでなく、彼らもだったからだ。

「やばいだ、オラたちも引きずり込まれるってことだべか?」

「いや、でも、まずあの一つ目……クーフさんを……」

などと二人がやり取りしているその時だった。ガサガサと草を踏み分ける音と共に、あの一つ目紳士が姿を現した。紳士は双子の姿を確認するやいなや、大きく跳び上がり、彼らの頭上からその長い足を突き刺すように落ちてきた。

「うおっと!」

「ひとまず誘導は成功!」

 言いながら、双子は紳士の攻撃をかわす。水面の水はその衝撃で大きく揺らめくが、水しぶきはまるで上がらず、代わりに白い霧がふわりと水面に溢れ、またそれが水面に消えていく。

まだ立ち上がろうとする紳士に、双子が構えを取ろうとしたその時だった。

ゆらぎの消えた水面に、一つ目紳士の姿が映った。しかし白い服装ではない。黒い帽子をかぶり、黒っぽい服装をした男が、俯いた一つ目の男を見つめていた。その途端だった。ぐらり、と紳士が傾いた。着地した体制から妙に片腕を下げて、その位置を徐々に下げていく。そう、それはまるで着地したその水たまりに沈んでいくかのような動きだ。それに気づいてガイが声を上げた。

「あ〜! もう早速この人沈みだしてる〜!」

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