お城へ行きましょう5
「城の中にこれで入れるだな」
「問題は、そこから先だけどね」
こそこそと双子は言い合いながら、手押し車を引いていった。
城の庭の端を通り、長い城の壁をつたうように進むと、城の裏側に回った。するとそこには、両開きの古びた扉があった。ずいぶんと古びた扉は、しばらく使われていなかったような雰囲気だ。そこを開ければ兵士の案内通り、地下に通ずる階段が続いていた。
「幸い、見張りの兵はいないわね」
周りを見回しながらヨウサが言う。その言葉にシンは頷いて続ける。
「ひとまず水をさっさと中に運ぶだべ」
「で、怪しまれないように中を探らないとね」
と、シンジは早速手押し車から、バケツサイズの銀色の丸い缶を持ち上げた。上部分にはコルクで栓がされており、持ち上げればまだひんやりと冷たい。ちゃぽちゃぽと音がするそれは、薬屋のお姉さんの言う通り、水が入っているようだ。バケツサイズとはいえ、中身は水。なかなかの重さである。
「これ運ぶのだけでも一苦労だよ〜」
持ち上げて早速、ガイが文句を漏らす。
「大体、これを入口入ってすぐのところに置けって……階段ばっかりで置く場所ないわよ?」
ヨウサが呆れるように言うと、シンジはケラケラと笑って返した。
「逆に好都合じゃないかな。置き場所探してうろつけるじゃない。見つかってもそこまで怪しまれないよ」
四人は言いながら、それぞれ缶を持って階段を降り始めた。地下に通じる階段は、灰色の石造りで、壁にぽつりぽつりと花を逆さにしたようなランプが吊るされている。ランプの明かりはどこか頼りなく、昼間だと言うのに城内は薄暗い。どこかひんやりとする場所だ。地下だからと言えばそのとおりだが、急にしんと静まり返った地下に、四人は妙な緊張感を覚えた。
しかし、そんな静かな緊張感は一瞬で終わる。
「あっ」
急にガン、と音がしたものだから、先頭を歩くシンが振り向く。するとその横を、猛烈な勢いで缶が転げ落ちていった。
「ごめん! 手が滑っちゃった!」
と、ヨウサが謝ったのも束の間、即座に彼女は階段を駆け出した。静まり返った階段の沈黙を、ガラゴロガラゴロと容赦なく缶が打ち砕く。
「あわわわわ〜! こっそり侵入どころじゃないよ〜!」
「追いかけるだ!」
ガイが慌てる眼の前で、シンとシンジはヨウサの後を慌てて追う。
「待つだ〜!」
「って言っても缶じゃ待たないでしょ!」
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