舞踏会へ行きましょう2

「でも、お城には見張りのツタ兵士はいるはずだよ。それに人も多いのに、こっそり地下牢に行くなんて、ちょっと難しいんじゃないかな」

のん気な兄に心配そうにシンジが言うと、今度は黒髪の少女が答えた。

「それについては、二人がいない時に私達でもう策を考えてあるの。そのためにガイ君からも術を施して貰っているから大丈夫、地下牢に行くチャンスは心配ないわ」

「ホントだべか⁉︎」

「わあ、助かる!」

リタの言葉に双子が期待を込めて振り向いた。しかし二人の予想に反して、少女の表情は重かった。

「リタさん……?」

「どうしただ? なんだか元気ないだべよ?」

「大丈夫、いよいよお城に入るんだな、と思ったら緊張してきただけ」

その言葉に双子も道の先にある白いお城を見上げた。周りの人々は期待に満ちて楽しげな様子ばかりだが、彼らにとっては敵地に乗り込むことを意味する。しかも正体を隠しての侵入だ。改めてそれを考えれば当然だが緊張してきた。

「いよいよ作戦開始だね……!」

「……いくだべよ!」

「うん!」

シンの呼びかけに、シンジもリタも意を決するように返事をした。


お城の中では、先日までの侵入作戦が嘘のような賑やかさだった。さすがに全ての通路を解放しているわけではないが、大広間につながる大きな通路はいたるところに人がおり、きらびやかな衣装を誰もが身につけていた。時折ツタ兵士も歩いてはいるが、あくまでも見回り程度。会場に人を案内したり、入ってはいけない通路を通せんぼしていたりと、役目も穏やかなものである。

 三人は大広間に出た。白い床にきらびやかな照明が映える。キラキラと輝くシャンデリアは全て光り輝く植物だ。そんな柔らかな光に包まれて、会場は美しく輝いて見えた。その美しさに思わず見惚れる黒髪の少女だが、双子は全く違うものに目を輝かせていた。会場の真ん中は舞踏会というだけあって、踊るための広い空間を確保してあるが、その周りを取り囲むように、たくさんの料理が乗ったテーブルが置いてある。立食スタイルのようで椅子はさほど置いていないが、それでも大きな皿に盛られた果物やパン、飲み物はどれも豪華で、それを見つけた途端、双子の目はそちらにしか向いていなかった。

「うわー、これ全部食べていいだか⁉」

「さすがに全部はダメだろうけど、自由に食べていいんじゃないかな」

「わーい」

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