舞踏会へ行きましょう3

と、双子はさっさと料理のテーブルに向かってしまう。外見は見事成人男性になっているのだが、中身はいつもどおりのお子様である。白い帽子で顔を隠した黒髪の少女が、双子のそんな様子に苦笑しつつも彼らの後ろをついていく。

「おお〜、ようやくマゴマゴの実が食えるだべ!」

「あ、これ昨日お姉さんとこで食べたヤツ。美味しかったんだよね〜」

などと双子があれこれ食べ物にがっついている。そんな食欲旺盛な双子に、周りの人が訝しげな目線を向けていることに気づいて、さすがにリタが双子にそっと声をかける。

「あ、あの……あんまり食べることに集中してると、子どもっぽいってバレちゃうよ」

「おっと、ここは落ち着いて食わねーとだべな。コホン、まずはこれを食べるだべ」

「次はこちらを食べましょうか、お兄さん」

「そうだべな、弟よ」

 口調は落ち着きこそすれ、食欲は相変わらずである。もはや黒髪の少女はため息を付いてうなだれていた。その時だった。

「今年も開花祭にご参加くださった国民の皆様、ありがとうございます。今年は病の王女様に代わって、大臣のイオクロマ様がご挨拶いたします」

 会場に祭典の司会の声が響く。聞き覚えのある名前に、さすがの双子も食べ物片手に顔を上げた。

 会場からよく見える、二階部分に彼がいた。一階会場をよく見下ろせる場所で、一般の人は立ち入れない場所になっているようだった。見るからに豪華そうなテーブルにこれまた豪華な食材が並んでおり、それらを背後にして一人の男が前に立っていた。紫色のスーツを着て、頭に大きな葉っぱをつけたひょろ長い男、昨日双子たちが宝物庫で見かけた、イオクロマと呼ばれていたあの男だ。

「やっぱり大臣だったね」

「何話すつもりだべか」

 双子も耳を傾けていると、細長い男は会場に向かって上品に一礼して話し始めた。

「ただいまウコン王女は病に倒れ、床に臥せっております。彼女の強い希望により、現在私イオクロマが全てのまつりごとを取り仕切っております。いつもいつも皆様の献上品には感謝しております。王女様復活に向けて、私も全力を尽くしていく所存でございます」

「よく言うよ、何が病だよ」

「あんな牢屋に入れといて、可哀想だべよな」

 双子は思わず大臣を睨みつけるが、それでも食べるのは止まらない。こういうところは相変わらずである。大臣の話は続いていた。

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