不思議な薬屋さん現る2
「まさか……カード……」
急な声がして、思わずその場にいた全員が声の主を見た。
声を発したのはシンでもシンジでも、ヨウサでもガイでも、ましてや黒髪の少女リタでもない。突然声を発したのは――意外にもお店のカウンターに居た人物――そう、薬屋のお姉さんだったのだ。
「あれっ? 薬屋さん、いつの間にそこに!?」
「気づかなかっただべ!」
双子が驚いて問いかけるが、その場に居た全員が驚いたに違いない。店の中には彼ら五人しか人は居らず、話始めのときには、店のカウンターにもお姉さんは居なかったのだから。
「あっ……き、聞かれてたんですか……?」
薬屋の反応に思わずリタが赤面する。もしかしたら、自分の恋愛話まで聞かれてしまっているのである。当然の反応だ。一方、盗み聞きと思われ気まずいのか、薬屋のお姉さんはコホンと咳払い一つして、少々頬を赤らめた。
「ちょ、ちょっと人の声がするから来てみたら、た、たまたま耳に入っただけだ。なんだか気になる話をしていたようだったので、つい……」
そう苦しい言い訳をしているお姉さんに、シンが思わず首を傾げた。
「それよりも薬屋さん、『まさか』って、どういう意味だべ? 何か知ってるだべか?」
シンの問いかけに、薬屋のお姉さんは思い切り言葉に詰まった。表情から察するに「しまった!」と言った雰囲気だ。そんな様子をこの子どもたちが見逃すわけがない。
「お姉さん、もしかして何か知ってるの?」
シンジが間髪入れずツッコむ。こういうとき、悪乗りが得意なのはガイである。
「さてはお姉さん〜、城の魔術師について何か知ってるな〜?」
ガイのニヤリとした表情とその言葉に、薬屋のお姉さんは慌てて首を振る。
「ししし知らないぞ! 城の新しい魔術師のことなんて、これっぽっちも!」
「知ってるでねーべか! 新しい魔術師だって!」
即座にシンが揚げ足を取ると、薬屋のお姉さんは更にたじろいだ。
「そ、それは、最近城に来たと聞いていたからだっ! べ、別に薬師解任の件で知っていた訳ではないぞ!」
「クスシカイニン……? なぁに、それ? 初めて聞く情報だよ?」
新しい情報が出てきたので、さすがにシンジまでお姉さんに詰め寄る。男子三人に詰め寄られ、お姉さんはうぐっとますます言葉に詰まった。そんな男子三人の後ろからは、ヨウサが懇願してきた。
「お姉さん、もし何か知っているなら教えて! リタさん可哀想だもの、なんとかしてあげたいわ!」
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