お城へ行きましょう6
双子がそんなやり取りをしている間も、水の入った缶は騒音とともに階段を転がり落ちていく。
あっという間に缶は階段を転げ落ち、地下の最下層に到着してしまった。しかし転がってきた勢いはすぐに止まるわけもなく、しんとした廊下をまたもゴロゴロゴロゴロと騒音とともに転がっていく。
「も〜! 地下の奥まで来ちゃったよ〜! あわわわわ〜……城の人に怒られなきゃいいけど〜……」
最下層に来た途端、ガイがビクビクしながらそんな事を言う。しかし缶を追いかけているヨウサ、そしてシンとシンジはそれどころではない。
「まだ止まらないね」
「どこまで転がっていくだ⁉」
「ホントごめんなさい〜」
ヨウサがほぼ半べそ状態で謝ったその時、ゴン、と缶が何かにぶつかる音がした。その後、缶の転がる音が止まったのを確認して、シンは目線を廊下の先に向け目を凝らした。
缶が止まったのは、廊下が終わり開けた場所だった。鉄の柵がいくつも並ぶそこは、牢屋であることはすぐにわかった。水の入った缶は、その牢屋の柵にぶつかり止まったのだ。
「ようやく止まっただべ…………ん?」
止まった缶に近づくと、鉄の柵越しに小さな足が見えた。缶から目線を上げると――そこには小さな女の子が立っていた。
シンの腰ほどの身長しかない、まだまだ幼い子どもだ。金色のサラサラした髪を肩からこぼし、紫色のアサガオの花を逆さまにしたようなワンピース姿の、かわいらしい女の子である。黄色の大きな瞳で、今しがた転がってきたばかりの缶を、不思議そうに見つめていた。
「女の子……? なんで女の子が牢屋なんかにいるんだろ……?」
シンに続いて女の子に気がついたシンジは首を傾げた。
確かに、違和感のある光景だ。牢屋といえば、普通悪いことをした人や魔物などを捕まえて、逃げられなくする場所だ。そんな場所に、あどけない姿の子どもがいるのだから不思議だ。見れば石畳がむき出しで埃の舞う地面に冷たい鉄格子がはめられ、牢の中にあるのは簡易なトイレにみすぼらしい灰色の布の布団。女の子の牢屋だけ、妙に絵本やおもちゃはあるが、それ以外はまさに牢屋。とてもではないが、小さな女の子を寝食させるにふさわしい場所ではない。
この光景には、さすがに鈍感なシンも同情したようだ。
「かわいそうだべな……まだちっこいのに、こんな場所に閉じ込められてるんだべか……」
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