遠い日の約束1


 薬屋のお姉さんのメモを片手に、四人の子どもたちと一人の美少女は、村外れの森に足を踏み入れた。シン達四人が霧の湖に出会った森とは真逆の森だ。彼らはそこに薬の材料を探しに来ていた。

「随分と特徴的な花だねぇ〜」

 お姉さんから渡されたメモを見ながら、ガイがぼやくように言う。そんなガイの手の中には、薬屋のお姉さんが描いた植物の絵のメモがあった。花びらが何層にもなっており、その中心はまるで時計の長針と短針のようになっている。

「トケイソウ、ね。見た目通りの花で逆にわかりやすいじゃない」

 ガイの後ろを歩くヨウサがクスリと笑う。

「それにしても、その花、どうして必要なんだべな?」

「それは僕らにはわからないよ。とりあえず、さっさと探して戻ろう。ゆっくりしてたらあっという間に夕方になっちゃう」

「そうは言っても、この森の中から花を探すなんて、時間かかるだべさ。しかも、一つじゃないいだべ?」

「うん〜、メモには二十輪は必要だって書いてある〜」

 シンの言葉にガイが答えると、双子はうんざり顔だ。

「やっぱり厄介な仕事だったね……」

「ガイ、クヌギ国の時みてーに鼻は利かねえだべか?」

「無茶だよぉ〜。初めて見る花なのに、匂いなんてわからないよ〜」

 そんな彼らのやり取りを聞いて、思いがけず口を挟んだのは黒髪のリタだ。

「私、追跡の魔法が使えるから、応用すれば探し物もできるよ。メモ、見せてもらえる?」

 彼女の申し出に、ガイは手にしたメモを渡す。するとリタはそのメモをじっと見つめ、急に目を閉じたかと思ったら、その両手を胸の前で地面と平行に合わせた。次に彼女が手のひらを離したときには、右掌に小さな小枝が浮かび上がっていた。

「今見たメモを頭に思い浮かべてみたの。小枝が反応したから大丈夫。この枝の指し示す方向に必ず花はあるわ」

 その言葉に双子だけでなく、ガイとヨウサも感心して声を漏らした。

「へぇ〜、なかなか便利〜」

「追跡の魔法……聞いたことあったけど、こんな応用の仕方もあるのね」

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