不思議な薬屋さん現る3
ヨウサの言葉に後押しされたのか、薬屋のお姉さんはうなだれるようにため息を付いた。さすがに堪忍したらしい。
「……仕方ないね……。あたしが知っていることを、ちょっとだけど教えてあげるよ」
その言葉に、子どもたちと少女の五人は思わず身を乗り出した。
「なんだ、やっぱり知ってるでねーべか」
「一体、お城で何があったの? 魔術師のこととか、クスシカイニンとか……」
やはり薬屋のお姉さんは、何かを知っていたのだ。双子の問いかけに、お姉さんは険しい表情をして、シン達五人をじろりと見ながら言った。
「……ウチのばあさんの話だ。今話に出ていた魔術師、女らしいな。ここ最近城にやってきた魔術師で、大臣の強い勧めでお城のお抱え魔術師、つまり王宮魔術師になったそうだ。かなりきれいな色気のある女で、城中の男どもがみんなその魔術師の言いなりだと聞く。それだけじゃない。その魔術師、時折街に降りては狙った男を城に連れ込んで自分の配下にしているそうだ。不思議なことに、はじめは嫌がっていた男たちも、あっというまにその魔術師の言いなりになるらしい。それこそ、惚れ込んで好きになっちまったみたいにな」
お姉さんの話に、真っ先に内容を理解したのはシンジだ。
「あっ……! そういうこと……!?」
「それで〜、リタさんの仲間も……その魔術師の言いなりになって〜……?」
「つながっただべな!」
その言葉に驚く四人だが、ただ一人、リタだけが悲しそうにうつむいた。
「確かに……あの魔術師なら『誘惑の術』という、男性であれば人を好き勝手操れる術を使います。でも……クーフさんがあんな術にかかるなんて……そんなこと……」
「……カードがどう、とか言っていたな?」
落ち込む少女に、静かに薬屋は尋ねた。その言葉にリタが頷くと、それを見て薬屋のお姉さんは、更に険しい顔をしてため息を付いた。
「……確証はないが……危険なアイテムを使われた可能性は高いな……。あの魔術師……奇妙なことを言っていたと聞く」
「奇妙なこと?」
思わずヨウサが尋ねると、お姉さんは瞳を閉じ、うむ、と唸った。
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